分譲マンションの共用部分の管理を専門とする管理会社は昔から存在し、今日においてもマンション管理組合にとって必要な存在である。
その管理会社を率いるマンション管理業界は、半世紀以上の歴史があるわけだが、このマンション管理業界が長きに渡り築き上げてきた「一つの失態」がある。
マンション管理の主体は管理組合にある
マンションの管理組合の運営を支援する
そう言いながらも素人である管理組合に対して、「マンション管理の正しい在り方」について教えてこなかった。
近年においては、マンション管理に関する情報が簡単に入手できる時代へと変わり、管理組合が自力でマンション管理を学ぶ機会が増えた。そこには2001年に創設されたマンション管理士の存在が大きい。
マンション管理士が国によって創設された意味を知れば、マンション管理業界のこれまでの失態を窺い知ることができるだろう。
マンション管理の正しい在り方について「教える人がいない」、それがマンション管理士が創設された意義である。
管理組合がこれまで知り得なかった情報がマンション管理士、そしてインターネットなどを通じて入手できるようになり、管理会社の情報だけではいかに不十分なのかを管理組合は知ることになるだろう。
管理会社が行う業務というのは、「教える」ではなく「代行する」に重きを置いている。視点を変えれば、管理組合がマンション管理について学べば、管理会社の存在意義(必要性)が薄れる。だから「意図的に教えることはしない」。
ここで言う教えとは、「管理組合とは」「総会とは」「理事会とは」「理事の業務とは」「監事の業務とは」、これら「マンション管理の基本となる教え」のことを言っているのではない。多くの管理会社はこの基本程度は教えているだろう。
そうではなく最も重要な根っこの部分、「マンションの将来を見据えた管理の在り方」、この教えである。
管理組合と管理会社は、利益相反の関係にある。これが存在する以上、教えることはしない。というか営利企業である以上それはできない。
コスト削減・価格の適正化=管理会社の売上・利益の減少
修繕積立金の不足回避=管理委託料の値下げ要求
これらは管理会社にとって「不都合な部分」になる。これまで教えることをしてこなかったから、管理会社主導の管理体制が生まれ、無関心、管理会社任せ、自主性を喪失させる「間違いだらけのマンション管理」が構築されてきた。
これこそが管理会社が理想として築き上げた「マンション管理の在り方」に思える。この考え方だとしたら、マンションの将来について真剣に考えることが果たしてできるのだろうか。
マンション管理の主体は管理組合にある
この主体性を説くのは、建前にあって、実態は異なっている。
マンションの管理組合の運営を支援する
この支援とは「何ぞや?」、一番疑問に感じながら仕事をしているのは、実はフロントマンだと思う。会社から売上を求められ、一方で管理組合を支援するという立場、そこに矛盾を感じながらフロントマンは仕事をしている。
私の管理会社時代の苦悩であり、周りのフロントマンたちも同じことを考えていた。管理組合に対して「正しいマンション管理のやり方」「マンションの将来を見据えた提案」について、分かっていても教えてあげられない。
そこにこのマンション管理業界が築き上げた負の問題が隠されているように思える。
なので、マンション管理の業務の一部を代行してもらうという考え方を持つことが大切であり、教えまでを求めるとすれば、きっと期待外れに終わってしまう。
これはあくまで個人的な意見になるが、本筋は間違っていないと思う。管理会社に何か不満を感じたら、この記事を思い出していただけたら幸いである。