マンション管理組合の総会に出席された方なら、総会の議長は「誰が務めるのか」ご存じかと思います。一度も出席されていない方はご存じないかも知れません。
総会の議長は、「理事長」が務めることになります。理事会の議長も理事長が務めることになりますが、これらはマンションのルールブック(管理規約)に記されています。
マンション標準管理規約第42条(総会)
第5項 総会の議長は、理事長が務める。
マンション標準管理規約第51条(理事会)
第3項 理事会の議長は、理事長が務める。
これは国土交通省が作成しているマンション標準管理規約になりますが、皆さんのマンションの管理規約にも同じ内容が記されていると思います。
議長は、理事会とか総会の議事進行役を担います。しかしながら、具体的に何をどのように進めるのか管理規約には記されていません。そこで議長(議事進行)については、会社法や国会法にある「フェアな議事進行を行うための各条項」を準用しています。
一般的な議長の職務・権限については以下のとおりです。
議長の職務・権限について
議長の職務は以下の内容となります。
➀総会の開会と閉会の宣言
➁総会の成立宣言
➂議事録署名人の指名
➃質問者や答弁者の指名
➄各議案の採決の取り纏め
➅議事進行の順序の決定
議長には「議事整理権」「秩序維持権」という2つの権限があります。議事を進めていく中で状況によりその権限を行使できます。
<議事整理権>
➀発言時間の制限
➁質疑の打ち切り
➂間に休憩を挟む
<秩序維持権>
➀発言の中止
➁秩序を乱した者の退場
管理会社に管理を委託されているケースでは、フロント担当者が総会直前に議事進行のシナリオ(マニュアル)を理事長に渡して、そこで「各議案の説明は管理会社が行いますので」の一言で済ませるケースが多々見受けられます。
そして理事長(議長)が議事進行の意義を理解しないまま、ぶっつけ本番でシナリオをただ読み上げる総会をこれまで数多く見てきました。まさしく「議長の形骸化」です。これは総会の形骸化に繋がると言っても過言ではありません。
議事進行の在り方について問う!
総会の議事については、管理規約に則ったものでなければなりません。なので、議長(理事長)は、管理規約の規定について十分理解しておく必要があります。
例えば、総会開催の定足数を満たしているか、議長の選出は管理規約に準じているか、議事録署名人は誰を指名するのか、特別決議の議案があれば決議できる定足数を確保しているのかなど、総会時にその旨の報告は欠かせません。
総会は管理組合の開催行事になりますから、管理会社はあくまで脇役です。しかしながら、実情として見受けられるのが管理会社主導の総会です。
議長は形式的なものと化し、管理会社のワンマントークになっている感は否めません。議長は脇役、理事会も脇役、メインは管理会社…
管理会社は会場設営の補助とか議事にあたっては議長から報告を求められたときに限り発言する、これが議事の正しい進め方になります。そして、1年間の活動報告や会計報告、出席者からの質問に対する応答は、理事会が行うのが本来の姿だと思います。
マンションによっては、理事長を率いる理事会が主体となって総会を行ったりもしますが、かなり少ないのが実情です。
そうなった背景には、議事進行を管理会社に委ねた方が楽的な考え方を持たれている方が多いからだと思います。
理事会が各議案の説明を行うべき!
総会の各議案の説明は、本来なら理事会が説明する必要があります。なぜなら、各議案について、総会に上程する当事者だからです。
しかしながら、この議案説明を管理会社が全て行っているという現実がそこにあります。
管理組合によっては、当期の決算案と来期の予算案の説明を会計担当理事が行い、各議案の説明については、理事会で役割分担を決めて自分たちで行っています。
これが正しいやり方だと思いますし、総会時に説明するという前提がそこにあれば、期中の理事会はもっと有意義なものになります。
管理会社が議事進行の大半を行ってくれる、そんな総会になってしまうと、それが当たり前になって、総会が主体性に欠けたものと化します。これは理事会の会合にも言えることです。
管理会社は都合の良いことしか言いません。その良いことだけを聞いて、総会で物事の良し悪しを判断するのは危険です。なので、理事会が主体となって議案の真意(発議、経緯、結論)を総会に出席された皆さんに伝えることが重要です。こうした考えは、議案書の在り方にも問えます。
総会の開催者は当期の理事会であって管理会社ではない、そこに注意を払う必要があります。
管理会社の報告会なら、私は時間を割いてまで総会や理事会に出席したりはしません。
書面で十分です。