管理組合役員

管理組合|役員の選出と選任について

2018年1月14日

 

分譲マンションには「管理組合」という組織が存在し、この組織の管理規約によって定められた役員が置かれている。

この役員は、「理事」と「監事」の二つに分かれ、通常総会の開催前に各役員の候補者を選出して、通常総会で選任されることになる。

この役員の決め方については、管理規約に規定されているのだが、私が管理会社時代に間違った選任の仕方をよく見聞きした。具体例を挙げてみる。

<第〇期/役員候補者>

201号 佐藤 〇〇氏
301号 鈴木 〇〇氏
401号 高橋 〇〇氏
501号 田中 〇〇氏
601号 伊藤 〇〇氏

役員の候補者が選出され、通常総会時に上記の5名が選任(承認)され、後日、当事者間の話し合いにより役職を決めるケースである。

どこが間違っているのか、お分かりいただけるだろうか。



マンションの管理規約の多くは、国土交通省が雛型として作成している「マンション標準管理規約」に準じて作成されているのだが、この規約の第35条第2項、第3項にこのような記述がある。

マンション標準管理規約第35条(役員)

2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。

この規定が置かれているマンションでは、監事は総会で選任することになるから、監事の候補者が誰なのか決める必要がある。そして、後日の理事会で決めれるのは、理事のそれぞれの「役職決め」ということになる。

実務における間違いとして意外と多く見受けられる。

例えば、601号の伊藤氏が監事に選出された場合は、総会議案書の役員候補者の記載内容は以下のようになる。

<第〇期/役員候補者>

201号 佐藤 〇〇氏 理事
301号 鈴木 〇〇氏 理事
401号 高橋 〇〇氏 理事
501号 田中 〇〇氏 理事
601号 伊藤 〇〇氏 監事
※理事の役職は後日理事会で決定します。

理想を言えば、総会前に理事の全ての役職を決めて総会で承認を諮ることが望まれる。誰が理事長候補者なのか事前に知り得るし、総会後に開催される理事会で役職者が決まらない、これを未然に防げる。

次の役職者が決まらないと困るのは前役職者たちである。

役員の任期について、マンション標準管理規約第36条第3項にこのような記述がある。

マンション標準管理規約第36条(役員の任期)

3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。

赤字の「後任の役員が就任するまで」、この解釈は人によって異なるだろう。ここでいう後任の役員とは、ただ単に役員のことを指すのか、それとも役職まで含めるのかである。就任、そして職務という言葉があるから、役職者のことを指すのだろう(自己解釈)。

解釈が異なれば揉める要因になるし、特に役員の引継ぎの時期が不明確になっては、前役員が困るだろう。

なので、通常総会時に役職まで含んだところの役員選任(総会承認)が理想である。

<第〇期 役員候補者>

201号 佐藤 〇〇氏 理事長
301号 鈴木 〇〇氏 副理事長
401号 高橋 〇〇氏 会計担当理事
501号   田中 〇〇氏 理事
601号 伊藤 〇〇氏 監事

私の住んでいるマンションでは、2年任期の半数改選、そして輪番制になっているのだが、通常総会の直前に開催される理事会で、次期役員候補者に出席してもらい、そこで各役職の候補者を選出し、後日開催される通常総会で承認を諮っている。なので、管理規約もそれに合せて以下の内容に変更している。

総会前に理事の役職まで決める行為について、異論を唱える方がいらっしゃるが、それはマンション標準管理規約という教科書に沿った意見であって、実務においては、次期役員候補者の中から監事だけを決めることはせずに、理事の役職を含めたところで暫定的に決める方がごく自然な流れに思える。それに沿った管理規約に改定さえすれば事足りる。

理事会に敢えて出席してもらうのは、理事会の議事録に各役職の候補者の選出に至るまでの経緯が記録できるし、行き違いを防げる。くどいようだが、総会後に開催される新役員の理事会がいつまで経っても開催されない場合、管理組合の運営に支障を来すことになるし、事後に決める方がリスクが高いと思う。

管理規約/役員

2 理事(役職を含む)及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事候補者の中から、理事会で選出する。
4 役員候補者は、輪番制により選出するものとし、自薦を妨げない。但し、自薦により役員に立候補する組合員は、当期の前期末までに書面により申し出るものとする。

管理規約/役員の任期

3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役職者が就任するまでの間引き続きその職務を行う。

自薦を容認する管理規約に変更しているし、そして、役員候補の関係者が集まる理事会だから、再任についての話し合いができる。

ちなみにこの再任については、マンション標準管理規約ではこのような記述になっている。

マンション標準管理規約第36条(役員の任期)

第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。

マンション管理規約は、管理会社時代に原始規約の作成から既存規約の見直しまで嫌になるほど携わってきた(笑)。ひとつを変更すれば、どこかに矛盾が生じたりもする。管理規約というのはとても厄介である。

自分たちの管理規約は、自分たちのマンションの実情に見合ったものに変える必要がある。特に揉めると管理規約というのは引き合いに出されるから、矛盾だけは避けたい。

追記になるが、輪番制は、各階の横並びで選出するのではなく、各階から1名ずつ縦割りで選出する方法がベストである。例えば、低層階と高層階とでは、エレベーターの必要性(利用価値)は異なるだろうし、階毎の意見というのは貴重だからである。

 

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マンション標準管理規約と比較してみよう!

 

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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