昔は、管理委託業務費の内訳のない合計金額しか記載されていない「管理委託契約書」が実情として多く存在した。
マンション管理適正化法が2001年8月1日に施行され、2003年4月9日に国土交通省から関係業者に通達された「国土交通省総合政策局通知文」により、マンション管理会社が受領する管理委託業務費の内訳が管理委託契約書に記載されるようになった。
国土交通省総合政策局通知文(関係部分抜粋)
委託した管理業務と委託費の関係が明確になるよう、委託費の内訳を明記
この内訳については、「マンション標準管理委託契約書」「マンション標準管理委託契約書コメント」に次のように記されている。
マンション標準管理委託契約書第6条第2項
2 甲(管理組合)は、前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以下「定額委託業務費」という。)を、乙(管理会社)に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。
一 定額委託業務費の額
合計月額〇〇円
消費税及び地方消費税抜き価格〇〇円
消費税額及び地方消費税額〇〇円 内訳は、別紙1のとおりとする。
第6条関係コメント
① 第2項で定額委託業務費の内訳を明示することにより、第3条に規定する管理事務の範囲・内容と定額委託業務費の関係を明確化することとしたものである。ただし、適正化法第72条に基づき管理委託契約締結前に行う重要事項説明等の際に、マンション管理業者が管理組合に対して見積書等であらかじめ定額委託業務費の内訳を明示している場合であって、当事者間で合意しているときは、管理委託契約に定額委託業務費の内訳を記載しないことができる。
したものです。
<コメント補足>
但し書きについては、管理会社を変更された際にそのような事務手続きを行うことが想定されるが、多くの場合、管理委託契約書に定額委託業務費の内訳が記載されている。
<青字の別紙1>
内訳の明示方法は、大きく以下の3つに分けられ、管理会社毎に明示方法は異なる。
マンション標準管理委託契約書に記載された内訳明示例
第一号から第四号までの各業務費には一般管理費及び利益が含まれておらず、第五号で別に表示されているもの
<定額委託業務費月額内訳>
一 事務管理業務費・・・・月額〇〇円
二 管理員業務費・・・・・月額〇〇円
三 清掃業務費・・・・・・月額〇〇円
四 建物・設備管理業務費・月額〇〇円
ア 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
イ 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
ウ 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
五 管理報酬・・・・・・・月額〇〇円
消費税額等・・・・・・・・月額〇〇円
第一号の管理手数料に事務管理業務費、一般管理費及び利益が含まれており、第二号から第四号までの各業務費には一般管理費及び利益が含まれていないもの
<定額委託業務費月額内訳>
一 管理手数料・・・・・・月額〇〇円
二 管理員業務費・・・・・月額〇〇円
三 清掃業務費・・・・・・月額〇〇円
四 建物・設備管理業務費・月額〇〇円
ア 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
イ 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
ウ 〇〇業務費・・・・・・月額〇〇円
消費税額等・・・・・・・・月額〇〇円
【内訳明示例3】
第一号から第四号までの各業務費に一般管理費及び利益が含まれているもの
<定額委託業務費月額内訳>
一 事務管理業務費・・・・月額〇〇円
二 管理員業務費・・・・・月額〇〇円
三 清掃業務費・・・・・・月額〇〇円
四 建物・設備管理業務費・月額〇〇円
ア ○○業務費・・・・・・月額〇〇円
イ ○○業務費・・・・・・月額〇〇円
ウ ○○業務費・・・・・・月額〇〇円
消費税額等・・・・・・・・月額〇〇円
<内訳明示例の補足>
この内訳明示例の赤字部分の一般管理費は、総務や企業全体を運営し管理するために要する費用をいい、利益はその名のとおり、委託業務で得られた利益を指す。
内訳明示例1、2のように「管理手数料」「管理報酬」が計上されている場合、他の業務項目の中に一般管理費や利益は含まない、これが前提となるのだが、もし仮に「管理手数料」「管理報酬」が計上され、かつ各業務費の中にこの2つが含まれていたとしたら「二重取り」に過ぎない。ここに注意を払いたい。
しかしながら、管理組合がそれを知ることは困難であろう。管理会社に確認しても、「管理手数料」「管理報酬」は含まれていない、そう言われたら何も言えなくなる。
管理委託業務費の明確化、内訳を設ける目的はそこにあるのだが、業務項目が細分化されただけで、もし中身に矛盾があるとしたら何ら意味を持たない。
実際に「管理手数料」「管理報酬」が計上されている管理委託業務費を考察してみると、内訳明示例3の一般管理費、利益が含まれた業務費とあまり大差がないことに気付く。見積りを取り寄せ、比較してみるときっと見えてくるものがある。