消費税が導入されたのは1989年4月、税率3%でスタートし、その後1997年4月に3%から5%に引き上げられ、そして更に2014年4月に5%から8%に引き上げられた。
2019年10月に予定している8%から10%への引き上げ、これが実行されれば3度目の引き上げになる。
マンション管理において、消費税は無関係ではない。引き上げの度に支出は増えている。
築31年を超えるマンションでは、最初の管理費設定の際に見込んでいなかった各支出項目に課税される消費税10%が重くのしかかる。
築23年を超えるマンションでは、同様に引き上げ分の7%を見込んでいないマンションがほとんどであろう。そして築6年を超えるマンションでは5%の引き上げ分は見込んでいないだろう。
そんな状況下でマンションの管理運営を余儀なくされる。
管理費、修繕積立金は課税対象外だから、直接的に引き上げられることはない。だから無関心になりがちになる。
それぞれの支出項目に消費税が課税されるから、収入は変わらず支出が増えるといった事象が当然に起こる。マンションによっては管理費が不足するといった事態を引き起こす。修繕積立金の資金計画(値上げの計画)に誤算が生じる。
そこで管理費、修繕積立金の見直しが必要になる。しかしながら、委託先の管理会社から積極的に値上げに関わる提案はなされない。なぜなら、値上げを提案すると「その前に管理委託料を下げろ!」という声が出ることを恐れ、意図的に値上げの話はしない。
収支の見直しがなされないと収支はどんどん悪化する。それが消費税の引き上げの際に注意すべき点となろう。
消費税10%に対応した収支の見直しは絶対に行うべきだと思う。他の記事にも書いていることだが、長期スパンで収支計画(見通し計画)は策定すべきである。長期修繕計画の見直しも同じである。
もうひとつ消費税の引き上げの際に注意すべき点がある。それは駆け込み心理による工事実施の前倒しである。
特に大規模修繕は大金を伴うから消費税の額は大きなものとなる。だから、消費税値上げ前に工事を実施する管理組合が多い。それは正しい選択なのか? そこを問いたい!
駆け込み需要(工事)が集中するとどうなるのか…
職人、材料が不足する。不足するものが増えると逆にコストが高くつくことがある。近年、建設ラッシュにより建設費は上がっている。そこを考えれば市場の原理がどのように働くのか察しがつくだろう。
集中すると工事の仕上がりにも影響が出る。状況によっては粗悪な工事も起こり得るということだ。どの工事会社もキャパシティに限界がある。仮にこれを超える量を受注するとしたら、工期を短縮するか、丸投げ発注を増やすしか手立てはなかろう。でも実際には職人が足りず工期が延びているのが実情だと思う。
マンションによっては、いつもまで経っても撤去されない養生シートと足場、窓回り、ベランダ、バルコニー、共用廊下が真っ暗という事象が長期間に及んだりもする。梅雨時期に入れば、締め切った部屋の中にカビが生じたりもする。
職人が不足する中で工期を短縮するとしたらどのような結果を招くのか、逆に工期が延期されるとどのような事象が起きるのか、丸投げ発注による工事がどのような結果をもたらすのか、そこに注意を払う必要があろう。
駆け込み需要の裏側に潜む問題点を把握し、それを踏まえた議論が必要になるだろう。
今回の値上げが実行されれば2%の引き上げになるわけだが、駆け込み需要によって2%が高い代償に変わることもある。敢えて工事が集中する時期に他に便乗して発注する必要はない。これは個人的な意見なのだが…
もっというのなら、工事会社の仕事量の少ない時期に工事代金から5%を値引きをしてもらった方が得だと考える。集中しないから工事品質もこちらの方が安心ではないだろうか。
今後、委託先の管理会社から「消費税の値上げ前に…」という切り口の提案が増えるだろう。その工事を今する必要があるのか、そこを十分議論すべきではないだろうか。
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