マンションの上部に設置されているマンション名入りの看板、中にはマンションデべロッパー名、ロゴマークが刻まれたものがある。この看板は目立つ場所にあるから、マンションデべロッパーにとっては社名が売れる恰好の広告塔になっている。
私はマンションデべロッパー時代に、看板には社名やロゴマークは入れない方がいい、社長に何度もそのように告げたが、「宣伝になるから付けている」、私物化にも程がある。
この広告の多くが無償で設置されているから、マンションデべロッパーとしては好都合である。社名やロゴマークを入れるのは私物化しているようなものだ。マンションが完売すれば、マンションデべロッパーとは一切無縁のものとなる。それを承知で設置しているから手に負えない。
この看板設置については、マンション購入時の重要事項説明書に承認事項として記載されているのだが、購入者の多くがあまりそのことに関心を持たない。
「マンションデべロッパーの名称入りの看板等については無償で設置する」
後で関心を持ったところで、事前に承認しているから文句は言えない。
関心を持つことで、マンションデべロッパーの社名入り、ロゴマーク入りの看板について、ひとつの疑問が生まれる。
この看板の所有者はいったい誰なのか…
看板も朽ちれば落下する危険性も考えられるし、台風で吹き飛ぶことも考えられる。その場合に所有者(管理者)は誰なのか、事故が起きた際にはそこを問われる。
マンション購入時の重要事項説明書にその旨の記載がなければ、事故が起きた際、互いに責任転嫁が起こる。それと看板の修繕費用も同じである。明確に条件決めがなされていないケースが多い。
大規模修繕の際にこの問題が浮上する。常識的に考えれば、マンションデべロッパーが修繕費用を負担するのは当然であろう。だが既に倒産している場合は、先ほどの管理上の責任、そして修繕費用は管理組合が負うことになる。そこで看板を撤去するという選択も出てくる。
看板を撤去するにも付け替えるのにもお金が掛かる。そこで初めてこの看板設置の是非について関心を抱く。
私が当時反対した理由はそこにある。社名入り、ロゴマーク入りの看板はトラブルのもと、後に面倒になるからシンプルなマンション名だけに留めるべき…
管理組合によっては、途中でマンションデべロッパーと交渉して看板設置料を有償にするケースが見受けられるが、この設置料収益は、収益事業たる不動産貸付業に該当する。
マンションデべロッパーが倒産したときのために、事前に看板撤去費用を預り金として受け取る方法もある。このケースでは課税されない。(知人の税理士の見解による)
マンションの看板の是非については、皆さんそれぞれに考え方が異なるだろう。個人的には内情を知っているだけに私物化にしか思えない。