管理会社

マンション管理会社|月次報告書について

2017年12月3日

 

何かの行為を第三者に委任する場合、受任者は事務処理の内容について、委任者に報告する義務がある。(民法645条)

分譲マンションの管理に例えるなら、委任者が管理組合、受任者が管理会社に該当する。

管理組合と管理会社の間で交わされる管理委託契約の書面においても、その報告に関わる義務規定が記されている。

毎月の事務処理の内容が記された月次報告書を管理会社が作成し、管理組合に毎月提出している。今回、この月次報告書について語りたい。

 

 

月次報告書について

管理会社が作成される資料の中に「月次報告書」という書類がある。これは毎月作成されているのだが、理事長、関係理事以外はこの書類を目にしたことはないだろう。

この月次報告書は、マンションの管理の運営状況、収支状況などが記された重要な書類になる。報告書の中身については、管理会社毎にその仕様は異なる。

必要だから作成されている書類なわけだが、ここでひとつ問題に気付く。この報告が事務的(提出だけ)に終わっている感は否めない。一方通行ということである。

例えば、管理費に未納が生じている場合、結果の報告だけが記載され、その経緯まで記されていないから把握ができない。

国土交通省がモデル契約書と作成している「マンション標準管理委託契約書」、多くの管理会社はこれに準じて契約書を作成している。

このマンション標準管理委託契約書の別添資料「別表第一」事務管理業務の中にこのような記述がある。

管理費等滞納者に対する督促

一 毎月、甲(管理会社)の組合員の管理費等の滞納状況を、甲(管理組合)に報告する。

二 甲(管理組合)の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。

三 二の方法により督促しても甲(管理組合)の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙(管理会社)はその業務を終了する。

上記の赤字部分の「○月の間」、国土交通省は敢えて期間を入れていない。「契約当事者の意向に沿ってこの期間を決めなさい」ということであろう。

一般的に3ヶ月という期間が用いられているのだが、マンションによっては6ヶ月にしているところもある。

注視すべきは、三の青字部分にある。「○月を過ぎれば管理会社はその業務を終了する」、言い換えれば、「○月を過ぎれば管理会社は督促に際して責任は生じない」「○月を過ぎれば管理組合が督促業務を行う」、それらを意味する規定である。

仮にその期間が3ヶ月だとすれば、そこから先の督促業務というのは法的措置も加わるからとても大変な業務になる。この大変な業務を理事長を率いる理事会が行うことになるのだ。

これが国土交通省のモデル規定になっているから手に負えない。せめて、その後においても管理組合の補助を行うなどの追加規定が必要ではないだろうか。素人では督促業務は難しい。

このような規定があることを管理組合は注視すべきである。



月次報告書に添付される資料

毎月提出される月次報告書には、雛型や規範となるものは存在しない。だから、管理会社毎にその内容は異なる。薄っぺらい報告書もあれば、分厚い報告書まで管理会社によって様々である。中にはこの報告書すら作成していない管理会社がもしかしたら居るかも知れない。

この報告書によって、管理会社のマンション管理業務に対する姿勢を窺い知ることができる。そんな見方もできる。

月次報告書の内容は、「会計報告」と「その他の事務管理に関する報告」の大きく2つある。これまで色んな管理会社の報告書を拝見させてもらったが、中でも必要とされる内容を以下にまとめてみる。

会計報告>

▶ 月次収支報告(収支計算書・貸借対照表)
▶ 滞納者一覧表(督促の経緯記録を含む)
▶ 管理組合の預金口座の通帳の写し

【補足】
通帳は本来なら写しではなく原本を確認することが望まれる。出金依頼書(金融機関窓口での払戻請求書)が添付されている場合は、書き足しができない数字・記号のチェック、最近では消せるボールペンが普及しているから消しゴムを使って消してみる、これらはやり過ぎではない(笑)。

フロント担当者による横領着服事件が過去に多く発生しているのだが、フロント担当者が金融機関の払戻請求書を持参し、理事長がそれに押印、その後に横領するといった手口が見受けられる。払戻請求書の金額、目的は十分にチェックすべきである。フロント担当者個人が払戻請求書を持参することは皆無に等しい。少しでも不信・疑問に感じたら、管理会社に確認された方がいい。

<その他の事務管理に関する報告>

▶ 管理員業務日報
▶ 建物設備巡回点検報告書
▶ 設備点検報告書の写し
▶ 清掃業務報告書(清掃前、清掃後の写真付き)
▶ 修繕工事完了報告書(施工前、施工中、施工後の写真付き)
▶ 建物・設備の不具合箇所の改善提案書
▶ 緊急対応報告書(遠隔監視含む)
▶ 建物設備巡回点検報告書
▶ 区分所有者、賃借人の変更に関わる報告書
▶ 駐輪場・駐車場の契約変更に関わる報告書
▶ 入居者からの要望・クレーム報告書(対応記録含む)

【補足】
これらの報告書は、管理会社が行ってきた受託業務の成果にあたる。そしてマンションの状態を把握するためには欠かせない資料となる。

報告書を見て、不備、記載漏れなど少しでも気になるところがあれば管理会社に確認する、そして指示を出すことも必要であろう。

 

月次報告書は結果が正しく記載されたものでなければならない。ただ受け取るだけではなく、そこにはチェックが必要になる。

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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