管理会社

フロントマンの担当組合数から見えてくるもの

2018年1月30日

 

近年、管理会社のホームページや管理会社変更の際のプレゼン資料などに、「フロントマンの担当組合数を10組合以下とし、徹底した管理体制を構築しています」、そんなフレーズが多く用いられている。

これは、顧客である管理組合に対するアピールなのだが、なぜこのような社内事情を敢えてアピール材料にして公開しているのだろう。

見方を変えれば、管理会社の社内事情を窺い知ることができる。

管理会社は、管理物件をより多く持つことで経営が安定し、継続性が保たれる。なので、多くの管理会社は、受託組合数を増やすことが課題となる。近年、盛んに行われているM&Aも受託組合数を増やすことがその目的になる。

大手企業では、数千もの管理組合と管理委託契約を結んでいる。

管理会社は、受託組合数に応じてフロントマンの人員が決められる。例えば、管理会社の受託組合数が1,000組合であれば、一人当たりの担当組合数を仮に10組合とした場合、フロントマンの人員は100名いることになる。



どの企業も経費の中で大きな支出となるのが人件費になる。管理会社毎にフロントマンの担当組合数は異なり、管理会社が利益を上げたければ、フロントマンの担当組合数を増やせばそれを実現できる。

近年では、ひとつの目安としてフロントマン一人当たり10組合以下というのが基準になっている。以下という表現を用いているのは、総戸数がマンションによってそれぞれに異なるから、総戸数の多いマンションを複数担当しているケースでは、組合数が5組合になったりもするし、1,000戸以上のマンションでは、その管理組合だけを専属で担当するケースもある。

昔は20~30組合程度をフロントマン一人が担当していた時代があった。今でも20組合前後を担当させている管理会社も存在する。特に安さを売りにする独立系の企業に多いのではないだろうか。

独立系は売上が増えても利益は少ない、必然的に担当組合数にそのしわ寄せがくる。

担当組合数が増えれば、フロントマンの仕事量もそれに応じて増える。それにより、対応が遅くなったり、やるべき仕事が棚上げされたりもする。管理会社は利益が上がるだろうが、顧客である管理組合にとって良いことなど一つもない。

フロントマンが抱える担当組合数が増えれば、管理組合の不満の声がそれに比例して増える。それは管理会社は認識していることであろう。

フロントマンの中には、仕事量の多さに限界を感じ、それで辞めていく社員もいる。

管理会社にとって、管理物件を増やすこと以外にも、雇用人材の定着、そして最も重要視すべき「顧客の満足度を上げる」、これらが課題となろう。

冒頭のフレーズが近年多く用いられるようになったのは、そういった社内事情がある。だからアピールとして掲げ、他社との差別化を図ろうとしている。

この差別化も重要なことかも知れないが、個人的には管理会社の抜本的な構造改革が必要だと思うのだが…

 


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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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