管理委託契約

分譲マンション|管理委託契約には委任と請負の2つがある!

2020年8月14日

 

マンションの管理組合の多くは、管理業務の一部または全部を管理会社に委託していますが、管理組合と管理会社との契約関係について、実情として分かりにくいところが多々あります。

 

 

両者間で交わされる「管理委託契約」、そこに「両者の関係」が記されていますが、この契約には「委任契約」と「請負契約」の2つが混合しています。見方を変えれば「管理会社は2つの立場を持っている」ということになります。

本来なら、委任契約と請負契約というのは法的性質が異なるため、別々に契約することが望まれます。しかしながら、国土交通省の行政指導の指針となるマンション標準管理委託契約書において、この2つが混合した雛型になっているため、実情として別々に契約されるケースはほとんどありません。

この混合した契約書には欠点があります。前述の2つの立場が混合しているから、仕事に対する評価や責任範囲が分かりづらく、特に請負契約の業務については、契約内容が簡略されているから、よくトラブルになったりもします。

この段階で言っている意味が分からない、そんな読者さんもいらっしゃると思いますが、委任契約と請負契約の本旨(法的性質)を知ることで、この意味が理解できると思います。

前書きが長くなりましたが、今回、委任契約と請負契約について語らせていただきます。そこからきっと見えてくるものがあると思います。

 

委任契約とは

委任契約とは、管理組合(委任者)が行う事務(契約の目的)を管理会社(受任者)に業務委託して処理する契約のことを指します。専門家の見解として、管理組合と管理会社の業務委託は、「委任」ではなく「準委任」に該当するとされます。

▶ 委任(民法第643条)
当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
▶ 準委任(民法第656条)
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

委任契約は「仕事の結果を出すこと」、それが受任者(管理会社)の義務ではありません。その仕事の過程に責任があり、依頼した仕事を処理する過程への報酬(※)を約束する契約となります。

※委任契約は、原則として無償の契約になりますが、特約により有償にすることも可能です。

管理委託契約の中の業務で言えば、事務管理業務(会計業務、出納業務、建物維持の企画・実施の調整、管理組合の運営補助など)が委任契約に該当します。

この委任契約は、前述の無償ではなく、ほとんどの管理会社は報酬を得ていますので、原則論ではなく特約により有償にしているということですね。

 

請負契約とは

請負契約とは、管理会社などの業者(請負者)が仕事(契約の目的)の完成を約束し、管理組合(発注者)がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約のことを指します。

請負(民法第632条)
当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力が生じます。

請負契約においては、依頼した仕事を完成させることを約束する契約となりますが、仕事を請け負ったものは、仕事を最後まで完成させなければ報酬を請求することはできません。

管理委託契約の中の業務で言えば、管理員業務清掃業務保守点検業務(定期の建物点検を含む)が請負契約に該当します。

しかしながら、管理委託契約の中に含めると完成してないのに報酬を得ていることになりますよね。月割りで報酬を得ていますのでそこに法的な矛盾が生じています。

 

委任契約と請負契約の違い

仕事の完成義務の有無

前述と重複しますが、委任契約は完成の義務は負わず、一方の請負契約は、完成の義務を負います。そこに両者の違いがあります。

瑕疵担保責任の有無

請負契約は、成果物の瑕疵(欠陥)が生じれば、修補や損害賠償の義務を負います。一方の委任契約は、受任者にこのような義務は課せられていません。ただし、委任契約では、受任者は善管注意義務を負っており、専門家として期待されるだけの行為をしなければ、損害賠償責任を問われたりもします。

報酬の支払い

これも前述と重複しますが、委任契約は仕事の完成という概念を持たないため、仕事の処理過程に対して支払われます。一方の請負契約は、原則として仕事の完成によって支払われます。例外として、大規模修繕の工事代金の一部を工事完了前に支払われるケースも中にはあるでしょう。



このように、委任契約と請負契約というのは、法的性質が異なっていますが、これらがひとつの契約で処理されているから、どの業務が委任でどの業務が請負なのか分かりづらく、そこに問題があるように思えます。

それに、冒頭でも語った請負契約の中身が簡略化されているから、具体的な業務の詳細が分からない。「分からない」というのは、チェックのときに困ります。

本来契約というのは、業務の詳細や互いの約束事を取り決めるためのものです。そしてトラブルが起きた際の判断基準になるのが契約書になります。だから、簡略化されたものでは後に色んな問題を生んでしまいます。

例えば、保守点検の契約の場合、年〇回実施とか点検箇所などの概要しか記されていません。すべて管理組合の望む方向に物事が進むのであれば、契約書にこだわる必要はないと思いますが、現実はそう単純ではありませんよね。

請負契約書には、作業手順が記載され、業務の仕様、支払条件などが明記されています。

個人的には、委任契約に該当するものと請負契約に該当するものを、それぞれに分けて契約することが適切だと感じます。ちなみに私の住んでいるマンションではそのようにしています。

もうひとつ、委任契約と請負契約を分けるメリットがあります。

 

委任契約と請負契約を分けるメリット

管理組合の予算書や決算書の支出項目には、管理委託料が一括して計上されています。私の管理会社時代に「管理委託料の内訳が計上できないの?」、総会に出席された組合員の方からそんな質問を頂戴しました。ごもっともなご意見だと思います。

支出項目に管理委託料の合計額(どんぶり金額)がそのまま計上されると、どのような費用がその中に含まれるのか、別の資料で確認しない限り知る術はありません。

管理委託料 〇〇〇円 ☜ 支出項目の詳細がわからない!
共用電気料 〇〇〇円  
共用水道料 〇〇〇円  
共用部保険料 〇〇〇円  

管理委託料の内訳金額が記されているのは「管理委託契約書」になります。この契約書を見ない限り知る術がありません。マンションによっては、通常総会の資料の中に管理委託契約書の写しが添付されているケースが見受けられますが、全てがそうしているわけではありませんからね。

管理委託契約書の写しが無ければ、管理委託料の合計金額しか把握できません。管理会社にこれだけ支払っているというのは見てとれますが、それが予算や決算の本旨ではないように思えます。

何にどれだけ使われているのか、詳細がわからなければ理解できないし、個々の見直しを行うことも他の業者と比較することもできません。管理組合にとって「都合が悪い」ということになるし、どんぶり計上では透明性が求められる会計とは言えませんよね。

委任契約と請負契約を分けることで、支出項目が明確になります。

管理委託料 〇〇〇円 ☜ 委任契約(事務管理業務)
管理員業務費  〇〇〇円 ☜ 請負契約
定期清掃費  〇〇〇円 ☜ 請負契約
建物点検費(外観目視)  〇〇〇円 ☜ 請負契約
エレベーター保守点検費  〇〇〇円 ☜ 請負契約
消防設備点検費  〇〇〇円 ☜ 請負契約
機械式駐車場保守点検費  〇〇〇円 ☜ 請負契約
自動扉保守点検費  〇〇〇円 ☜ 請負契約

請負契約は、個別に契約することも当然にできます。管理会社に一括発注されている場合でも契約書を分けることで、各項目毎の金額が把握しやすいし、見直しを行う際にこの方が容易にできます。一括にしているから、見直しがされにくという欠点が実情としてあります。

業務の本質というのがそれぞれに異なるから、分けた方が色んな面で管理組合側にメリットがあると思います。

 








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