管理費会計/支出の部
管理委託料(内訳項目)
管理会社へ管理を委託している場合、対価として管理委託業務費を支払っていますが、下記のように内訳項目を予算書に計上することが望まれます。
管理組合によっては、管理委託業務費(管理委託料)といった科目で計上しているケースが考えられますが、この場合、何にいくら支払っているのかが不明です。
管理委託業務費の内訳は、費用の検証を行う際に有益な情報になりますので、科目分けすることをお薦めします。
修繕費・緊急対応費
管理費会計の修繕費は、経常的な修繕に限られます。ここで言う「経常的な修繕」とは、計画修繕以外に発生する小修繕のことを指します。
緊急対応費は、あまり使用しない科目で、一般的に修繕費に計上していますが、今後、共用部の損害保険を使わずに実費で修繕を行うケースが増えることが想定され、修繕費とは別に緊急対応費の科目を新たに設けることをお薦めします。
前述の損害保険料の値上げについて、詳しく知りたい方は、こちら👇の記事を読んでみてください。
損害保険料
損害保険契約を長期契約にしている場合、期毎の費用に振り分け、予算には当期分の費用を計上します。例えば、5年契約の保険料が250万円の場合、単年に換算すると50万円となるため、当期の経費(損害保険料)として50万円を計上します。ただし、期の途中で更新する場合は、前契約分の費用と更新契約分の費用に振り分け、その合算が計上されます。
管理組合によっては、5年分を纏めて更新の該当期に一括計上しているケースがありますが、収入と支出とのバランスや差額(剰余金)を正しく知る上で、期毎に経費を按分する方法が適切かと思います。
摘要欄に「5年契約/1年分計上」などの表記をしておくと分かり易いです。
防犯カメラリース料
防犯カメラのリース契約を締結している場合、一般的にこの科目を用います。レンタル契約の場合は「防犯カメラレンタル料」とか「賃借料」の科目を用います。
実務において、防犯カメラリース料になっているのに中身はレンタル契約といったケースが意外と見受けられます。リース契約とレンタル契約は、契約内容とか消費税の取り扱いが異なるので、誤解を招かないためにもそれぞれの科目を用いることをお薦めします。(詳しくはこちら👇の記事)
防犯カメラのリース契約は、6年もしくは7年になっているケースが大半ですが、契約終了後に更新契約を締結することができます。
締結といっても、契約終了前に書面通知が送られてきて、こちらから解約の申し入れをしない限り自動的に1年間更新されます。
更新時のリース料は、年間経費が10分の1程度に抑えられます。ただし、再リース期間中に機器が故障した場合、実費負担となるので注意が必要です。特に防犯カメラ機器は8年を過ぎたあたりから故障が増えます。
一方のレンタル契約の場合、契約期間中の故障(故意・過失による故障は除く)はレンタル会社が保証してくれます。契約終了後の再レンタルは保証付きで可能なケースがありますが、費用は本契約と変わりません。
そこで再レンタル前にやるべきことがあります。レンタル会社にもよりますが、再レンタルせずに新たにレンタル契約を結んだ方が費用を低く抑えられるケースがあります。最新機種でしかも費用が安くなるのであれば、新たにレンタル契約を結んだ方が得策です。
防犯カメラの更新時期を判断するのは正直難しい点がありますが、機器の故障が増える時期(8年過ぎから)を踏まえると8年毎に新しい機器に入れ替える、これがひとつの目安になると思います。
最後に注意すべき点がひとつあります。再リースの料金は更新前に1年分一括で支払われますが、この支払い直後に防犯カメラ機器の入れ替えを行うと、二重に費用が発生します。
植栽管理費
マンションの植栽の剪定・消毒・施肥に関わる費用は、この科目に計上します。植栽の植え替え、土壌改良を行う場合の費用についても同様です。
電気料
共用部の電気料は、この科目に計上します。管理組合によっては「共用電気料」「共用部電気料」といった表記の仕方もあります。
最近、電気料の値上げの問題が国会でもよく取り上げられていますが、実は2年前から電気料の中に含まれる燃料費調整単価が右肩上がりになっています。なので、電気料の計上に際しては、値上げを考慮する必要があります。(詳しくはこちらの記事👇)
水道料
共用部の水道料の徴収方法は大きく2つに分けられます。ひとつは、個別に水道局が使用者に請求する方法(個別検針方式)と、管理組合が水道局にマンション全体の水道料を一括で支払い、個別に徴収する方法(一括検針方式)です。
下表は、前者(個別検針方式)を用いていますので、共用部の水道料のみが計上されています。
管理組合によっては、後者(一括検針方式)を採用しているところがありますが、その場合、収入の部に個別に徴収(請求)した水道料の年間の合計額を計上し、支出の部に水道局に一括で支払った水道料の年間の合計額が計上します。年間は会計期間のことを指します。
通信費・備品消耗品費・会議費
管理組合の運営にあたり、事務的な経費が掛かります。管理組合毎に科目名は若干異なりますが、通信費は、管理事務室で使用されているインターネット通信料・電話料金・郵送時の切手代などが挙げられます。
備品消耗品費は、机、椅子、電話機、コピー用紙、ゴミ袋、近年では消毒液などのコロナ感染対策費用が該当し、会議費は、総会時のお茶代、会議使用料などが挙げられます。
それぞれの科目に該当する費用を計上します。
例えば、管理組合の資料を保管するキャビネット(5万円程度)を購入したい場合、備品消耗品費にその分を加算し、摘要欄に表記しておくと分かりやすいです。
全てに言えることですが、数字だけでは分かり難いところがあるので、摘要欄を上手に活用することで、読み手側にとって理解が得られやすくなります。
口座振替手数料
管理費等を口座振替により徴収している場合、口座振替手数料が毎月発生します。管理組合でその費用を負担している場合、この科目に計上します。
管理会社によっては、管理委託業務費の中に口座振替手数料を含まれるケースがありますが、その場合、この科目は発生しません。このやり方を採用しているのは大手管理会社によく見られます。
前述の口座振替手数料以外にもコピー代とか郵送時の切手代を管理会社が負担しているケースがあります。こちらも大手管理会社によく見られますが、管理棟数が多いので管理会社負担にした方が手間が省け事務の効率化が図れます。
管理会社負担といっても、管理委託料に上乗せしているので、管理組合が負担していることに変わりはありませんけどね。(余談ですが…)
支払手数料
支払手数料に該当する費用として、業者などへ支払いを行う際の振込手数料、前述の事業所得がある場合に確定申告手続きを税理士へ依頼したときに発生する報酬、マンション管理に関わる支援団体(NPO法人など)に加入したときに掛かる会費などが挙げられます。
管理組合によっては、「振込手数料」「税理士報酬」「諸会費」といった科目を設けているケースもあります。
予算書では、決算報告書のように内訳明細がないため、摘要欄に該当項目を入れると分かり易いです。
雑費
雑費は、ほかの科目に当たらない軽微な費用を宛がう科目になります。実務において、ほかの科目に該当する費用がこの雑費で処理されていることがあるので確認を要します。
雑費扱いとなるイレギュラーな支出がある場合は、摘要欄に表記すると分かり易いです。