管理会社

マンション管理会社の経営統合(合併)の本質を知ろう!

2020年1月11日

近年、マンション管理会社の経営統合(合併)が盛んに行われています。同時に管理会社の買収(M&A)を専門とするコンサルタントが増えています。

その背景には、マンション管理市場が衰退期へと移行し、大手企業の寡占化が進む中で、中小企業の経営が行き詰まり、事業再生、廃業を余儀なくされるという実情がそこに存在します。

マンション管理業界に限らず経営統合(合併)はどの業界でも行われていますが、そこでクローズアップされるのが、業界シェアの順位であったり、社員のリストラなどの事業再生であったり、役員人事の決定内容や株主総会の承認可否といった企業側の内情です。

大切な顧客のことが忘れ去られている…

そのように感じるのは私だけでしょうか?

マンション管理会社の経営統合(合併)は、マンションの管理組合にとって全く無関係ではありません。

委託先の管理会社の変化…

そこに注意を払う必要があります。

合併の場合、全く付き合いのない管理会社に変わることもありますし、そこで人事の異動が生じたり、経営方針が変わることもあるでしょう。その後どのように変わるのか未知数です。

マション管理会社の経営統合(合併)に伴い、マンションの所有者宛てに送られてくる通知書面、それを見てどのように感じるでしょう。

 

マンション管理会社の経営統合(合併)のお知らせ

 

💬大手企業だからそれでいいじゃん…
💬管理会社が変わるんだ…

あまり気にせずにスルー、これが多いのではないでしょうか。

その一方で、マンションの管理組合運営に積極的に参加されている方の中には、

💬次の管理会社大丈夫?
💬きちんと説明してもらわないと…
💬これを機に管理会社を見直そう!

そんな風に考える方がいらっしゃるかも知れません。個人的にはそのように感じてほしいと願います。

きっと今回の記事を読めば、この経営統合(合併)の本質を知り、少し考え方が変わると思います。最後まで読んでいただけたら幸いです。



経営統合と合併の違いについて

初歩的な話になりますが、「経営統合」と「合併」の両者は全く異なります。知らない方もいらっしゃると思うので、その違いについて解説します。

経営統合とは

経営統合とは、統合する企業同士で持株会社を新たに設立し、その持株会社により双方企業の全株式を管理する方法のことを指します。この場合、双方企業の法人格はそのまま残ります。

「〇〇ホールディングス」って聞いたことがあると思いますが、この名の付いた企業が前述の持株会社の代表格になります。

合併とは

合併とは、複数の企業が一つになることを指します。そしてこの合併には「吸収合併」「新設合併」の2つの手法があります。

吸収合併では、吸収される企業の法人格は完全に消滅して、吸収する企業に中身だけが引き継がれます。

一方の新設合併では、全ての法人格が消滅して、新たに設立された企業に全ての中身が引き継がれます。

マンション管理会社の合併の多くは吸収合併の方になります。

 

経営統合(合併)の目的について

マンション管理会社の経営統合(合併)の目的は、企業毎に異なります。買収する側の企業であれば、より一層の経営健全化がその目的になるでしょう。

一方の売却する側の企業の場合、複雑な内情がそこに存在します。親会社(分譲会社)の経営危機、将来への不安、事業の伸び悩み、取引先金融機関からの要請、不祥事による顧客離れ、後継者問題など理由は様々です。

他の記事にも書いていますが、管理会社というのは、管理戸数が増えれば増えるほど経営の安定化が図れ、金融機関を含めた取引先からの与信は高まります。

なので、管理会社を買収したいと考えている管理会社は多く存在します。

前述の売却する側の目的のひとつに挙げられた「不祥事による顧客離れ」ですが、横領事件などの不祥事が発覚した際に、信用喪失により管理委託契約の解約リスクが高まり、状況によっては経営危機に陥ることが考えられます。

そこで汚名を合併で揉み消す、価値があるうちに企業を手放す、そんな理不尽な合併が行われている感は否めません。

 

経営統合(合併)の裏側では

管理会社を買収するのはタダではありません。裏側では莫大なお金が動いています。 大手管理会社の買収ともなれば、数百億円で取引されています。

その取引について何か感じませんか?

自分たちのマンションが管理会社の価値に変わって取引に利用されています。私はそこにかなり違和感を覚えます。

私が管理会社を立ち上げたときの話になりますが、出資者から管理会社を買収する話を何度も持ち掛けられました。

結局その話は全て断り、買収には至りませんでした。

管理物件を増やすことはもちろん企業にとって必要なことです。ですが、お金で管理物件を買うことに納得できなかった。なぜなら、そこにお客様がいることに気付いたからです。

お客様には管理会社を選ぶ権利があります。その権利をお客様の承諾なしにお金で買う行為、私にはできませんでした。

もしやれたなら、きっと今よりもいい暮らしができたかも知れません。それが引き金となって、私は後に会社を去ることになります(苦笑)。

知人からは「あなたは真面目過ぎ、損してばかりだよね」ってよく言われます。でも自分に納得できない生き方だけはしたくない、それは昔も今も変わりません。

「マンション管理会社の経営統合(合併)のお知らせ」、この書面がもし届いたら、この記事を思い出していただけたら幸いです。

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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