平成20年9月に発生したリーマンショック、不動産業界・建設業界に多大な悪影響をもたらした。
マンションデべロッパーの相次ぐ倒産により、新築分譲マンションの建設は、平成19年のピーク時の半分以下に減っている。
国土交通省の平成27年度住宅経済関連データ(分譲マンションの新設住宅着工戸数の推移表)のグラフを見れば一目瞭然だ。👇
これは何を意味するのか。それは建設業に携わる職人の人手不足の始まりを意味する。建設現場で働く職人は340万人と推定される。
新築マンションの建設が半減するということは、建設現場で働く職人は当然職を失うことになる。ベテラン職人が次々と離職しているのが実情である。
今建設業界は職人不足に陥っている。震災復興、東京オリンピック建設事業、マンション大規模修繕の需要増加などにより、職人がどこの現場でも足りていない。
ベテランが離職し、逆に未熟な職人が増えているという実情も窺える。
これが今の建設業界の実態であろう。
職人不足が工事品質を左右する
この職人不足は、マンション大規模修繕にも影響を与えている。
建設業界には工期厳守というノルマが存在する。このプレッシャーの中で職人たちは働いているのだが、その状況下で人手が足りないとどうなるか、結果として工事品質に影響を与えたり、状況によっては手抜き工事が起り得る。
未熟な職人が現場に入ると作業効率は下がるし、手直しも増えるだろう。私は大規模修繕の現場を色々と見てきたが、人手不足の現場で良い仕上がりなどは望めない。やはりベテランの職人が多くいる現場とは違う。
職人の経験が浅いと色んなトラブルを招く。
屋上防水の作業中に廃材の破片が雨水管に入り込み、雨水管が詰まるという事故が頻発している。
屋上に雨水が溜まらないように各所に排水口が設けられ、ゴミなどの異物が入り込まないようにグレーチィング(鉄網の蓋)を被せている。防水工事はこのグレーチィングを外して作業するのだが、防水材の破片などが入り込まないように注意しなければならない。
未熟な職人は、この注意の意味を理解していない。だから開かれた排水口に平気で廃材の破片を捨てる者がいる。この破片などによって雨水管が詰まる、そして住人たちに多大な迷惑を掛けることを知らない。
雨水管がひとたび詰まれば、その詰まった箇所の上階にあたるバルコニーの排水口から雨水が逆流する。
その階のバルコニーが水浸しになり、構造によっては住戸内に雨水が入り込む。そして漏水事故が発生する。
ベテランの職人は過去に多くの失敗を経験しているだろう。だから事故を起こさない術を知っているし、事故の怖さも知っている。だが未熟な職人はそれを知らないから事故が起り得る。
防水の塗料材の配合というのは、経験がないと粗悪な材料と化す。大規模修繕の現場の裏側で活躍している職人たちの手腕が問われる。
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