リフォーム

マンションリノベーションにおける注意点!

2017年11月13日

 

私の住んでいるマンションは築20年になるが、今年に入ってリノベーションを行った住戸が2つある。

ちなみにリノベーションとは、日本語に訳すと「刷新」「革新」という意味になるのだが、建築で用いる場合は、「新築時よりも性能を向上させる」、「より快適で便利なものにする」、そんな意味合いで使われている。

以前から使われているリフォームという言葉があるが、これは「新築時の状態に戻す」「原状に復する」という意味合いを持つ。

いずれにしても、専有部分でこれらを行う場合は、事前に管理組合に対して工事申請を行う必要がある。マンションのルール上、勝手にはできない。

 

以前までは、リフォームが一般的に行われていたのだが、10年くらい前からリノベーションが流行し始め、近年では盛んに行われるようになった。

リフォームの場合だと、原状に復する工事だから管理組合に申請を出せば、特殊なケースを除き断われる理由はない。それがリノベーションになると、中には複雑な問題も出てくるから、その工事の承認の可否判断が難しいのが実情としてある。

また、管理組合の多くは、この承認手続きに際し、管理会社任せになっている感は否めない。

この可否判断は、理事長や理事会だけではなく、マンションの所有者すべてが認識せねばなるまい。なぜなら、時として所有者の誰もが当事者(施主)になり得るからだ。

それを互いに認識するために管理規約(使用細則)という基本規定が存在する。だがしかし、多くの管理規約には、この可否判断となる基準が明確に示されていない。

国土交通省が模範として作成しているマンション標準管理規約には、以下の条文しか記されていない。おそらく多くの管理組合がこの標準管理規約に沿った内容になっているのではないだろうか。

マンション標準管理規約第17条(専有部分の修繕等)

第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。

2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。

3 理事長は、第1項の規定による申請について、承認しようとするとき、又は不承認としようとするときは、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議を経なければならない。

4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。

5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

これはただの事務的な手続方法を綴っているだけに過ぎない。大事な判断基準が抜けているから、承認の可否判断などできまい。

この判断基準の材料になるのは、マンション標準管理規約のコメントの方にある。

マンション標準管理規約コメント/第17条関係

① 区分所有者は、区分所有法第6条第1項の規定により、専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を及ぼす行為を実施することはできない。

② 「専有部分の修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え」の工事の具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。

③ 本条は、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たって、共用部分内に係る工事についても、理事長の承認を得れば、区分所有者が行うことができることも想定している。

④ 専有部分の修繕等の実施は、共用部分に関係してくる場合もあることから、ここでは、そのような場合も想定し、区分所有法第18条の共用部分の管理に関する事項として、同条第2項の規定により、規約で別の方法を定めたものである。なお、区分所有法第17条の共用部分の変更に該当し、集会の決議を経ることが必要となる場合もあることに留意する必要がある。

⑤ 承認を行うに当たっては、専門的な判断が必要となる場合も考えられることから、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する。特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要である。

⑥ 承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合には、申請者に負担させることが適当である。

⑦ 工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。

⑧ 専有部分に関する工事であっても、他の居住者等に影響を与えることが考えられるため、工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分所有者等へ周知を図ることが適当である。

⑨ 本条の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合には、第67条の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができる。

⑩ 本条の規定のほか、具体的な手続き、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、使用細則に別途定めるものとする。

コメント①の赤字部分の区分所有法第6条第1項の規定は、特に重要なので下に条文を追記しておく。

区分所有法第6条第1項(区分所有者の権利義務等)

区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

コメント⑩の青字部分の使用細則を別途定める、これを定めていない管理組合が多い。この詳細規定がなければ、当期の理事長や理事会は承認の可否判断に苦慮するだろうし、施主となる区分所有者にとっても工事プランの作成に苦慮するであろう。また、施工を請け負う業者に対して言い訳を与えてしまう。

なので、可否判断ができるように細かな規定を早めに設定しておいた方がいい。

理事会で素案を作成して総会で承認を得る、あらかじめ総会前に設定の趣旨や経緯を綴った書面(議事録など)で組合員に対して周知しておくと話の行き違いを防げる。これを設定するまでは大変であるが、その後の対応、そして行き違いによるトラブルを考えれば、設定することに相応の意義はある。



マンションリノベーションにおける注意点

マンションの躯体は共用部分に該当する。躯体とは、建物の構造体の骨組みにあたる部分を意味する。簡単に言えば、住戸を区切らるために設けられた壁、天井、床のコンクリート部分のことである。

 

上の写真のコンクリート部分は全て共用部分に該当する。なので、このコンクリート部分に勝手に穴をあけたり、削ったりすることはできない。これらは共用部分の変更にあたる。

また、これらの行為は、区分所有法第6条第1項(上記参照)に定められた「建物の保存に有害な行為」に該当する。その根拠は過去の判例にある。

こんなことを書くと必ず質問や疑問が生まれる。想定される質問がこれだ。

▶ 小さなビスを打つ行為も違反なのか?

▶ エアコンの配管カバーを取り付ける際のビス固定も違反なのか?

これこそが先ほどの可否判断の基本規定に委ねられる。それがなければ、個々に解釈(価値観)が異なり、この違いによってトラブルが起こり得る。

▶ それくらいは容認すべきだ。

▶ それを認めたら収拾がつかなくなるから容認すべきでない。

▶ たとえ軽微なものでもそれは共用部分の変更にあたる。

マンションによっては、これらの行為を管理規約(使用細則)で容認しているケースもしばし見受けられる。その場合、施工時にビス止め部分から水が入らないように表層部をシール剤で埋める、撤去時にビス穴部分を原状に復するなどの規定があったりもする。

個人的には「それを認めたら収拾がつかなくなるから容認すべきでない」、この考え方になるだろう。しかしながら、既にエアコンの配管カバーなどはビス固定で取り付けられているケースが多い。既に付いているものに対して直ぐに外せとは言えない。

そこに暗黙が生まれる。これがトラブルに発展すると逆にその暗黙に対して揚げ足を取る人も出てくる。だから暗黙ではなく、明確な取り決めが必要になる。

エアコンの設置業者もリノベーションなどを行う施工業者も、管理組合側に明確な取り決めがないと勝手な判断で施工してしまう。問題になって後から言ったところで多くの業者は手直しには応じないだろう。

明確な取り決めの必要性、それについては個々の管理組合が考えることだ。

 

 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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