近年、新築マンションでは入居時に修繕積立基金が徴収されている。これらは、登記費用、ローン事務手数料などの諸費用と併せて徴収されている。今では初回に支払う費用として慣習化されているのだが、この修繕積立基金が何の目的で徴収されているのか、意外と知らない方が多い。
マンションを販売しやすくするために購入者の毎月の費用支出を抑えたい、これが分譲会社の目論見にある。だから現実として初回の修繕積立金は低く設定されている。
マンションの場合、住宅ローンとは別に管理費、修繕積立金などの費用が毎月発生する。賃貸マンションの賃料とよく比較されるから、マンションの魅力を引き出す(購買意欲を高める)ために、その賃料を意識した料金設定を行う、これが分譲会社の販売戦略にある。
住宅ローン+管理費+修繕積立金=マンションにかかる経費、この経費が増えればマンションの魅力は薄れる。だから初回の費用をできるだけ低く抑えたいという考え方になる。
住宅ローンの経費というのは、分譲会社の意思では変えれない。変えられるのは管理費、修繕積立金である。
管理費は、分譲会社の子会社の儲け(利益)のために下げることはしない。そこで修繕積立金の金額を意図的に低く抑えている。将来不足することは当然知っている。
修繕積立基金はこれを補うための一時金の先取りと言える。最近は修繕積立金の値上げプランが販売時に購入者に提出されているわけだが、あくまでそれはプランであって、実際に値上げがなされなければ、将来の大規模修繕を行うために再び一時金が発生する、もしくは実施できない事態を招くことになる。
この修繕積立基金は、1回目の大規模修繕を行うための補填に過ぎない。2回目以降は修繕積立金を途中で値上げしなければ大規模修繕が行えない。
修繕積立基金は一時金の先取りであることを理解すべきである。
修繕積立基金が生まれた本当の理由
修繕積立基金の定義や生まれた理由、インターネットで検索してみるとありきたりな解説しか掲載されていない。そこには真実が語られていない。
修繕積立金を低くする代わりに初回に修繕積立基金を一時徴収する。これが分譲会社の建前であろうが、真実はそこにはない。もしそれを語るのなら、それは後付けの言い訳である。
そもそも修繕積立基金が生まれた理由はそこではない。
旧住宅金融公庫時代に「証券化支援による新型住宅ローン」という住宅ローンが存在した。その後、「フラット35」という名称に代わったのだが、このフラット35を利用する際に、昔はそれぞれの年数に応じた修繕積立金の条件規定があった。
5年未満 | 6,000円 |
5年以上10年未満 | 7,000円 |
10年以上17年未満 | 9,000円 |
17年以上 | 10,000円 |
フラット35を利用するためには、マンションベースで適合証明申請が必要になる。その申請の際にこの条件を満たさなければならない。
修繕積立金を低く抑えないとマンションは売れない、また当時フラット35が利用できないとマンションの販売に支障を来す、当時分譲会社の苦悩はそこにあった。
そこで旧住宅金融公庫が編み出したのが「修繕積立基金」という条件をクリアさせるための代替措置である。この修繕積立基金は修繕積立金の不足額に充当できる。だから修繕積立基金をどの分譲会社も初回に徴収するようになった。その後、この修繕積立金の条件規定は無くなったが、そのときの慣習が今に至っている。
これが修繕積立基金が生まれた本当の理由である。
修繕積立基金は販売戦略のためにある。