来年2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行され、同年3月15日から住宅宿泊事業の届け出が開始される。この届出の際に、そのマンションが住宅宿泊事業を許容しているかどうかの項目があり、その是非について、届出を行う事業者から管理組合へ確認の問い合わせが相次ぐものと推測される。
3月15日までに管理規約の改正を行うか、理事会で方針を決めておかなければ、それに応対できない。自分のマンションが住宅宿泊事業を許容するか否かについて、その期日までに管理組合としての明確な回答を用意しなければならない。
先日、私の住んでいるマンションの今の理事長に確認してみたら、「法律の施行は6月15日でしょ」と3月15日の届出開始の件については全く知らなかった。その件を理事長に伝えると…
「早速年内に理事会を開催して、来年1月に臨時総会を開催しましょう」…
いつも思うのだが管理会社はいったい何のために存在するのだろう?…
マンションの民泊がもたらすトラブル
住宅宿泊事業というのが特段問題なければ、そもそも管理規約を改正する必要などないし、管理組合内で議論する必要もなかろう。事務所として使用するわけでもなく、同じ住むという目的がそこにあるのなら、人に部屋を貸す「賃貸」と何ら変わらない。
東京や大阪などの都市圏において、民泊ポータルサイトを通じて貸し出された住戸に纏わるトラブルが数多く発生し、後を絶たないと聞く。
マンションはホテルではない。住まう方が寛ぐ場、生活の場であり、永住の住処である。そこに住む人たちと一時的な宿泊者との価値観の違いは当然に生まれる。
この価値観の違い、外国人の方であれば文化の違いによって様々なトラブルが起り得る。というか実際に起きている。
実際に起きているトラブル、起こり得るトラブル(勝手ながら)、そして問題点について簡潔にまとめてみた。
▶ 共用部分に纏わる騒音問題
エントランスホールや通路内での話声(騒ぐ声)、玄関扉を叩く音(呼び声)
▶ 専有部分(専用使用部分)に纏わる騒音問題
足を履いたまま歩く音(文化の違い)、バルコニーでの話声(騒ぐ声)、喫煙
▶ エントランスホールのホテルロビー化
宿泊者のたまり場と化す
▶ ゴミ出しのマナー違反
指定日時以外にゴミを出す、分別しない
▶ 外国人宿泊者に対する注意が困難
言葉が通じない、直接注意するのに抵抗がある
▶ 不特定多数の宿泊者の出入りによる防犯、防災上のリスク
性犯罪、密売組織の潜伏先(犯罪集団の拠点)、テロ集団の拠点、住人への危害
▶ 危険物の持ち込み
拳銃、思いもよらない危険物(文化の違い)
▶ 宿泊者による共用施設の占有
様々な施設の部外者使用
▶ 見知らぬ人とのエレベーター同乗
余計な気苦労、恐怖心
▶ 管理規約、使用細則の周知徹底が困難
説明不足、理解・認識不足
▶ 資産価値の低下
この判断は個々に委ねる
民泊については、それぞれに考え方が異なるだろう。理事会、総会で議論される際は、ただ単に管理規約を改正するのではなく、民泊における様々な問題点(要点)をしっかり把握することが重要ではないだろうか。
空き家が多いマンション、非居住の方が多いマンションでは、一概に民泊反対とは言えない事情は察する。住戸の貸し手側からすれば、この民泊は貸す手段がひとつ増えるわけだから、メリットになり得る。空き家、そして非居住者の比率が高ければ高いほど、民泊反対の合意形成をはかるのは難しく思える。
分譲マンションは、区分所有建物という特有の問題、そして特有の難しさがあるのだが、これに加えて今回の住宅宿泊事業法の成立そして施行、民泊反対を唱える管理組合にとっては本当に迷惑な話であり、より難題を背負わされる事案である。