2022年4月からマンション管理の新たな取り組みが本格的に始動します。この新たな取り組みとは、一般社団法人マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」、そして国の「管理計画認定制度」です。
いずれも任意の制度となるため、活用するか否かはそれぞれのマンション(管理組合)の意思に委ねられます。なので、この2つの制度がどこまで普及するかは現段階では未知数です。
どんなにすぐれた制度をこしらえてもそれを活かせないと意味を成しません。そこで大事なのは、制度の活用にあたってのメリット(インセンティブ)を明確に打ち出し、これらの制度への理解が得られるかが鍵となります。
良い例で言えば、日新火災海上のマンション管理適正化診断サービスです。メンテナンス状況に応じて保険料の割引きが受けられる診断サービスになりますが、保険料が毎年のように値上げされる中で、この診断サービスを活用する管理組合は増えていると思います。
保険料の割引き、これが明確なメリット(インセンティブ)になるからこの診断サービスを利用するわけです。
昨年の段階では、マンション管理適正評価制度のメリット(インセンティブ)として「管理組合が加入する火災保険料等の割引が期待できる」、「リバースモーゲージを利用する際、高評価を得ることが期待できる」という記述がマンション管理業協会のHP内にありましたが、いつのまにかこの記述が無くなっています。気になるのは私だけでしょうか?
ちなみにリバースモーゲージについてですが、一般的にマンションは不向きです。リバースモーゲージとは、自らの持ち家に住み続けながら生活資金を調達できる仕組みのことを指しますが、深堀りすると契約者本人(所有者)が死亡時に担保となっていた不動産を売却することで返済が行われ、それまでは利息の支払いだけが契約者の負担になります。
主にローンが借りにくくなっている高齢者が、年金以外にも生活資金を確保する手段として利用されています。
しかしながら、マンションに関して言えば、築年数とか年齢要件といった細かな利用条件があるので、マンションを所有されている方の全てが対象となるわけではありません。そこに注意を要します。
お金に困ったらリバースモーゲージを活用しようなんて考えているとしたら、それは大きな間違いです。
各金融機関のホームページにこのリバースモーゲージの詳細が記されていますので、気になる方は調べてみてください。金融機関にもよりますが、「金融機関名 リバースモーゲージ」でネット検索すると確認できます。
著者は、決してマンション管理適正評価制度を批判しているわけではありません。むしろ、この評価制度の導入については大賛成です。
ただし、管理組合やマンション購入者に対して、間違った解釈がなされないためにも、この評価制度について、もっと正しく伝える必要があるように思えて止みません。
少し前にインスペクションが話題になりましたが、この住宅診断も消費者にとって一見すると良いものに思えますが、実際のところ活用している方は少ないのが実情かと思います。
中古マンション|インスペクションとは?そのメリットについて!
この住宅診断もそうですが、今回の2つの制度も同じで、利用者側が無知であれば「絵に描いた餅」に終わります。なので、情報の伝達方法というのも重要になります。
マンション管理適正評価制度はマンション管理業協会が創設した制度です。マンション管理業協会は管理会社の業界団体なので、この制度の説明は管理会社が行うことになるでしょうけど、積極的に情報伝達が行えるのか、また、正しく情報伝達できるのか疑問に思えます。
なぜなら、このマンション管理適正評価制度によって導き出された採点結果は、言ってみればマンション管理会社のサポート力とか提案力の物差しになり得ますし、評価基準に対してどれくらい貢献してきたのかを知り得ます。
評価が低ければ、管理会社の評価も低くなるのは当然のこと。そこで管理組合と揉める要因にもなりかねません。要するに管理会社にとって不都合な制度ということになり得ます。
また、この評価に管理会社が加わることについて、正しい評価が行えるの?って疑問に思えます。甘い採点とならぬことを願っています(笑)。
これまで何の道しるべもない状態でマンション管理が行われてきましたが、一定の評価基準や認定基準を設けることで、管理組合として何をやればよいのか知り得ます。そして現状に対して問題意識が持てるようになります。これってとても重要なことだと思います。
また、マンション管理を受託している管理会社にとってみれば、これらの制度が創設されたことにより、管理組合をサポートする立場としての明確な役割というのが意識付けされるでしょうし、高評価が得られるための努力がより一層求められます。
国の管理計画認定制度については、今回触れていませんが、マンション管理適正評価制度と同様に、明確なメリット(インセンティブ)を打ち出す必要がありますし、極端に言えば、任意制度ではなく強行制度にしない限り普及しないように思えます。
ようやく始動する2つの制度ですが、関係者の皆様にとって有意義なものになることを切に願います。