マンションの大規模修繕は文字通り、大掛かりな修繕となるため、マンションの規模にもよりますが、数千万から億単位の多額のお金を費やします。
毎月コツコツ積み立てた大切な資金(修繕積立金)を取り崩して、大規模修繕を行うわけですから費用に見合うだけの成果は得たいものです。
しかしながら、大規模修繕には管理組合にとって不利益となる「仕組まれた罠」が存在したりもします。
今回、この「仕組まれた罠」について、語らせていただきます。
管理会社から紹介された業者はNG!
大規模修繕は管理組合にとって一大イベントにあたります。同時に委託先の管理会社もまた、多額の利益が得られる一攫千金のイベントになり得ます。
このように書くと不快に感じる方もいるでしょうが、管理組合の知らないところで業者間の癒着・談合があることは紛れもない事実です。
ここでいう「業者間 」とは、管理会社、設計監理を担うコンサルタント会社(設計事務所など)、施工会社のことを指します。
大規模修繕の実施にあたり、コンサルタント会社や施工会社を選定しますが、そこで注意すべきことがあります。
委託先の管理会社がコンサルタント会社や施工会社を紹介することがあります。その裏側では業者との癒着(談合)があることを疑うべきです。実際にそれは起きていますから。
良識のある管理会社なら業者との癒着を疑われるような言動は慎みますし、自制します。なので、自ら紹介することはまずしません。これはコンサルタント会社、施工会社にも言えることです。
業者を紹介するといった行為には必ず裏(意図的な罠)があることを管理組合は見抜くべきです。
▶ 管理会社と施工会社との癒着・談合
▶ コンサルタント会社と施工会社との癒着・談合
業者間の談合によって、どの業者が工事を受注するのか紹介時点で既に仕組まれています。相見積りは談合によって作成されたりもします。詳しくはこちらの記事👇
この談合は、割高工事を意味します。5,000万円で行える工事が8,000万円になるといった本当に馬鹿げたことが実際に起きています。だから談合というのは悪しき行いであって、管理組合はそれを見抜く必要があります。
公共入札の談合はNG、民間なら許せるのか、実情として民間においては、何でもありの感は否めません。だから管理組合は見抜く知識を自力で得る必要が出てくるわけです。
1回目の大規模修繕では、全体工事費を戸当りに換算すると100万円程度掛かります。総戸数、工事内容、地域によって異なりますが平均的な数値として覚えておくといいですよ。
2回目、3回目の大規模修繕もさほど大差はありません。ただし、大規模修繕のときに設備関係、金物関係の更新を行う場合は、当然に費用は上がります。また、サッシの更新、給排水管の更生・更新工事を同時に行う場合はかなり費用が上がります。
4回目の大規模修繕は現実味がないかも知れませんが、屋上防水工事、外壁塗装は下地からやりかえる必要があるため、その分費用が上がります。状態によっては3回目の大規模修繕のときに行うこともあります。
前述の戸当り工事単価を基準にして、実際の見積金額と比較することで色んなことが見えてきます。
この基準よりも高いとか低いについては、それぞれにそうなる理由があります。この理由については、納得がいくまで業者に確認することをお薦めします。そこで十分な説明ができない業者は失格です。単に高いだけとか安かろう悪かろうでは困ります。
管理会社、コンサルタント会社、施工会社からの紹介は一切受け付けない、この考え方が割高工事を免れるためには必須です。
管理会社の元請工事はNG!
管理会社はそもそも建設工事が本業ではありません。言い換えれば建設業の真のプロではないということです。分かっているようで実は分かっていない、そこが怖いんです。
管理会社は、管理しているマンションの工事予定時期とか予算(懐具合)などのあらゆる情報を管理業務を通じて把握しています。故に管理会社にとって工事受注は有利に働きます。好都合だから建設業登録を行い、大規模修繕を自らが行っている感は否めません。
なぜ管理会社の元請工事はNGなのでしょう。
実際に工事を行うのは下請け業者です。元請業者よりも下請け業者の方が知識と経験に勝るという本末転倒がそこにあったりもします。また、そこには常識を超えた中間マージンが存在したりもします。
下請け業者は工事金額をとにかく叩かれます。そうしないと前述の中間マージンは得られません。原価は抑えて利益は暴利、結果として割高工事が生まれます。下請け業者は割に合わないから必ずどこかで手を抜きます。金額に見合うだけの工事しかしないということです。
材料の仕様を落としたり、外壁塗装の3回塗りのところを2回で済ませたり、現場に入る職人さんを減らしたり、丸投げの丸投げが生じたり、手抜きには色んな方法があります。
管理組合が支払う工事費は割高なのに対し、行われる工事が安かろう悪かろうの工事になっている感は否めません。
これは名ばかりの建設会社にも言えることです。
管理会社のリベートは割高工事を生む
管理会社は前述のとおり、工事に関わる情報とか顧客情報を把握していますので、それを知っている建設会社や設計事務所の営業マンは管理会社を訪問します。そこで仕事欲しさにリベート(紹介料)の話を持ち掛ける愚か者がいたりもします。
それをビジネスだと勘違いしています。このリベートが波及して、未だ絶えることのない管理会社の横領事件に結びついている感は否めません。
施工会社から受け取るリベートは工事費の10%から20%、紹介するだけで大金がもらえるから、管理会社にとって一攫千金のイベントになるわけです。
1億円の工事であれば、1,000万円から2,000万円もの大金が管理会社に入ります。地方の中古マンションがひとつふたつは買える金額ですよね。
このリベートが工事費に上乗せされているとしたら、割高工事というよりも、もはやぼったくり工事です。
このリベートは管理会社だけの話ではありません。コンサルタント報酬を異常に安くして契約に漕ぎつけたコンサルタント会社が裏で多額のリベートを施工会社に要求したり、受け取る行為が水面下で行われています。
これらの悪しき行為が水面下で当たり前に行われている事実を管理組合の皆さんは是非知っておいてほしいです。(過去に国土交通省が管理組合・区分所有者宛てに出したこの件に関わる通知書面👇)
▶ 設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について
それとは無関係に癒着を嫌い、管理組合と真摯に向き合い、健全な事業を行っている関係業者も中にはいます。残念ながら私が知る限りほんの僅かですが…
なので、これからもっとNOリベート宣言を公約できる業者が増えて欲しいと願います。
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