マンション管理組合のペイオフ対策というのは、今では当たり前に行われている。2005年4月にペイオフが全面解禁となり、預金先の金融機関が経営破綻した場合、1,000万円とその利息までしか戻ってこない。
2010年に日本振興銀行が経営破綻し、日本で初めてペイオフが発動された。
今後の経済状況によっては、民間の金融機関が倒産することも大いに考えられる。修繕積立金などの預入先の選択にあたっては、このペイオフを意識した検討が求められるのは言うまでもない。
特に規模の大きなマンションでは、毎月の修繕積立金の徴収額が大きいから、1年経つとすぐに1,000万円を超えてしまう。そのため、預入先の金融機関が増え続け、会計処理や会計チェックなどの資金管理の面で手間が掛かる。この資金管理が次の課題となる。
国土交通省が5年毎に実施しているマンション総合調査(平成25年度)によると、修繕積立金の運用先は、以下のとおりである。
銀行の普通預金 | 79.60% |
銀行の定期預金 | 65.20% |
銀行の決済性預金 | 22.90% |
ゆうちょ銀行 | 6.0% |
マンションすまい・る債(住宅金融支援機構) | 21.20% |
積立型マンション保険 | 15.20% |
国債 | 2.0% |
地方債 | 0.3% |
公社債 | 0.4% |
投資ファンド | 0.3% |
その他 | 0.5% |
不明 | 2.7% |
(複数回答によるデータ)
国土交通省のアンケートでは、「運用先」という言葉が用られているが、個人的にはこの言葉は不適切に思える。「預入先」という言葉の方が適切だと思うのだが、そのように感じるのは私だけかも知れない(笑)。
修繕積立金は、マンションの維持修繕を行うために支払っているお金であり、運用目的で使われるべきお金ではない。「それは当然でしょ」と思われる方も多くいらっしゃると思う。アンケートの調査結果で「銀行の定期預金」が圧倒的に多い理由はそこにあると思う。
銀行の普通預金は、修繕積立金会計の預入先として必要になる口座なので最も多い。決済性預金を利用されている管理組合が多いのがアンケート結果から窺える。
決済性預金とは、利息が付かない代わりに預金の全額が預金保険制度により保障される預金口座のことを指す。
規模の大きなマンションでは、この決済性口座は利便性が高いものと言える。
マンションすまい・債については、独立行政法人住宅金融支援機構が国の認可を受けて債権を発行しているのだが、この良し悪しについて、個々の意見は異なる。安全という意見もあれば破綻も起こり得るという意見、住宅金融支援機構が経営破綻するのなら国も破綻するという意見も多い。
このマンションすまい・る債は、定期預金に比べると利息が高く、金融機関を最小限に減らせるなどのメリットがある。規模の大きなマンションでは口座数が減らせるという部分では利用価値はあるだろう。実情として利用している管理組合は2割程度となっている。
預金先については、マンション管理士にそれを尋ねたところで、私と同じように建前上の話しかできないのが実情であろう。逆に「これがお薦めです」って言い切れる方が怖い。
なので、預金先を決めるのは管理組合であり、常に正しい情報を得る必要があろう。