マンション管理会社には「善良な管理者の注意義務」という法律上の義務があります。略して「善管注意義務」という表現を用いたりもします。
管理会社と管理組合の間で交わす管理委託契約は、民法上の委任契約と解されます。この委任契約とは、委任者(管理組合)が受任者(管理会社)に法律行為を行うことを委託する契約を指します(民法643条)。
民法第644条に、「受任者は委任の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う」旨の規定があり、受任者である管理会社は「善管注意義務」を負うことになります。
国土交通省が作成したマンション標準管理委託契約書(第5条)に、その「善管注意義務」の規定が記されています。
乙(管理会社)は、善良なる管理者の注意をもって管理事務を行うものとする。
マンション管理会社は、管理組合から受託した管理事務を行う上で「善管注意義務」が負託されています。この義務について、普段あまり気にすることはありませんが、管理会社とトラブルになった際によく問題視されます。
なので、「善管注意義務が管理会社にはある」、これを管理組合、個々の所有者は知っておくべきです。
それと、この義務は管理会社と同様に、管理者(管理組合理事長)、管理組合の役員にも負託されています。管理者と組合員の関係、そして管理組合役員と組合員の関係も委任関係が成立しますので、受任者として同様に義務を負うことになります(区分所有法第28条、民法644条)。
なので、役員になられた方もこの義務があることは、知っておく必要があります。また、マンション管理士も同様に「善管注意義務」が負託されています。
善管注意義務とは
善管注意義務とは、受任者の職業、地位、能力等において、社会通念上、一般的に要求される注意義務のことを指します。例えば、これを怠ったらそうなる、それを知りながら何もしなかった場合、内容にもよりますが「善管注意義務違反」になり得ます。これが甚大な事故ともなれば不法行為として責任を問われることがあります。
義務違反の事例
それでは、管理会社の善管注意義務違反の具体例を以下に掲げます。
この善管注意義務を怠ると、債務不履行(履行遅滞、不完全履行、履行不能)などの民法上の過失と見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などの対象になり得ます。
債務不履行とは、債務者(管理会社)が、その責めに帰すべき事由によって、契約の履行をしないことを指します。債務不履行には、履行期に遅れた「履行遅滞」、履行することができなくなった「履行不能」、履行はしたが十分でなかった「不完全履行」の3つがあります。
民法上の債務不履行への対応
債務者(管理会社)が債務不履行に陥った場合、対する債権者(管理組合)が執りうる手段には次のようなものがあります。
これらの手段は、対象に応じて組み合わせて行使できます。
以上、私がこれまで学んだことを記事にしましたが、個々の案件については、弁護士の先生に相談されることをお勧めします。