建物・設備関連

欠陥マンションはこうして作られる!

2019年7月3日

 

2005年11月に発覚した耐震計算書偽造の姉歯事件、2015年10月に発覚した横浜市内の杭施工データ改ざん事件、最近ではレオパレス21の施工不備問題、これは公表されている事件でありますが、水面下ではマンションに関わる欠陥というのは数多く存在します。

そもそも欠陥とは何を意味するのでしょう。「本来あるべきものが足りない」と言う意味で使われたりしますが、マンションで用いる欠陥というのは、人それぞれに解釈が異なると思います。

私の場合、「法規に違反するマンション」「パンフレットや図面などの記載内容と相違がある」、これをマンションに関わる欠陥と解釈しています。

この欠陥は、設計上、施工上、この2つのいずれかに要因があります。

今回、マンションの欠陥について語らせていただきます。



設計上の欠陥

設計上の欠陥と言えば、前述の姉歯事件が代表例として挙げられます。

この事件では、構造計算書を偽装して耐震強度を実際より高く見せかけようとした姉歯元一級建築士のほかに、構造計算書の偽装を見抜けなかった指定確認検査機関、姉歯氏の構造計算によって多数の低価格マンションを建設・販売して急成長した不動産業者、建築施工業者など関連する業者の責任が次々と問題にされ、これらの関係者の多くが刑事処罰まで受けました。

一般的に建築設計事務所では構造計算などの業務は自分では行わなず、それを専門とする構造計算事務所に再委託しています。姉歯事件では、構造計算書は姉歯氏自らが作成していました。

構造計算書というのは、百ページ程度の分厚い書類になります。マンションに携わっている業界人がこの構造計算書を見ても理解するのは容易ではありません。それは大半の一級建築士にも言えることです。なので、構造計算に直接携わっている専門家だけにしか分からないという実情があります。

このような状況下で偽造は繰り返し行われました。誰も見抜けない、これが課題として今もなお残っています。

 

施工上の欠陥

施工上の欠陥と言えば、前述の横浜の杭施工データ改ざん事件、レオパレス21の施工不備問題が代表例として挙げられます。

横浜の杭施工データ改ざん事件では、実際に「建物の傾斜」という実害が発生している点において、重大かつ深刻な問題としてニュース等に取り出たされました。

建設時の杭打ち工事で、建物の基礎となっている複数の杭が強固な地盤に届いておらず、杭打ちのデータに別の工事のデータが転用されていたことに加え、セメント注入量まで偽装されていたことが明らかになりました。

施工上の欠陥には、竣工図書との相違というものがあり、実際に数多く存在します。

図面に記載している内断熱が施されていなかったり、床スラブの厚みが記載された寸法より薄かったり、配線・配管の経路が違っていたり、電気の幹線ケーブルが記載されたサイズよりも細いものが使用されていたり、図面との相違点というのが本当に数多く存在します。本当に冗談抜きで!

これらは、数年後に色んな事象によって発覚します。ひとつずつ解説しますね。

断熱が施されていない

これは結露やカビの発生により発覚するケースが多いですね。実際に壁を叩いてみると素人でも分かります。内断熱が施されていれば太鼓のような音がします。内断熱が施されていない場合は、コンクリートの表面に直接クロスを貼っていますから石を叩くような固い感触です。

外気に面する壁には、内断熱が一般的に施されていますが、マンションによっては外壁(外側)に施されているケースもあります。竣工図面で確認することができますので、気になることがあれば、図面をチェックされた方が良いです。

補足ですが、太鼓のような音がしても結露やカビがひどい場合は、内断熱材が所定量もしくは入っていない可能性が高いです。

床スラブの厚みが薄い

床スラブ厚が薄いと上階の足音などが感じやすくなります。古いマンションの床スラブ厚は150mmから180mm程度、現在のマンションは最低でも200mm、230mm、270mmの床スラブのマンションも増えていますが、厚みがあるほど遮音性が高くなります。近年新築マンションで多く使用されているボイドスラブの場合は、標準で300mmあります。

150mmから200mmの床スラブ厚は上階の足音が気になります。

この床スラブというのはパンフレットや図面通りの厚みなのか、目に見えるものではありません。

実際に床スラブを測ってみたら規定の厚みがない、これは私の知人のマンションで実際に起きた出来事です。スーパーゼネコン某社が施工したマンションでこのような欠陥が生じています。

上階の騒音にしびれを切らした知人は、スラブ床の調査を専門家に依頼しました。その調査で発覚しました。このような欠陥が身近で実際に起きています。

配線・配管の経路が異なる

電気の配線、給排水管などの経路が図面の表記とは異なるケースが多々あります。図面と配管の相違により、実際に裁判まで発展したケースがあります。この裁判では分譲会社に責任があると判断されました。

発覚するのは、何らかの理由で行った工事のときです。図面上の経路と異なる場所に配線が引かれ、作業員が誤って配線を切断し、停電によって発覚する、この手の事故は本当に多いです。

給排水管も壁内、床下、天井、地中に隠ぺいされていますので、位置確認は図面で判断しますが、この図面が当てにならないケースが多く、開口してみると図面上に記された位置に配管が見当たらない、地中を掘削しても配管が出てこない、そこで無駄な工事が生じます。

図面は当てにならない、これを前提に工事を行う、この考え方が必要かと思います。これは安全対策です。

電気の幹線ケーブルのサイズが細い

図面に幹線ケーブルのサイズが記載されていますが、このサイズが図面と異なるケースが過去にありました。竣工後、最初に行った共用廊下のポリッシャーによる清掃の際にそれが発覚しました。

ポリッシャーとは、床などを洗浄する電動式の機具のことです。共用廊下の床などを洗浄する際にこのポリッシャーが一般的に用いられます。

電動式だから当然電気が必要になります。そこで共用箇所の電気コンセントを借用して作業を行いますが、そのコンセントに差し込んでもポリッシャーが動かない、動いてもすぐに止まる、このような不具合が起こり、そこで調査して発覚しました。

当初、施工した電気工事会社に調査させましたが原因が掴めず、そこで私の知人(電気工事士)に頼んで調査してみると、ケーブルが図面に記載されたサイズと異なっていることが発覚しました。図面のサイズよりも細いものが使用されていました。これがポリッシャーが作動しない原因でした。

それを電気工事会社に指摘すると直ぐにケーブルの差し替えが行われました。自らの調査で見抜けなかった電気工事会社はそのことを知っていたとしか思えません。知人に聞くと電気工事業界ではよくある話と聞かされ、もう唖然です。

このような欠陥があることを是非知っておいてほしいですね。



販売上の錯誤

敢えて欠陥とは書きませんが、業界人が読まれたら「それは違うだろ」と指摘されそうなので、少しやわらかい言葉「錯誤」という言い方にしておきます。

販売時にもらうパンフレット、そして営業マンの説明、見たり聞いたりしたものと実際の物が異なる、これはよくある話です。

パンフレットというのは、商品の詳細が記された図面に匹敵する書面です。マンションの意匠、仕様、そしてマンションに備え付けられた設備の機能説明などが書かれていますが、この記載された内容と実物とが異なるケースはよくあります。

その相違を前提に、パンフレットには「実際の物とは異なる場合があります」、このような記述があります。

小さな字には本音の部分が隠されています。小さな字ほど「よく読め」と言われのはまさにこのことです。

これは一定のものに限られますが、例えば構造に関わる記載は、曖昧な表記では困りますよね。

パンフレット、施工図面(後の竣工図面)、購入者に提出する書類は全て整合性がなければなりません。いずれも相違は許されないことです。

ですが、現実としてこのパンフレットの記載内容と施工図面との相違が起きていることは否めません。

マンションプランというのは、分譲会社、施工会社、設計事務所の三者間が共有しなければなりません。この三者間のいずれかに食い違いが生じれば、そこに欠陥が生まれます。

販売に先駆け分譲会社はパンフレットを準備します。このパンフレットは広告業者に依頼して作成されます。一方で施工図面というのは設計事務所が作成します。作成者が異なるケースでは、食い違いが生じやすいということです。

 

商談後に言った言わないでトラブルになるケースがあります。営業マンはマンションの全てを熟知しているわけではありません。理解せずに説明するから購入者とトラブルになるんです。知ったかぶりの営業マンって本当に多いでず(笑えない)。

なので、営業マンの説明を鵜呑みにしてはいけません。逆に分からないことを恥じずに「調べて後で連絡します」、これを素直に言える営業マンは信用できます。嘘は言わない、これが営業マンの本来あるべき姿だと思います。

 

マンションの欠陥というのは、ネット上に多くの情報が溢れています。実際に建物が傾いている、地盤沈下している、塀が傾いている、横浜の事件がクローズアップされましたが、欠陥に価するマンションは意外と多く存在します。

少しでも気になるところがあれば、早めに第三者に相談された方が良いです。相談先として、国土交通省の所管する公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターなどがあります。下にリンクを貼っておきます。

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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