マンションの管理の適正化に関する法律が平成13年8月に施行され、既に16年の月日が経過しているのだが、マンション管理会社の法令違反は後を絶たない。
この法令違反は、国土交通省が毎年実施している全国一斉立入検査(任意抽出立入検査)で発覚するのだが、ここ5年間で毎年4割以上のマンション管理会社が法令に違反し、国土交通省から是正指導を受けている。
昨年10月から3か月に渡り行ったマンション管理会社への全国一斉立入検査の結果の概要をまとめてみた。
<全国一斉立入検査の概要>
全国141社(前年度135社)の管理会社に対して立入検査を行い、64社(前年度51社)に対して是正指導を行った。指導率45.4%(前年度37.8%)
◆法令違反項目別の是正指導社数(重複該当あり)
①管理業務主任者の設置(第56条関係)・・・・1社
②重要事項説明等(第72条関係)・・・・・・51社
③契約成立時の書面交付(第73条関係)・・・29社
④財産の分別管理(第73条関係)・・・・・・21社
⑤管理事務の報告(第73条関係)・・・・・・20社
国土交通省レポート:マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(平成28年度)一部抜粋
今回の立入検査結果を踏まえて、国土交通省は「法令条項の理解不足が原因」と述べているが、それは法令を理解していない管理会社がマンション管理に携わっていることを意味する。
これらの法令条項はマンション管理会社に課せられた責務であり、マンション管理の適正化を図る上で欠かせない基本的な規範になる。
この基本すら守れていない、しかも毎年4割以上…
管理組合の大切な財産を守るべき立場であることを自覚していない。だから未だに管理会社の横領事件は後を絶たない。
法令に違反する企業が、管理規約の定めに従って管理組合に対して助言できるのか、そこを問いたい。
これが悪質な法令違反の場合、管理会社は業務停止処分を受けることになるが、業務停止になって困るのはマンション管理会社だけではない。
マンションの日常の管理業務が止まり、そこに暮らす人たち、そして管理組合の管理運営に支障を来すことになる。そこを理解しているのか、これも問いたい。
毎回、全国立入検査の結果の報告書を見る度に、この4割以上の数字が一向に改善されていないことに気付く。是正指導を受けた管理会社の社名は一切公表されない。もうここまでくると「ペナルティが甘すぎる」、この言葉以外に見当たらない。
法令が守れないようでは、マンション管理の適正化など期待できまい。
<国土交通省:公表資料>
▶ マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(平成29年7月19日)