分譲マンションの共用部分の電気料金を削減する方法のひとつに、電子ブレーカーを用いる方法がある。
私はこの電子ブレーカーを管理組合におすすめできない。その理由は大きく2つある。今回、これについて語りたい。
一般ブレーカーと電子ブレーカーの違い
一般ブレーカーと電子ブレーカーの違いは以下のとおりだ。
一般的なブレーカーは、その許容範囲以上に電流が流れるときに、電流を遮断し、設備や配線などを保護する機能をもっており、どれだけの電流が流れたら、何分何秒以内に遮断させなければならないという基準がJIS規格にて定められている。これは、熱伝導式ブレーカーというもので、過電流発生熱で電流を遮断する仕組みだ。
電子ブレーカーは熱伝導式ではなく、電流値をデジタル数値で感知する。ブレーカーの動作をコンピューター制御し、JIS規格の許容範囲最大まで使用できるようにプログラミングされている。急激な電流が流れても瞬時に電力を遮断するのではなく、電流の強さと時間を監視し、規定時間以内であればブレーカーが落ちないようにすることができる。
電子ブレーカーとは
電子ブレーカーとは、簡単に言うと低圧電力(動力200V)の基本料金を下げるために開発された商品だ。この言葉だけを鵜呑みにすると、良い商品のように思える。
共用部分の電気料金は、電灯と動力の2つに分けられるが、この電子ブレーカーは電力部分の基本料金を下げるために用いるものだ。
実際には電子ブレーカーはもっと奥深いのだが、この話をしても多くの方は、理解しづらいだろう。詳しく調べたいのであれば、ネットで「電子ブレーカー」と検索すれば、電気学的な理論が書かれている。ここでは割愛する。
電子ブレーカーをおすすめしない2つの理由
私が電子ブレーカーをおすすめしない理由のひとつは、電子ブレーカーの本体を含めた工事費が40万円から50万円と割高だ。これが理由ではない。
この工事費の原価は3分の1程度になる。残りが業者側の利益ということになるわけだが、管理会社経由の場合、10万円から20万円が管理会社の利益になる。
私が管理会社時代に、電子ブレーカーを取り扱う複数の業者から持ち掛けられた話だ。そんな暴利が上乗せされた高額商品を管理組合にすすめるなんて、善意ある者ならできないだろう。
例え、シュミレーション通りに電気代が削減できたとしても…
もうひとつの理由、事前調査の段階で契約容量を読み誤ると電子ブレーカーがトリップ(遮断)してしまうという点だ。このブレーカーの対象となる動力には、エレベーター、給水ポンプ、機械式駐車場などが挙げられるが、トリップするとこれら全てがが停止することになる。
個人であれば自己責任(自業自得)ですむが、管理組合の場合は多くの住人が使用しているから、これらが停止すると色んな問題が起きる。生活に支障を来すし、エレベーターが停止すると中にいる住人はパニックになるだろう。
電子ブレーカーも機械だから故障することもあるし、不良品だって紛れ込んだりものするだろう。100%安全でなければ導入は避けるべきだと思う。万が一の一が起きては困る。
絶対に安全なのか、これを業者側に突っ込んで聞いてみたが、大丈夫という答えは返ってこなかった。
関係業者が儲けるための高額ブレーカー、それが電子ブレーカーだと個人的にそう思う。だから私はおすすめしない。
<追記>
実際に導入されているマンションもあるだろうし、この記事に対して異論はあると思う。私はリベートが絡むこの手の営業手法というのがすこぶる嫌いである。だから記事として取り上げた。そこは理解しておいてほしい。