管理規約

マンションの民泊に関わる規約改正について

2017年11月30日

 

今年2017年6月9日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立し、それに合わせて国土交通省のモデル規約「マンション標準管理規約」の一部が同年8月26日に改正された。

今回の改正の趣旨は、分譲マンションにおける住宅宿泊事業(いわゆる民泊)をめぐるトラブルを防止する、それが目的であるのだが、意外と議論に至っていない管理組合が多いのではないだろうか。

私の住んでいるマンションでは、今の理事長に確認してみると、来年の通常総会時に管理規約を改正すると言っていたが、かなりのんびりムードである(笑)。

分譲マンションに住んでいる知人らに話を聞いてみると「民泊?なにそれ?」って、意外と知られていない。

 

知人の中には、「うちはリゾート型のマンションだから以前から宿泊事業が行われている」、そんな話も聞く。その知人は住宅宿泊事業法のことやマンション標準管理規約が改正されたことは当然に知っていた。

私の身近では、このようにマンションに住まれる方によって、マンション民泊の関心度に違いがある。

 

住宅宿泊事業法とは

住宅宿泊事業法とは、特定の事業者がマンションなどの住宅を宿泊施設(民泊)として利用させる際のルールを定めた法律である。

住宅宿泊事業に関わる特定の事業者の適正な運営を確保しつつ、国内外からの宿泊需要に的確に対応し、観光客の来訪や滞在を促進することで日本経済の発展に寄与することを目的としている。

ここでいう「特定事業者」とは、以下の3者を指す。

▶ 住宅宿泊事業者(民泊ホスト)

▶ 住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社)

▶ 住宅宿泊仲介業者(民泊仲介サイト)

住宅宿泊事業法において、それぞれの事業者に対し、届出や登録などの手続方法、業務内容、そして監督権限などが定められている。

住宅宿泊事業は、既存の住宅を1日単位で利用者に貸し出すもので、1年間で180日を超えない範囲内で有償かつ反復継続するものがこれに該当する。

ちなみにこれを超える場合は、住宅宿泊事業法の対象外となり、従来の旅館業法に基づく営業許可が必要になる。

今年6月9日に住宅宿泊事業法が国会で成立し、2018年6月15日に施行される。

これにより、今後、マンションにおける住宅宿泊事業が増えることが想定される。

 

<参考資料>

住宅宿泊事業法案

住宅宿泊事業法施行規則(2017年10月27日公布)

国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則(2017年10月27日公布)

 

マンション標準管理規約の改正

マンション標準管理規約とは、マンションの実情に応じて管理規約を制定、変更する際の指標として国土交通省が作成したモデル規約である。

今回の住宅宿泊事業法の成立を受け、国土交通省は、今年2017年8月26日にマンション標準管理規約の第12条を改正している。

▶ 住宅宿泊事業を可能とする場合

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

▶ 住宅宿泊事業を禁止する場合

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

<改正に関わる国土交通省の見解>

この住宅宿泊事業を許容するか否かについて、あらかじめマンション管理組合において、区分所有者間でよく御議論いただき、その結果を踏まえて、住宅宿泊事業を許容する、あるいは許容しないかを管理規約上明確化しておくことが望ましいものと考えられます。

国土交通省HP(2017年8月9日公表)

住宅宿泊事業をめぐるトラブルを回避する目的で、マンション標準管理規約の一部が改正されたわけだが、マンションによってはもっと細かな規定を設けることも考えられる。

国土交通省がそれに関わるコメントも提示されてるのでそちらも確認しておいた方がいい。

<コメントに掲げられた追記規定>

▶ 家主居住型のみ可能とする場合

▶ 新法民泊の実施にあたり管理組合への届出を求める場合

▶ 新法民泊を禁止することに加え、広告掲載も禁止する場合

<参考資料>

改正の概要(国土交通省)

マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(民泊関係改正)(国土交通省)

▶ マンション標準管理規約(団地型)及び同コメント(民泊関係改正)(国土交通省)

▶ マンション標準管理規約(複合用途型)及び同コメント(民泊関係改正)(国土交通省)

 

管理会社が住宅宿泊事業者になり得る

以前から分譲のワンルームマンションなどで、管理会社がマンスリー、ウィークリーといった住宅貸付事業を行っている。今後において、住宅宿泊事業法の成立などによって、マンションの管理会社が住宅宿泊事業に乗り出すことも十分に考えられる。

住宅宿泊事業をめぐる管理規約の改正にあたっては、管理会社の意見や意向に従うのではなく、管理組合自身がその是非について自主性を持って決めるべきだと思う。

私はマンションの住宅宿泊事業禁止派である。今でこそ問題の多いマンションなのに、それに部外者が加われば、色んな問題が起こり得る。住宅宿泊事業者の思惑通りにそれが具現化すれば、「行き違いだらけのマンション管理」になってしまうだろう。

空き家問題も深刻な事案なのは承知しているが、暮らしの安心が確保できなければ、もはやそれはマンションとは呼べまい。

不特定多数の出入りを認めれば、マンションの治安は悪化する。

マンションには小さなお子さん、お年寄りも住まれていることを忘れてはならない。

 

 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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