管理委託契約書は、管理組合と管理会社との間で取り交わすとても重要な書類である。
ほとんどの場合、管理委託契約書は管理会社が準備し、事務的に契約締結がなされているのが実情ではないだろうか。
管理委託契約書と言えば、国土交通省の行政指導の指針となる「マンション標準管理委託契約」というものがある。
多くの管理会社は、この雛型に準じて契約書を作成しているのだが、じっくり内容を確認してみるとマンション毎に少し異なったり、管理会社に有利なものであったりする。
そもそも「マンション標準管理委託契約書」というのは、マンションの管理の適正化に関する法律(平成12年法律第149号)第73条に規定する「契約成立時の書面」として交付する場合の指針として作成されたものである。
第73条 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結したときは、当該管理組合の管理者等(当該マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合又は当該管理組合に管理者等が置かれていない場合にあっては、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員)に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。一 管理事務の対象となるマンションの部分
二 管理事務の内容及び実施方法(第七十六条の規定により管理する財産の管理の方法を含む。)
三 管理事務に要する費用並びにその支払の時期及び方法
四 管理事務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容
五 契約期間に関する事項
六 契約の更新に関する定めがあるときは、その内容
七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八 その他国土交通省令で定める事項
2 マンション管理業者は、前項の規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。
実務においては、法律上の「契約成立時の書面」、それが管理委託契約書ということになる。なので、契約書にはこの第73条に規定された一から八までの事項がそれぞれ記されている。そして管理業務主任者の記名押印が必要になる。
この第73条に規定された一から八までの条項は、契約締結前に行われる重要事項説明の書面にも同様に記されている。
マンション管理委託契約書では、「契約成立時の書面」を交付することを指針としつつ、実際の契約書作成にあたっては、個々の状況や必要性に応じて内容の追加、修正を行いつつ活用されるべきものとされている。
なので、マンション毎に管理委託契約書の中身は少し異なっている。この違いを決めているのは誰なのか、そう管理会社ということになる。そこに管理組合の意思は反映されていない。それが実情ではないだろうか。
管理会社が作成する管理委託契約書は、あくまで案であって、内容については、管理組合と管理会社との話し合いによって決めるべきである。
だがしかし、実情はこの話し合いの機会が持たれていない。だから同じ契約内容のまま、契約締結という行為が繰り返されている。これでは自動更新と同じである。
管理組合に検討する機会が設けられた、それがマンションの管理の適正化の推進に関する法律ではないのだろうか。自動更新の排除の意義はそこにある。
一般的に管理委託契約は1年という期間になっているから、年1回開催される通常総会で「管理委託契約に関する承認事項」、この議題が提起され、そこで出席者の皆さんで話し合うのだが、理事会が事前にこの議題についてどれだけ協議されているのか、そこが問題としてある。
例えば、管理費等の督促業務の期間を3ヶ月から6ヶ月に延長する(詳しくはこちら)。協議を行えば管理組合にとって有利な契約内容に変更することができるかも知れない。切れた照明を当日交換に変更できるかも知れない。
日頃不便に感じることや、管理会社に対する要望・不満・改善点をまとめてみる。これを管理会社との管理委託契約に反映させることができるかも知れない。
敢えて「かも知れない」という表現にしているのだが、何もしなければ何も変わらない。
そのための協議である。