管理規約

管理規約原本の整備と保管場所と閲覧について

2017年8月23日

 

管理規約には「原始規約」というものがある。原始規約とは、マンションデべロッパー(分譲業者)によって作成された最初の管理規約のことだ。

厳密に言えば、デべロッパーによって販売開始前に規約の素案が作成され、マンション売買契約時に購入者全員から規約の承認を書面で取り付け、そのマンションの管理規約としている。

昔は、建物引渡し時(その後)に総会を開催して、総会によって承認される方法が用いられていたが、近年は前述の承認販売方式が主流になっている。

この原始規約は、管理規約1冊と最初の区分所有者(購入者)全員の承認印が押された書面によって構成される。なので、管理規約と承認書がセットということになる。

この2つを冊子にしたものが原始規約であり、最初の規約原本となる。

皆さんのマンションでは、規約原本がきちんと整備保管されているだろうか。調べてみたら「承認書がない」「承認書の一部が紛失している」、そんなことになっているかも知れない。

特に理事長は規約原本の保管者となるため、チェックは十分に行うべきである。

 

規約原本の整備

この原始規約は、最初の規約になるのだが、その後に規約が見直し(改正)されることが多々ある。

規約の整備方法については、国土交通省が作成しているマンション標準管理規約にその手順が記されている。

規約原本等

第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が記名押印した規約を1通作成し、これを規約原本とする。
2  規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。
3  規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名押印した上で、この書面を保管する。
4  区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。
5  第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
6  理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。

この赤字の部分が該当箇所となる。

管理規約にこのような記述があるにも関わらず、管理規約が全く整備されていない、そんなマンションが意外と多い。

管理会社が全てやってくれる、そう思っているのなら、それは大きな間違いである。言わないとしない、それが管理会社の本質なのだ。

逆に言われなくてもきちんと整備する、これを実行している管理会社であれば優秀といえる。ただし、そこだけの評価に他ならない(笑)。

そもそも管理組合が規約に関する知識を持ち合わせていない、そこに問題がある。少しずつでも勉強するしかあるまい。

知れば管理会社に規約改正後の整備について、適切な指示が出せる。



規約原本の保管

規約原本は管理者(理事長)が保管するのが原則である。マンション標準管理規約(第72条2項)にその旨が記されている。

その管理者がいないときは、区分所有者またはその代理人が専任されることになる。厳密に言えば、建物を使用している者の中から、規約または総会の決議で専任される。(区分所有法33条1項)

 

規約原本の保管場所

規約原本の保管場所については特に定めがない。なので、どこに保管しているかは、建物内の見やすい場所に掲示する必要がある。(区分所有法第33条3項、マンション標準管理規約第72条6項)。

法人化されている管理組合においては、理事が法人の事務所において保管しなければならない旨の規定がある。(区分所有法第47条12項)

 

 

規約原本の閲覧

規約原本の閲覧については、利害関係人の請求があったとき、それを拒絶すべき正当な理由がある場合を除き、規約を閲覧させなければならない旨の規定がある。(区分所有法33条2項、マンション標準管理規約第72条4項)

 

 

規約原本は、分譲マンションの規範となるものだが、それは所有者のみならず、外部の対外的評価となりうる。整備されていないマンションはそれ相応の評価しか得られない。

中古マンションを販売される不動産業者は、色んなマンションの規約を把握しているから、その規約によってマンションの良し悪しを判別している。管理組合は外部からそのように評価されていることを知る必要がある。

マンションは既に供給過多の時代である。更に人口減少によって空き家が増え続ける。このような状況下において、管理組合として何をすべきか、対外的な評価というものを意識しなければなるまい。

管理規約というのは、所有権を保護するために存在し、住んでいる皆さんが安心して暮らせるために存在している。故に管理規約というのはマンションにとって必要不可欠なものとなる。

もっと管理規約に関心をもつべきだと思う。

 


 

-管理規約

執筆者:

関連記事

マンションの規約原本の保管場所って?

  皆さん、規約原本って何のことかご存知ですか? 規約原本とは、現に有効な管理規約のことを指します。最初に作られた管理規約のことを原始規約といいますが、その後、管理規約が改正されるまでは、現 …

民泊に関わる方針決議、規約改正は進んでいますか?

  いよいよ明日(2018年3月15日)から、住宅宿泊事業者の届出が開始される。 これにより、分譲マンションにおいても民泊が実施され得ることになるのだが、今日に至っても、民泊の是非について協 …

マンションの民泊に関わる規約改正について

  今年2017年6月9日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立し、それに合わせて国土交通省のモデル規約「マンション標準管理規約」の一部が同年8月26日に改正された。 今回の改正の趣旨は、分譲マ …

マンションの民泊の是非|管理組合の規約改正はお早めに!

  来年2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行され、同年3月15日から住宅宿泊事業の届け出が開始される。この届出の際に、そのマンションが住宅宿泊事業を許容しているかどうかの項目があり、そ …

マンション標準管理規約と比較してみよう!

    新築マンションを購入する際に、そのマンションの管理規約は既に存在している。正しくは、マンションデべロッパー(指定の管理会社)が作成した管理規約の素案が用意され、売買契約時に …




 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

 ブログ内検索
 カテゴリー