十数年に一度、マンションの全面リニューアルが実施される。一般的には大規模修繕と呼ばれているが、その工事には多額のお金が掛かる。
数千万から億単位のお金、毎月コツコツ貯めた大切な修繕積立金を投資する工事でもある。
それ故に管理組合として成功させなければならない。
しかしながら、大規模修繕には管理組合にとって不利益となる「仕組まれた罠」が存在する。その話をこれからする。
管理会社から紹介された関連業者はNG!
管理組合にとっては一大イベントにあたる大規模修繕だが、管理会社にとっても多額の利益が得られる一大イベントであることを知っておくべきである。
この大規模修繕の実施にあたり、設計コンサルタント、施工会社の業者選択を行うことになるが、ここで注意しなければいけない。
管理会社が設計コンサルタントや施工会社を紹介するケースが多い。そもそも管理会社が業者を紹介する行為自体が間違っている。
なぜなら、裏では業者との癒着(談合)が行われているからだ。これは紛れもない真実である。私はそれが嫌になってマンション管理業界、そして建設業界を去った。
良識ある管理会社は、業者との癒着を疑われるような行動は慎む。だがら自ら紹介することはしない。これは設計コンサルタント、施工会社にも言えることだ。
積極的に紹介する行為には必ず裏があることを知るべきである。
▶ 設計コンサルタント(設計事務所)と施工会社との癒着・談合
業者間の談合によって、どの業者が工事を受注するのか紹介時点で既に仕組まれている。相見積りも談合によって作成されたものだ。
この談合は、割高工事を意味する。5,000万円で行える工事が8,000万円になるといったケースもある。1戸当りの工事費は100万円が目安となる。この金額を覚えておくといい。
管理会社、設計コンサルタント、施工会社からの紹介、とにかく関連業者からの紹介は一切受け付けない。これが割高工事を免れるためには必要である。
<国土交通省の通達文書>
<癒着に関わる関連記事のリンク先>
管理会社の元請工事はNG!
一般的に建設業界は丸投げ体質であり、管理会社も同じである。建設会社と管理会社の違いはひとつだけある。管理会社はそもそも建設工事が本業ではない、言い換えれば建設業のプロではないということだ。
管理会社は、管理しているマンションの工事予定時期、予算などあらゆる情報を管理業務を通じて把握している。だから管理会社にとって工事受注は有利に働く。好都合だから建設業登録を行い、大規模修繕を自ら行っているのだ。
なぜ管理会社の元請工事はNGなのか。それは、中間マージンの額がデカすぎるというのと、下請け業者の工事金額を叩いて叩いてとにかく値切る。原価は抑えて利益は暴利、結果として割高工事費が生まれる。そして実際に工事を行うのは下請け業者、割に合わない叩かれた工事費では粗悪な工事しか行えない。
下請け業者は、金額をとにかく叩かれる。かといって割に合わない工事はしない。材料の仕様を落としたり、外壁塗装の3回塗りのところを2回で済ませることもある。ようするに手抜き工事が水面下で行われているのだ。
管理組合が支払う工事費は割高なのに対し、行われる工事が安かろう悪かろうの工事になっているのが実情として多い。
本当に馬鹿げた話である。だから管理会社はNGなのだ。
管理会社のリベートは割高工事を生む
管理会社は前述のとおり、工事に関する情報、顧客情報を把握している。だから施工会社などの営業マンが管理会社にやってくる。そこでリベートの話が行われる。
管理会社が施工会社から受け取るリベートは工事費の10%から20%、紹介するだけでこのパーセンテージはデカい。1億円の工事であれば、1,000万円から2,000万円もの大金が管理会社のリベートとなる。地方の中古マンションがひとつ買える金額である。
これが工事費に上乗せされているのだから、割高工事というよりもぼったくり工事がしっくりくる言葉ではないだろうか。
このリベートは管理会社だけの話ではない。コンサルタント報酬を異常に安くして契約に漕ぎつけた設計コンサルタントが裏で多額のリベートを施工会社に要求したり、受け取る行為が水面下で行われている。
これらが当たり前に行われている事実を知っておいてほしい。
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それとは無関係に癒着を嫌い、管理組合のために真摯に事業を行っている業者も少なからず存在する。NOリベート宣言を公約できる業者がこれからもっと増えて欲しいと願う。
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