管理会社変更

マンション管理組合|管理会社の変更には3つのハードルがある!

2023年3月7日

 

分譲マンションの場合、管理会社を変更したいと思ってもそう簡単に物事は進みません。

賃貸マンションのようにワンオーナーであれば、個人の意思で変更はできますが、分譲マンションの場合だと、複数のオーナー(区分所有者)がいらっしゃるので個人の意思だけで変更することはできません。これが現実です…

また、管理会社の変更にあたっては、大きく3つのハードルがあります。それを一つずつ乗り越えなければ、目的(管理会社変更)を達成することはできません。



3つのハードルとは

1つ目のハードルは、「総会での発議」または「理事会への具申」です。発議とは、会議(総会)の席で意見を出すこと。具申は、上級の機関(理事会)に自分の意見や事情を詳しく述べるという意味になります。

総会での発議

この発議のタイミングは、管理委託契約の更新契約の議題時もしくは、総会の全議題終了後に出席者の皆さんからの意見を聞く機会が与えられますが、そのいずれかになります。

前者の場合、その発議(管理会社変更の提案)に賛同される方が過半数となれば管理委託契約の更新契約はなされず暫定契約に移行し、管理会社変更について来期の理事会で検討することになります。

後者の場合は、そこで出席者の皆さんに賛同が得られれば、その後の理事会の検討課題として取り上げられ、2つ目のハードル(次のステップ)へ進みます。

いずれの場合もそこで賛同が得られなければ、終息という当人からしてみれば不本意な結果に終わります。

理事会への具申

理事会に出席して意見を述べる前にまず理事長と直接会って話をする、または理事長宛てに要望書を提出することから始まり、そこから進展するかは理事長に委ねられます。

 



2つ目のハードルは、理事会での審議です。前述の総会での発議(後者)または理事会への具申の場合、消極的な理事会では、自らの意思で理事会を開催することは少ないため、理事会が全く開かれずに検討課題が棚上げ状態ということが起こり得ます。利害の当事者となる管理会社もまた理事会開催を勧めたりはしません。

理事会の役員の多くは輪番制による持ち回りなので、難題を持ち掛けられても躊躇したり困惑するでしょうし、そこで管理会社を頼るにしても、この場合だと利害の当事者になるので助言など期待できません。

逆に、理事会の役員の中に管理会社変更を望む方がいらっしゃれば、管理会社を抜きにした理事会を頻繁に開催して前向きな協議を行っています。実際にこうしたケースでは3つ目のハードル(次のステップ)へ進むことが多いです。

 

3つ目のハードルは、総会での審議です。そこに行き着くまでにはかなり時間を要しますが、これが最後の障壁となります。

この段階で既に新たな管理会社(1社)が決まっているケースが多いと思います。管理組合によっては、総会時に複数社の中から多数決により選択するといった方法を採られたりもしますが、全てはそれまでの準備手法で決まると言っても過言ではありません。

準備とは、そこに行き着くまでの広報、つまりこれまでの進捗状況の周知であったり、アンケートやプレゼンなどの実施、管理会社変更に至った明確な理由付けなどを指します。

管理組合にはマンション管理に無関心な方が意外と多く、故に管理会社変更について理事会で協議中といった活動の伝達は欠かせませんし、事前に周知しておかないと強行的なイメージを持たれやすいのでそこに注意が必要です。

また、管理会社の変更理由については、審議する上で有力なものとなるため、論理的思考(根拠あっての結論)は欠かせません。

もう一つの手法についてですが、総会へ上程する議題をどういったものにするのか、例えば前述の管理会社を1社に決めるとか、複数社の中から総会時に選択するとか、この複数社の中に今の管理会社を加えるのかといった方法のことを指します。

一般的には、理事会時に新たな管理会社は1社に決める方法が用いられています。管理会社を選んだ理由を明確に説明できればあとは多数決により決めることができるので、合理的な方法と言えます。

この場合、事前のプレゼンには理事会だけではなく区分所有者全員に参加してもらい、参加者に対してアンケートを行い、このアンケート結果を踏まえ理事会で1社を選出するといった方法があります。

管理組合によっては、前述のアンケートを参加者だけではなく区分所有者全員に実施するケースが考えられますが、この場合の注意点として、欠席者からしてみれば各々の管理会社の良し悪しは、企業のプレゼン資料(会社の規模、管理実績など)でしか判断ができないので、大手企業に偏りがちになります。(どの管理会社が良いと思われますかの質問をアンケートに入れるとそうなる傾向にあります。)

なので、参加者の意見を反映させたアンケート作成が望まれますし、参加者のみのアンケートにするのであれば、プレゼンの開催案内文の中に「プレゼンに参加された方のご意見を踏まえて、理事会で新たな管理会社を1社選考いたします。」を入れると趣旨が伝わりますし、流れが掴めます。

大手管理会社だから良いとは限りません。そこにも注意が必要です。

それと、今の管理会社を複数社(候補者)に加える場合、まずその前にやるべきことがあります。そもそも管理会社に問題があるから変更の検討課題が生じるのであって、管理会社を変更する前には必ず改善要請は行うべきだと思います。

そこで改善が見込めればそれでよし、全くダメであれば管理会社変更の検討課題へ舵を切る、そうしないと管理会社を加えることに矛盾が生じてしまいます。情はあってもそこは厳格に…

実際に管理会社を変更するのは容易ではありません。自力では難しいときに頼りになるのが外部の専門家(マンション管理士)です。近年、こうした専門家を活用するケースが増えていますし、活用することで理事会の負担が軽減できます。

 

<関連記事>

マンション管理組合|管理会社の変更の前にやるべきこと!

マンション管理組合|管理会社の変更には明確な理由が必要!

マンション管理会社変更|その後の良し悪しと裏事情!

 

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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