清掃は上からやるのが基本である。このように書くと「それって当たり前でしょ」、そう思われる方が大半だと思う。だが実際はどうだろうか。
汚れた箇所から先に清掃しているのが実情ではないだろうか。清掃の仕方には基本というのがある。頭では分かっているが、いざ清掃すると当たり前のことが当たり前に出来ていない。
清掃の基本を再認識していただくために、今回、清掃について語りたい。
清掃は上から下へ
マンションの室内の上部と言えば、食器棚や家具の上、テーブルの上、カーテンレールの上部、扉の上部、キッチンのレンジフード、浴室などの埋め込み式の換気扇、照明器具などが挙げられる。
上を清掃すれば下に埃が落ちる。だから清掃は上から行うのが基本である。ガリレオの物体の落下法則を思い出す。なぜこのような分かり切ったことを記事に取り上げたのか、それにはちゃんとした理由がある。
マンションの共用部分の清掃なのだが、汚れの発生には因果関係がある。例えば、マンションの共用廊下、バルコニーの手すり壁の汚れがある。
マンションにお住まいの方で、バルコニーの内壁の汚れが気になるという方が多い。上の写真は共用廊下の手すり壁の内側の写真になるが、雨だれによる汚れ、マンションではよく見かける光景である。
特に壁が白いと汚れが目立つ。この汚れには因果関係がある。この手すり壁の上部は、水平、内側へ傾斜、外側へ傾斜、この3つのうちのいずれかになっている。
この3つの中で、内側への傾斜、このケースが内壁の汚れが最もひどくなる。この仕様は、設計段階で決まるのだが、外壁面の美観を優先するか、内側面の美観を優先するか、設計士の判断に委ねられる。
マンションの多くは、水平もしくは内側への傾斜が一般的である。故に内壁が汚れるということだ。
内壁というのは、本来雨が直接かからない場所なのに雨だれによって汚れてしまう。縦線の汚れを見れば水が下に流れてできた汚れであることが理解できよう。
一番汚れるのはどの箇所か、それは天端(てんば)といわれる手すり壁の上部である。
上の写真がその天端なのだが、そこに黄砂、チリ埃などが溜まる。この天端に雨が当たる、そして内側へと水が流れる、それによって汚れが発生する。これが汚れの因果関係となる。
ここで上から下への清掃の基本が活かせる。この天端の上部の汚れを除去することで、内壁の汚れが少なくなる。
上の天端の拭き清掃は、日常清掃で十分補える。清掃を定期に行うことで、内壁は汚れ難くなる。これは完全たる方法ではないが汚れの度合いが違ってくるので是非実践してほしい。
天端の清掃を疎かにすると、内壁の広い面が汚れる。その後の手間を考えればどこを優先的に清掃すればいいのか理解できよう。
この広い面を清掃するのは大変な作業になる。そしてお金も掛かる。プロの清掃業者でないと正直素人では落とせない。強力な洗剤を使用すれば壁面が変色し、見た目が悪くなる。弱い洗剤だと中々汚れが落ちない。高圧洗浄でも落ちない厄介な汚れなのだ。実際にやってみれば分かることだと思う。
この因果関係というのは、建物の色んなところで活かせるし、再発防止にも役立つ。マンションを廻ってみると意外と汚れている箇所が見つかる。クラックなどの不具合もそうなのだが、結果には必ず原因がある。それを追求しないと再発は防げない。