マンション管理に費やされるお金は30年で数億円にも及ぶ。ひとつ一つの支出金額は小さくてもそれが積み重なれば巨額な経費と化す。
なので、ひとつ一つの支出項目を精査することが重要であり、目先ではなく長い目で物事を捉える必要がある。
それぞれの支出項目をじっくり精査してみると、割高なコストを支払っていたことに気付いたりもする。ここでいう精査とは、仕様の中身のチェック、それぞれの金額の比較のチェックを意味する。
私の住んでいるマンションでは、第1期から第3期にかけて、委託先管理会社の管理委託料を含め大幅な見直しを行い、それから20年の月日が経過しているのだが、見直しを行わずに当初の経費を20年間払い続けていたとすれば、約2千万円もの大金を余計に支払っていたことになる。
それと日常の修繕費、設備の更新費用、大規模修繕費用、これらの費用もきちんと精査してきたから、ここでも1千万円以上の大金を余計に支払わずにすんだ。
ここでいう余計とは、「不適切なもの」「内容が伴っていないもの」「適正価格ではない」という意味である。これらの代名詞が管理会社の受け取るリベート、中間マージンであったり、競争の原理が機能していない費用である。(詳しくはこちら)
特に当初の管理委託料は、管理会社1社独断で決めた言い値の料金であり、それ以外の支出項目に該当する業者は、管理会社(マンションデべロッパー)指定の業者となる。
そこには競争の原理が機能しておらず、バックリベートが存在したり、中間マージンの温床と化している。これらがまさに余計なコストと言える。
見積書のチェックポイント
マンション管理には見積書はつきものである。そして見積書があっての請求書、これが大原則になるのだが、発注先を選考する上で前述の見積書の精査というのは欠かせない。
公金の使途には大義が必要である。「その業者を選考した理由」「その業者に決めた理由」、これらの質問に的確に答えられる、それが大義となる。「管理会社から勧められた」、これは大義とは言えない。なぜなら、当事者である管理組合の意思というのがそこにはないし、管理会社は一業者に過ぎないからである。
見積書は1社ではなく複数社から取り寄せる。比較検討を行う上でとても重要なことである。見積金額は業者毎に異なるから、適正価格を知るうえで数が多い方がより把握できるし、仕様の中身の違いを知ることができる。
なので、見積書というのは、1社だけではその中身の良し悪しは掴めないし、他に比較材料がないと費用対効果を知ることはできない。
管理会社から自社の見積書と併せて提出された相見積書、これは本当に当てにならない。どう転んでも管理会社に利益が入るように仕組まれている。全ての管理会社がそうしているとは言わないが…
なので、面倒かも知れないが、自分たち(理事会)で見積書は取り寄せる必要がある。これをしなければ前述の余計な出費は免れないし、本当の意味で納得はできまい。
他の業者から見積書を取り寄せる行為は、管理会社にとってマイナスではない。管理会社を率いるマンション管理業界の質向上に繋がる。独占的思考はサービスの質向上には繋がらない。だから競争意識を持たせることが重要だと思う。これは元業界人だから言えることだが…
見積書においては、合計額を重視しがちだが、その合計額に至った理由(内訳)を重視すべきであり、そこを十分に理解する必要がある。
内訳項目の少ない見積書
内訳項目の少ない見積書(どんぶり勘定)をたまに見かけることがある。これでは比較検討できない。このような見積書を提出する業者は、業者選考から外すべきだと思う。
見積書というのは、業者の誠意が垣間見れる。例えば、消防設備点検の見積書が参考例として挙げられる。マンションの消防設備の全てが記載され、個数とその単価まで細かく記載されている見積書を提出される業者がいる。算定根拠が記された適切な見積書と言える。
一方では、詳細が記されずに「消防設備点検一式」、どちらが親切なのか見てとれる。業者の誠意というのは、見積書だけではなく実際の作業にも言えることだし、作業の完了報告書も同じである。
簡略化=手を抜く、仕事まで手抜きされては困る(笑)。
宛名の違う見積書
管理組合宛ての見積書なのに、管理会社名になっている見積書を管理組合が受け取ることがある。これも業者選考から外すべきだと思う。管理会社が発注者だと勘違いにもほどがある。そういう業者は、管理組合寄りのサービス提供はできまい。
商品名が記載されていない見積書
商品名が記されていない見積書をたまに見かけるのだが、商品は見積書の主役となる。メーカーと品番の記載がない見積書は、素性の分からない見積書と何ら変わらない。メーカー、品番毎に性能、機能、価格などは違ってくるから、判断する上で欠かせないものとなる。
それに管理組合がメーカーを指定してる場合、無記載だと行き違いが生まれる。
単価が明記されていない見積書
見積書でよく見かける「一式」という表示、このどんぶり勘定では比較できない。数量と単価があっての見積もりである。どのようにして導き出された金額なのか、算定根拠を知るために見積書の内訳は存在する。
有効期限が明記されていない見積書
近年建設費はかなり高騰している。特に材料費、人件費などは景気(需給バランス)によって左右されるから、行き違いが生じないように見積書に有効期限が明記されている。管理組合の場合、見積書を受け取ってから発注に至るまでの期間が長い。なので、この有効期限は注意を要する。
一般的に見積書の有効期限は3か月に設定されていることが多いが、見積書を取り寄せる段階で有効期限を超えることが明白な場合は、事前にその期日まで延ばしてもらう交渉が状況によっては必要になる。発注が決まり値上げされては困る。なので、有効期限は重要である。
有効期限の記載のない見積書を見かけたりもするが、未来永劫その金額ではないだろうとそこを突っ込みたいところだが(笑)、事前に確認された方がいい。というか記載されていない見積書を提出する業者側の危機管理体制を疑ってしまう(笑)。
諸経費が記載されている見積書
諸経費は、修繕工事の場合、合計額の10%から15%の金額が計上されていることが多いのだが、この経費には業者側の利益、現場経費、交通費、通信費、本社の管理費などが含まれている。
便宜上、これらの項目を一括して計上するために用いられる項目になるが、実際には商品代、工事費などの項目の中に業者側の利益などが上乗せされているから、この諸経費というは、利益の二重取りの項目にしか思えない。これは個人的な意見である。
見積書を多く取り寄せ、そして比較することで、きっと見えてくるものがあると思う。