マンションには色んな設備が設置されています。経年に伴い、設備の修理や交換が必要になってきますが、住戸内にある設備の修繕を管理組合が行ったり、共用部分にある設備の修繕を所有者が行うことがあります。
どっちやねん!
管理規約に明確に記されているのなら、そのルールに沿って対応ができますが、曖昧なケースが多いから本当に面倒くさいです。
国土交通省が作成しているマンション標準管理規約第21条に以下の規定があります。
敷地及び共用部分等の管理(第21条)
敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
4 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後に、当該保存行為」と読み替えるものとする。
5 第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。
この条文に出てくる「保存行為」とは、「現状を維持するための行為」を意味します。例えば、窓ガラスの交換、照明の交換、清掃などが挙げられます。これはあくまでも一般的な解釈であり、法により定義付けされたものではありません。なので、個々の判断(解釈)に委ねられます。
第21条第1項に記された「バルコニー等の保存行為のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」、これは負担区分を規定したものです。
例えば、メールボックス(集合郵便受け)のダイヤル錠の交換などを保存行為と見なせば、その住戸の所有者の負担で行うことになります。各住戸に設置されている錠前も同様の取り扱いにあります。
ただし、これらはあくまで私的な解釈であり、管理規約に明確に記されているわけではありません。なので、マンション毎にその考え方とか対応の仕方は異なります。
曖昧だから負担先をめぐるトラブルが絶えません。このトラブルは、管理組合で一斉交換する際に生じます。直近に自費で修理や交換を行った所有者から苦情が出たりもします。
「一斉交換するのなら、自費で修理(交換)はしなかったのに…」
ルールが明確に定められていないとこのようなトラブルが生じ、その対応に苦慮するのは結局は自分達です。
管理規約はトラブルを回避するため(揉めないため)の道しるべになりますが、特に曖昧な部分については、明確な取り決めが必要になります。
第21条第2項の「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分」、住戸インターホンや火災報知器などが該当しますが、「管理組合が行うことができる」という表現になっています。
これは「できる」であって、はっきりとした言い回しではありません。なので、管理組合毎に解釈が異なり住戸インターホンに限って言えば、対応にばらつきがあります。
例えば、インターホンの修理・交換ともに管理組合が行うとか、インターホンの修理はその住戸の所有者が行い、交換は管理組合で行うとか、玄関横の子機の修理・交換ともに管理組合で行うとか、ここの線引きというのが管理規約に定められておらず場当たり的に行われていたりもします。
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曖昧だと個々の解釈が異なりそれがトラブルを生んでしまいます。ひとつ事例が出来れば、次の方はそれに合わせなければならない。その事例を誰が作ったのか、そこが問題です。
総会で話し合いにより皆さんで決めたことならトラブルは避けられますが、管理会社の独断、個人の独断だとすれば、後のトラブルは生じかねません。
マンションの付帯設備を見渡せば、明確にすべきことが多々あります。一度、所有区分や負担区分について、理事会で考え方を整理してみると良いでしょう。
トラブルを避けるためにも、修理・交換に際して、明確なルール作りは必要です。