マンションの使用細則で、駐輪場以外の場所に自転車の駐輪を禁止しているマンションが多く見受けられますが、意外と共用廊下に自転車を置かれるケースが目に付きます。
新築マンションの中には、各階の共用廊下に自転車の専用スペース(サイクルポート)を設けているところがあります。その場合、当該スペースは自転車の置ける合法的な設計仕様になっています。またマンションの建物内への自転車の持ち込みを容認する使用細則が設けられています。
いずれにしてもマンションの使用細則は、そのマンションの規則になるのでそこに住む以上、居住者の皆さんは遵守義務を負います。
遵守義務の根拠となる法令
◇区分所有法第13条、第30条、第46条
第13条/共用部分の使用
各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる。
第30条/規約事項
建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
第46条/規約及び集会の決議の効力
規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
2 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。
上記の赤字部分の「占有者」は、区分所有者以外の専有部分の占有者のことを指す(区分所有法第6条第3項)。同居している家族、賃借人がそれに該当する。
<参考となる規定>
◇マンション標準管理規約第3条、第13条、第18条、第19条
第3条/規約及び総会の決議の遵守義務
区分所有者は、円滑な共同生活を維持するため、この規約及び総会の決議を誠実に遵守しなければならない。
2 区分所有者は、同居する者に対してこの規約及び総会の決議を遵守させなければならない。
第13条/敷地及び共用部分等の用法
区分所有者は、敷地及び共用部分等をそれぞれの通常の用法に従って使用しなければならない。
第18条/使用細則
対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。
第19条/専有部分の貸与
区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、その貸与に係る契約にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の条項を定めるとともに、契約の相手方にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。
[補足]
区分所有法は、絶対的効力を有する強行規定(法令の規定のうちで、それに反する当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定をいう)、一方のマンション標準管理規約は、国土交通省が一定のガイドラインを示すために作成したマンション管理規約のモデルのことをいう。
前述のとおり、マンションの区分所有者(同居人)、賃貸で住まれている方は使用細則を遵守する義務があります。しかしながら、自転車の駐輪方法などについて明確なルールが設けられていないマンションが存在したりもします。
ルールがないから、建物内に自転車が持ち込まれたり、駐輪場以外の場所(共用廊下など)に自転車を置かれたり、そこでトラブルになるケースがあります。
また、駐輪場以外の場所に自転車の駐輪を禁止しているマンションでも、それが守られていないマンションも中には存在します。
そのときによく耳した言葉は
▶ 駐輪場に自転車が置けないから…
▶ 以前、駐輪場に置いていた自転車が盗まれたから…
まだこの程度なら気持ちを察することはできますが、中には言い掛かりを付けてくる住人さんがいらっしゃいます。
マンションによっては、子供用の三輪車の持ち込みを容認しているケースがありますが、「三輪車が良くてどうして自転車はだめなのか!」、そんなことを口にする住人さんもいらっしゃいます。
私の管理会社時代に文句を言われる方が少なからずいらっしゃいました。
ルールに不満があるのなら、皆さんの賛同を得てルールを変更すればいい、そのように感じたりもします。文句は言うけど行動に移さないから始末に負えません。
そのマンションにルールが存在する以上、それは遵守すべきですよね。もしそのルールが実情にそぐわないのなら、変えればいいだけの話です。
ルールというのは、状況によって変えることができます。そのルールが使用細則に規定されているのなら、その変更は普通決議で行えます。
マンションの秩序を保つためにルールは存在します。色んな価値観を持たれた方が同じ屋根の下に住まれる集合住宅だからこそ、規律というのは必要になります。駐輪場以外の場所に自転車の駐輪を禁止しているマンションにありがちなのが、「専有部分に自転車を置くのなら問題はないだろう」、この考え方です。
一見すると正論に思えますが、専有部分に自転車を持ち込む場合、アプローチ、エントランス、エレベーター、共用廊下を使用することになります。
共用玄関扉、自動扉、エレベーターの扉に傷が付いたり、床が汚れたり、そこでトラブルに発展したりもします。
そこで当事者に直接注意すると…
▶ 傷を付ける、汚すのは自転車だけではない!
▶ 使用細則に自転車の持ち込みを禁止する規定はどこにもない!
そんな言葉がよく返ってきました。この意見が正論なのかは各自の判断に委ねます。
マンションによっては「建物内への自転車の持ち込みは禁止」、この規定を設けているところがありますが、この規定が無いケースでは、前述の意見が上がった場合、それ以上のことは言えなくなります。
個人的には、自転車は建物内に持ち込むべきではない、この考え方を持っています。
実際にエレベーターに同乗していたときに自転車が扉にあたって傷を付けた現場を直接目撃したことがありますし、特に朝の通勤通学時に平然とエレベーターに自転車を持ち込まれる住人さんをみて不快さを覚えました。
これには人ぞれぞれに色んな意見があると思います。
ちなみに私の住んでいるマンションは、「自転車置場以外の場所に自転車を置く行為」、当初の使用細則ではこれが禁止事項の中に設けられていましたが、第2期のときに使用細則の見直しを行って、「建物内に自転車・バイクの持ち込み」、余談になりますが「ベランダ・バルコニーの手すりに布団を干す行為」、これらを禁止事項に加えました。
逆に持ち込みを容認するものとして、専有部分で保管できるもの、例えば持ち運びができる子供用の三輪車、分解可能で輪行袋に入れて持ち運びができるロードバイク、当然に車いすは認めています。
ロードバイクについては、最初は反対意見が多く、三輪車との論争の末(笑)、持ち運びができるもの、そしてエレベーター使用にあたっては、通常の利用者を優先する、この条件付で認められた経緯があります。これは三輪車も同じ扱いです。
駐輪場スペースの不足を補うために建物内への自転車の持ち込みを認めているマンションがもしかしたら存在するかも知れません。ただし、共用廊下、ベランダ、バルコニーには自転車は置けませんから、そこは注視すべきでしょう。(詳しくはこちら☟)
その場合、専有部分に自転車を置くしかありません。ママチャリを居宅内に置かれる方って、果たしていらっしゃるのでしょうか?(笑)…