保守点検の費用対効果
マンションの共用部分には色んな設備がある。自動扉、給水装置、貯水槽、エレベーター、消防設備、宅配ボックスなどが挙げられる。
設備の点検には法定点検と任意点検の2種類あるが、今回、任意点検をテーマにしたい。
この任意点検というのは、法定点検のような義務規定がないから、するしないは管理組合の自由だ。
このするしないを判断するとき、点検の必要性そして費用対効果を踏まえた検討が望まれる。最少費用で最大効果、これが任意点検のポイントと言えるだろう。
限られた収入をいかに無駄なく運用するか、これが管理組合の存在意義でもある。
宅配ボックスの保守点検は必要?
私が管理会社の現役時代に、よく管理組合から宅配ボックスのメンテナンスの必要性についての質問が多かった。
私は何の迷いもなく「不要ですね」、そう答えていた。
理由は簡単だ。費用対効果の観点から無駄だからである。宅配ボックスの設置費用はボックス数にもよるが80万円から100万円程度は掛かる。
そして維持費は、保守会社によって異なるが戸当り月額100円以上は掛かる。50戸のマンションであれば、最低でも月額5千円、年間で6万円になる。
宅配ボックスの耐用年数を仮に10年とした場合、60万円の維持費が掛かることになる。15年利用できれば90万円、設置費用に相当する。
それに対し、保守点検の仕様はこうだ。年1回の宅配ボックスの点検、壊れた時の修理代は実費、ただし、保守契約を結んでいれば出張費は無料となる。
この程度の保守点検に年間6万円は高い。これ以上の保守点検費を支払っている管理組合も少なくない。
それに荷物が取り出せない、そういった問題が起きれば保守会社のスタッフが現地に出向き対応するのだが、土日は対応しないケースが多い。
この出張の際に、別途料金を徴収する保守会社も中には存在する。
保守点検の内容だが、ボックス内の拭き清掃、扉の丁番のねじの締め付け程度だ。
私の現役時代は、現地の管理人に宅配ボックスの取り扱い方法、清掃の仕方を教えて、月1回の点検、清掃を実施していた。そして24時間365日の緊急時に備えて警備会社にも取り扱い方法を教え、トラブルの際の一次対応を無償で行うよう協力してもらった。
そうすることで、割高とも思える保守点検費は削減できる。管理組合にとってもメリットはあるし、管理会社にとってもそこに存在意義が生まれる。そして何よりも管理組合と管理会社の信頼関係が深まる。
私が自信をもって「不要です」そう答えたのは、この考え方が前提としてあるからだ。
管理会社というのは、管理組合のために面倒なことをやるために存在しているのだと思う。そして経験と知恵を仕事に活かす。管理会社に限らず、仕事の本質はそこにあるのだ。
宅配ボックスはそう簡単に壊れるものではない。もし頻繁に壊れるものなら、製造段階に問題があるか、使い方に問題のいずれかにあろう。
故障頻度を考えれば、出張費を実費負担する方が長い目でみれば得になる。これが費用対効果の考え方だ。
自動扉の保守点検は必要?
宅配ボックスと違い、自動扉の保守点検は必要になる。ただし、点検頻度は過剰なのが実情だ。
自動扉は10年では入替えはしない。モーターなどの機器類を適宜交換することで20年以上はもつものだ。
機械というものは古くなると壊れやすくなる。最初の段階から故障が多いのは製造段階に問題がある。そのために保証期間というものがある。その兆候があれば早い段階で改善する必要があろう。
一般的にメーカーが推奨する保守点検の回数は年4回だ。新築当初からこの頻度になっているケースが多い。
保守会社の売上のためにあえて回数を多くしている。なぜなら、私がデべロッパーの現役時代に色んなメーカーからこの話をよく聞かされた。マンションの施工を担う建設会社が経費削減のため、設備業者の見積り額をとことん叩く。新築のエレベーターの導入は半値に近い。だからどのメーカーも保守点検費や部品交換費、修理費、入れ替え費用から利益を出している。点検回数が過剰な理由はそこにある。
だから、メーカーの意向に合せる必要などない。最初の10年は、年2回の点検頻度がおすすめだ。なぜ2回なのか、それは多くの保守会社が最低年2回の点検でないと契約を受けない、そんな会社規定を設けているからだ。
保守点検費は1回当り1万円から2万円程度かかる。回数によって保守点検費が違ってくるのだ。それと当初から10年までは故障も少ない。年2回なら点検時に故障の前兆も保守会社は予知できるだろう。
この保守点検の契約を結んでいれば、実施回数に関係なく出張費が無料になる。部品代だけで修理が行えるのだ。4回でも2回でもこの特典は同じということだ。故障頻度が増えれば、途中で回数を増やせばいい。
自動扉もいつかは入れ替えの時期を迎える。この維持費を節約することで自動扉に掛かるトータルコストを抑えることができる。この発想が大切だと思う。