よく管理費削減という言葉を見聞きするのだが、これにより管理費が下がるわけではない。
管理費会計(一般会計)の各支出項目の見直し(コスト削減)を行い、管理費会計の更なる健全化を図るという意味合いになると思う。
管理費会計の健全化と言えば、管理費の支出項目の見直しだけではない。
そもそも多くのマンションは、管理費収入で管理支出は補えない。強引に駐車場使用料を管理費会計に組み込んでいる。それでプラス状態を維持している。
強引という言い方をしたが、実際のところ管理規約に矛盾した会計処理になっている。国土交通省が雛型として作成しているマンション標準管理規約では、駐車場使用料について、このような記述がある。
マンション標準管理規約第29条(使用料)
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
駐車場使用料は、駐車場に関わる管理費用に充てられ、余った資金は修繕積立金として積み立てるという解釈である。実際には駐車場以外の他の管理支出にも費やされ、修繕積立金への繰り入れは棚上げになっている感は否めない。
管理費会計の収支がプラスなのは、駐車場使用料で補っているからに他ならない。
販売時に決められた管理費、そして新築スタート時の予算がそのようになっているから、改定がなされないまま継承されている。これを改定するのは困難を極める。なので管理規約の改定を行った方が早い。実務に見合う改定案は以下のとおりである。
管理規約第〇条(使用料)
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、管理費の不足分に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
赤字部分の文言は、他の言い方もあるだろう。大切なのは矛盾を解消することにある。これは矛盾というより「規約違反」になる。
管理組合の中には、管理規約を改定せずに実情に合わせて管理費、駐車場使用料を改定されたマンションがある。ただし、全戸に駐車場が割り当てられ、駐車場使用料の差異が小さなケースに限られる。
トータルの支出額は変えずに、管理費と駐車場使用料をそれぞれに見合った金額へ振り替えて調整するという改定の仕方である。
例)現行管理費10,000円、駐車場使用料10,000円
▶ 改定管理費・・・17,000円
▶ 駐車場使用料・・・3,000円
といった具合に金額だけを振り替える。簡略化した例になるが、実際には個々の駐車場使用料は異なるから、不平等が生じないように設定する必要があるし、駐車場使用料の差異をこの例でいえば3,000円の範囲内で調整できることが前提となる。
とても煩雑になるから、それを知ったところで管理費、駐車場使用料の金額を改定される管理組合は寡少であろう。
問題というのはこれだけではない。駐車場使用料の収入に依存した管理費会計の場合、駐車場の借り手が減ったら、赤字に転落することが起こり得る。以前、これに関する記事を書き綴っているので時間があれば読んで欲しい。
管理費は固定だから安定収入になるのだが、駐車場使用料は変動するから、今は良くても将来どのように変動するのか誰も予測はできない。だから、駐車場使用料の依存はリスクを背負うことと同じである。
全戸に駐車場が割り当てられ、全てに借り手がいる上での話し合いは、先ほどの金額の振り替えは可能であろうが、借り手が徐々に減っていけば、話し合いは当然に縺れていく。
何事も早めの対策が肝心である。