管理会社は本業に徹するべきだ!
これは管理組合側の意見である。そんな声を最近よく耳にする。
私の住んでいるマンションを振り返れば、全くその通りだと思うし、実際に管理会社には本業のみを委託している。ここでいう本業とは、フロント業務、会計業務、管理員業務、範囲を広げれば清掃業務、建物・設備の巡回点検業務を指す。
言い換えれば、管理会社自らが行う業務ということだ。なので、下請け業者に再委託する業務はこれには含まない。下請け業者への丸投げ業務は本業とは言えない。
しかしながら、全ての管理組合が本業のみを管理会社に委託するとしたら、きっと多くの管理会社は経営が成り立たないだろう。
そこで多くの管理会社は、エレベーター保守点検業務、消防設備点検業務、機械警備業務などを管理仕様の中に含めて収益化を図っている。また、管理委託契約書に記されていない大規模修繕を含めた修繕工事を受注することで収益の拡大を狙っている。
更に自社受けしない業務を業者に紹介して、水面下でリベートを受け取っている。これは原価の発生しない収益だから「楽して金儲け」の典型と言えよう。これらが黒字経営化の下支えになっている。リベートとは業者から受け取る紹介料のことである。(詳しくはこちらの記事)
管理会社によっては、不動産の売買事業、賃貸事業を兼ねるケースもあるだろう。近年では、住戸内のサービスを手掛ける企業が増えている。エアコンクリーニング、ハウスクリーニング、物品販売、介護事業など、マンション生活に関わる様々なサービスである。
住戸外のサービスでは、カーシェアリング、コインパーキングなどの兼業が挙げられる。管理物件を持っていれば、様々な業務が派生するからそこで収益化が図れる。
管理会社変更(リプレイス)により、管理委託料が下がれば更に本業は成り立たなくなる。そこで社員の担当物件数を増やしたり、人件費(給与)を下げる、徹底した合理化を図るなどの企業努力は欠かせない。
本業に徹するべき、この声がもっと増えれば、赤字に転落する管理会社が増えるだろう。ただ安ければいい、その裏側には管理会社の経営危機が待ち構えている。そして管理会社が激減すれば、逆に管理委託料は上がる傾向になろう。
現在、管理会社の経営統合や合併が盛んに行われている。量で経営の安定化を図る、これがその目的にある。量と質の関係は比例しない。量が増えれば質は当然に下がる。
本業に徹すべき、これは管理会社にとって大きな痛手の言葉となろう。
マンション管理組合にとって委託先である管理会社を知ることは、長く付き合う上でとても大切なことだと思う。