管理組合の決算報告書というのは、そのマンションの財務状況が記されたものであり、管理運営を行う上でとても重要な書類になります。
重要な書類にも関わらず、決算報告書の見方や問題点、改善点などのノウハウを教えてくれる人はいません。これは収支予算書、そして管理組合の会計監査にも言えることです。
通常総会のときに決算報告を行いますが、そこで十分な説明がなされずに報告書に記載された数字をただ読み上げておしまいになっていませんか?
説明する側は、受け手が理解していることを前提に説明を行っている節があり、形式的なものになっています。その繰り返しで期を重ねると、気付いたときには大きな問題と化し、難題を抱えることに繋がりかねません。
総会はディスカッションの場であり、互いに意見を出し合い検討することに意義があります。また、大きな問題とならぬように確認し合い、事前に話し合う場でもあります。
管理組合会計の予備知識を持つことで、これまで素通りしてきた決算報告について見方が変わり、きっと問題点とか改善点を見い出すことができます。
そこで今回、管理組合の決算報告書の中身について詳しく解説いたします。
管理組合会計の簿記方式
管理組合会計の簿記方法について、こうしなさいという明確なルールはありません。そこで平成15年に公益財団法人マンション管理センター(管理組合や管理関係者を支援するため、国より指定を受けた公益財団法人)のレポート「マンション管理組合の財務会計に関する会計基準の考え方と課題の整理」が道しるべになります。
このレポートの中に「簿記の方法には、単式簿記と複式簿記とがあるが、複式簿記によると適正な会計書類を作成することができることから、管理組合でも複式簿記を原則とすることが望ましい。」、この記述があります。
複式簿記とは
複式簿記とは、取引を「借方」と「貸方」の2つの側面に分けて、「仕訳」として記録する方法のことを指します。また、複式簿記では「発生主義」を採用します。
発生主義とは
発生主義とは、お金のやり取りに関係なく取引が発生した事実に基づいて費用と収入を認識する考え方を指します。
例えば、会計期間中に管理費等の未収金が発生した場合、実際に入金がなくても当期の収入として計上します。
後で説明しますが、収支報告書の管理費等の収入は未収金の有無に関係なく計上されます。これが発生主義の意味合いになります。
余談になりますが、費用と収入を認識する考え方として、発生主義以外に「現金主義」というものがあります。
この現金主義は、お金の動きだけを記録するとても簡単な考え方で、身近なところでは「家計簿」がこれに該当します。
ただし、現金主義では未収金は不明ですし、来期の収入とか経費が当期に計上されたりと、会計期間における正確な情報は掴めません。
管理組合会計も企業会計と同様に正確性が求められるので、前述の「管理組合でも複式簿記を原則とすることが望ましい」に紐付きます。
続いて決算報告書の中身についてですが、「貸借対照表」と「収支報告書」、「その他添付書類」で構成されていますが、これらの書類の中身について詳しく解説いたします。