マンション生活

マンションの結露対策について

2017年11月10日

 

結露は夏は窓の外側に、冬は窓の内側に発生する。マンションは気密性が高い建物だから結露が発生しやすい。特に冬の結露は室内のいたるところに発生するから厄介である。

今回、マンションの結露のメカニズム、そして結露対策について語りたい。

 

マンションの結露発生のメカニズム

ガラス製のコップに水を注ぎ、氷を入れてしばらくするとコップの外側に水滴が付着する。さらに時間が経つと水滴が下に落ちてテーブルの上が水浸しになる。これは普段生活する中でよく目にする光景である。

 

 

この現象がまさしく結露である。

なぜこのような現象が起きるのだろうか。これには空気中に含まれる水蒸気が深く関わっている。空気には水蒸気が含まれている。暖かい空気には水蒸気が多く含まれ、逆に冷たい空気には水蒸気は含まれにくいという性質をもつ。

そして暖かい空気が急に冷えるとその空気中の水蒸気は行き場を無くし水へと変わる。

ここでひとつの疑問にぶつかる。冬は気温が低いから水蒸気の量は減る、それなのにどうして結露が多く発生するのだろう?

それは住戸内の温度にある

 

住戸内にも水蒸気を発生させる水分が多く存在している。浴室、キッチン、洗面台などで水は常に使用されている。

寒くなると暖房器具を使って室内を暖める。暖まった室内環境は結露の温床となる。冬場に除湿器を用いる家庭が最近増えてきているが、使用の目的はそこにある。

先ほどのコップの原理を住戸内に置き換えると理解しやすい。コップの内側が住戸の外側、コップの外側が住戸の内側ということなる。住戸の内側では、コップの外側に出来た結露と同じ現象が起こる。

 

 

暖かい空気、そして冷たい空気の境界部分に結露は発生する。外気に面する窓まわりの内側、玄関扉の内側、外気に面するコンクリートの境界壁がこれに該当する。

ただし、外気に面するコンクリートの境界壁は、一般的に断熱処理が施されているので結露は生じにくい。もし結露が生じている場合は、施工不良の可能性が高い。



マンションの結露対策

換気による対策

結露対策として有効なのは、外気と室内との温度差を生じさせない、これに尽きるのだが、寒い冬に窓をしばらく開けておくと凍えそうになる(笑)。それに風邪を引いてしまう。

また、換気を頻繁に行うことで暖房の熱効率が下がるし、冬場に寒い外気を取り入れることに抵抗を感じる方は多い。

2003年の建築基準法の改正で24時間換気システムの設置が義務化され、この時期以降のマンションにはこのシステムが設置されているのだが、特に冬場は利用されない方が多い。

私のマンションは築20年のマンションだから、この設備は設置されていない。だから窓を開けて空気を入れ替えるか、換気口を開けて水まわりに設置されている換気扇を回すしか手立てはない(笑)。

このシステムが設置されているマンションは使わない手はない。

 

 

冷たい空気が入り込む、そんな理由で室内に設置されている吸気口を閉める方が多いのだが、マンションの場合、基本として吸気はここから行う。常時開けておくかは自己判断に委ねられるが、結露が多く発生している場合は、この吸気口は開けておいた方がいい。

 

 

それと吸気口に設置されているフィルターの清掃、交換は適宜行わないとチリや埃などで目詰まりが起こるから効果が薄れる。

余談になるが、マンションは気密性が高いから、24時間換気システムや換気扇などで空気を外に吐き出すと住戸内に負圧が生じる。玄関扉を開ける際に重く感じるのはこの負圧の影響によるものだ。

結露対策として換気は基本となる。

 

リフォームによる対策

最近の新築マンションは、複層ガラス(ペアガラス)が用いられるケースが多い。

複合ガラスとは、2枚のガラスの間に乾燥した空気を密閉したもので、この中間層にガスを注入したり、真空にしている商品もある。一般のシングルガラス(単板ガラス)よりも断熱性・遮音性が高く、結露防止効果も高い。

しかしながら、これが使用されているマンションはごく一部であり、マンションの多くはシングルガラスである。私の自宅のマンションも全てシングルガラスになっている。

マンションの場合、窓まわりのガラスやサッシは共用部分になるから勝手に変更することはできない。その場合、管理組合の承諾が必要になる。

その承諾の判断基準になるのがそれぞれのマンションで作成されている管理規約である。国土交通省が作成しているマンション標準管理規約には以下の記述がある。

マンション標準管理規約/第22条(窓ガラス等の改良)

共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。

2 管理組合は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、当該工事を各区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとする。

さらにマンション標準管理規約コメントでは、具体的な内容が示されている。

マンション標準管理規約コメント/第22条関係(一部抜粋)

④ 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることにかんがみ、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定めるべきことを規定したものである。

⑤ また、第2項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等をあらかじめ定型的に細則で定めることにより、その範囲内で行われるものについては施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。

⑥ 「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するもの」の工事の具体例としては、防犯・防音・断熱性等により優れた複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等が考えられる

⑦ 各区分所有者の責任と負担において行うことができるものとしてあらかじめ定型的な工事内容を定めるに当たっては、専門的知識を有する者の意見を聴くことを考慮する。

⑧ 本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。⑨ 申請書及び承認書の様式は、専有部分の修繕に関する様式に準じて定めるものとする。

 

国土交通省の意向として、コメントの赤字で記された複層ガラスへの交換は「防犯、防音又は断熱等の性能の向上等に資するもの」としてその具体例に挙げられている。

だがしかし、個々の管理規約そして細則がきちんと整備されていなければ、管理組合にとって判断基準には至らない。なので、管理規約と細則の見直しは行っておいた方がいい。

それとコメントの青字で記された「形状や材質において大きく異なる状況は考えられない」という記述だが、複層ガラスにも色んな種類があり、そして施工方法も異なるから、商品によっては意匠が変わったり、強度や防火などの性能が下がる商品も存在し得る。

例えば網入りガラスの場合、防犯と防火の2つの性能が高いから、それに見合った商品でないと有事の際に支障が生じたり、問題になるケースも考えられる。

アタッチメント付きの場合、アルミフレームが太くなるから見た目が変わる。そこを指摘されると何も言えない(笑)。

アタッチメントとはこの部分👇

 

なので、個々の管理組合で複層ガラスを容認する場合は、管理規約(細則)には、「現状の性能と同等以上とする」「アタッチメントは認める」など、詳細を記しておいた方がいい。

 

複層ガラスへの交換は、このような面倒があるから希望者の大半はあきらめるに違いない。

だが管理規約(細則)をきちんと整備しておけば、複層ガラスへの交換はマンションでも可能だということがこれで理解していただけると思う。

それと、この複層ガラスへの交換は、ガラスの結露は防げても、既設のサッシの結露は防げない。そこは理解しておくべきであろう。

その他の対策として、既設の窓回りに内窓を取り付けたり、壁に結露が生じる場合は、壁の断熱リフォームなどが考えられる。結露対策は、ネットで調べれば色んな方法があり、また色んなグッズが販売されている。どれくらいの効果が期待できるかは未知数であるが、興味があれば調べてみるといい。

 

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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