マンション管理の駆け込み寺
駆け込み寺とは、困って行き詰ったときに助けを求める場所のことを指しますが、マンション生活を送るうえで何か困った事が発生した場合、身近にいる管理会社を頼ることが多いと思います。
そう考えると、管理会社もこの駆け込み寺のひとつと言えます。特にマンションを担当するフロントマンは、管理組合の皆さんから頼られる存在であってほしいと願います。
お~い、頼りにしてるよ!
理想と現実…
その期待も虚しく、管理会社に相談しても問題解決には至らず、不満に感じることもあるでしょう。未だに絶えることのない管理会社による横領事件、それに不信感を抱かれている方はきっと多いはずです。
信頼を無くすことを自らがやってるわけですから、もはや駆け込み寺とは言えません。
管理会社に対する不満や不信の声が高まれば、管理会社の変更を検討する管理組合も出てくるでしょう。そんなときの駆け込み寺ってどこになるのでしょう。
今回の記事では、管理会社以外の外部の相談窓口について、個人的な意見を交えながらお伝えしたいと思います。
相談先の留意点
分譲マンションの日常的な管理に関する相談、管理会社の苦情等に関する相談、管理会社の変更に関する相談等、近年では外部の相談窓口はかなりの数にのぼります。
そこで注意すべきことは、相談先のスタンスや利害関係の有無、その先にある目的などを前もって知る必要があります。そこを知らないで相談すると、行き違いが生じたり、問題解決には至らないケースが出てきます。
相談しても、結果が得られなければ意味を成しません。こちらは解決を求めて相談しているのに、相談員が建前のことしか話さない、これはよくある話です。そこで温度差を感じることもあるでしょう。
相談って、本音の話し合いだと思います。真意を伝えて本音の回答を得る、これってとても大事です。相談先には色んなしがらみがあったりもします。そこに注意が必要です。
マンション管理の相談先
一般社団法人マンション管理業協会
マンション管理業協会は、マンション管理適正化法に基づく指定法人になります。またマンション管理業者の団体という顔を持ちます。
管理組合等からの苦情相談への対応として、苦情解決委員会を設置するほか、本部及び6支部に専門相談員が置かれています。
管理会社の業務に関する苦情について解決の申し出があったときは、その相談に応じ、申し出人に必要な助言を与え、その苦情に係る事情を調査するとともに、その管理会社に通知してその迅速な処理を求めることが義務付けられています。
前述のとおり、マンション管理業協会はマンション管理業界の団体になります。マンション管理会社のおおよそ2割がこの協会の会員になりますが、会員、非会員に関わらず相談受付は可能です。詳しくはこちら👇
ここまでは建前上の話です。ここから本音の話になります。あくまで個人的な意見、人によっては戯言です(笑)。
マンション管理業協会は、マンション管理会社の集まりなので、相談員(専門スタッフ)が管理会社の関係者であったりもしますし、そこで我社の苦情相談を受けることもゼロではありません。
またマンションの管理会社が、この協会の役員というケースも考えられます。そこに利害関係が一致したりもしますし、管理会社寄りの考えでアドバイスを受けても意味を成しません。
管理会社の苦情に関わる相談の場合、もしこの協会の会員だとしたら、「おたくの会員が…」って私なら言いたくなります(笑)。そこで相談員は困惑するでしょうし、そこで適切な助言って果たして出来るのか疑問に感じます。
本音と建前、同じ貉(むじな)なら、きっと建前の方を選ぶと思います。本音で書くとこうなります(笑)。
公益社団法人マンション管理センター
公益財団法人マンション管理センターは、マンション管理についての適切な指導、相談、情報の提供を行うとともに、大規模修繕に必要な支援に関する事業、総合的な調査研究を実施している国が指定した公益法人です。
日常の管理組合運営や建物・設備の維持管理に関して困ったこと、分からないことがあれば、公平・中立的な立場で相談に応じてもらえます。
あくまで相談レベルなので、個人間のトラブルとか管理会社とのトラブルの仲裁には入りませんし、特定の弁護士や管理会社などの紹介は行いません。詳しくはこちら👇
管理会社の不正等に関する相談については、それぞれの地域に設けられた地方整備局に連絡する方が早いです。この地方整備局は、管理会社を監督する立場にあります。
NPO法人
NPO法人は、別名「非営利活動法人」といいますが、団体間の経験交流や情報交換などを通じて、管理組合の活動支援にあたる組織です。また行政に対して政策提言や意見表明などを行っています。
平成10年に施行された特定非営利活動促進法により、全国にNPO法人が創設され、21年の歴史と実績があり、マンション管理士制度が創設されるまでは、駆け込み寺の中心になっていました。
主に会員制が用いられ、管理組合がそこに入会することで無料相談などが受けられます。ホームページを覗いてみると初回無料相談といったサービスを行っていますが、あくまで入会や仕事受注を前提にした無料相談になりますので、そこを考慮して利用することをお勧めします。
NPO法人の中には、マンション管理の関係業者を対象とした賛助会員制というものがあります。管理会社もこの賛助会員になります。そこで個人的に問いたくなるのが、この賛助会員の在り方です。
この法人の会員になれば、管理会社であればリプレイスの相談先を紹介してもらえます。工事業者なら大規模修繕の相談先を紹介してもらえます。だから企業はその目的も兼ねて入会します。そう考えると賛助会員制って、会費が得られるからいい商売だと思いませんか。
非営利活動法人って、利益を分配しないだけでやってることは営利事業と何ら変わりません。業者を紹介することが目的になっていませんか? 私はそこを問いたいです。ここでもスタンスや利害関係は重要です。これも私の戯言ですよ(笑)。
マンション管理士
マンション管理士は、平成13年8月にマンション管理適正化法が施行され、国家資格としてマンション管理士制度が創設されました。
個人的にはこのマンション管理士に期待したいですね。ただし、横の繋がりや馴れ合いがないことが前提です。先に言っておきますが、私はマンション管理士の協会団体の回し者ではありません。どこかのマンション管理士事務所の関係者でもありませんから(笑)。
元業界人の私見として、相談先として一番期待できるのがマンション管理士だと思います。そうあってほしいと願います。でないと本当に相談先というのは無くなります。
私の管理会社時代には、とても嫌いな存在でした(笑)。でも、管理会社とは違い、管理組合側のスタンスで仕事をしてくれます。管理会社は利益相反の関係があるから、双方のスタンスをとらざるを得ません。
なので、マンション管理について何か困ったら、利害関係を持たない、実務経験豊富なマンション管理士に相談するのが一番だと思います。
熱い思いをブログに書き綴っている熱心なマンション管理士の先生方もいらっしゃいます。そこから、その人のマンション管理に対する考え方とか仕事に対する姿勢、人間性というのは伝わってきます。
くどいようですが、スタンス、利害関係の有無、慣れ合い、その先にある目的、相談する際は、そこに注意が必要ですよ。
最後に…
「駆け込み寺」に用いられている「お寺」、なんで駆け込む場所がお寺なのって不思議に感じませんか? 個人的に気になったので、その件についてネットで調べてみました。
言葉の由来は江戸時代まで遡ります。江戸時代には離縁(離婚)を調停する機関として、江戸幕府公認の指定されたお寺があったそうです。このお寺のことを「縁切り寺」と呼ばれていました。夫婦関係に行き詰った人たちがそこに駆け込む様子から「駆け込み寺」という名前に変わったとされています。