新築マンションの修繕積立金のほとんどが「段階増額積立方式」を採用しています。段階増額積立方式とは、当初の負担額を少なくして、段階的に値上げする積立方式のことを指します。
この段階増額積立方式は、間違った手法と言えます。なぜなら、過去にそれを教えてくれた反面教師がいるからです。その反面教師とは、旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が平成4年に販売した「ゆとりローン」のことです。
当時は「ステップローン」とも呼ばれていましたが、このローンの仕組みがまさしくこの「段階増額方式」に該当します。このローンの特徴は、6年目と11年目に返済額が一気に上がる仕組みで、終身雇用、定期昇給を前提として作られた住宅ローンです。
ところが上がるはずの給与が上がらない、定年前に仁義なきリストラに遭う、そのような状況下で余儀なく住宅を手放される方や自己破産が増えました。負担を先送りすることが危険なことを、このローンを利用された方なら理解できると思います。
実情とのミスマッチ、これにより平成12年に販売中止となりました。時代に合わずリスクしかない生まない商品だったから当然に消え去ったのです。
ほとんどの新築マンションの修繕積立金は、売りやすくする目的で当初の修繕積立金が低く設定されています。なので、途中で値上げを余儀なくされます。
当初が低いとその分の付けが後に回ってきます。これは国政とよく似ています。都合の悪いことは先送り、そして今の子供たちがその負担を背負うことになります。
今やるべきことを考え、それを実行しなければ、多くのマンションはそのような現実に直面します。
私の住むマンションは築3年目にして大幅な管理の見直しを行いました。当初の管理費は1万円、修繕積立金は5千円、見直し後、管理費1万円、修繕積立金1万円、管理費は見直しによって7千円になりましたが、駐車場使用料を管理費会計に入れているため、将来の駐車場の空き対策に備え、敢えて下げることはしませんでした。管理費会計の余剰金は毎期、修繕積立金に繰り入れています。
修繕積立金は、段階増額積立方式ではなく、均等積立方式を採用しています。なので、地震などの予期せぬ修繕が発生しない限り、築後40年目までは値上げすることなくマンションの維持管理が行えます。
毎月の支払いが均等だから、家計における将来設計が立てやすいというメリットがあります。
時代も変わり、マンションの住まい方も永住志向へと変わっています。永住を前提として考えるなら、今、そして将来の負担を分かち合う「均等」、これが理想といえます。
国土交通省もこの均等積立金方式を推奨しています。均等の修繕積立金を導き出すためには、マンションの長期修繕計画に記載された総工事費から逆算できます。個人的には、築後40年の長期修繕計画が必要だと思います。(詳しくはこちら)
仮に40年の長期修繕計画の総工事費を算出できれば、築後40年までの修繕積立金の毎月の均等額を導き出せます。
当然、見直す時期が早ければ均等額は低くなりますので、一度、理事会でシミュレーションしてみるといいです。
均等という考え方は、永住志向のマンションでは欠かせません。一方の段階増額積立方式は、先送りにより将来の負担が増える、このことをしっかり理解しておくべきです。
目指すは均等積立方式!