マンションの管理組合の総会時に議長から「何か質問や意見はないですか?」、その問いかけに対し、意見を言える人ってどれくらいいるのだろう。
▶ これって言ってもいいことなのだろうか…?
▶ 自分の考えがまとまらない…
▶ 他の人の意見を過大評価してしまう…
▶ 会議の議題について特にこだわりがない…
意見の出ない会議って意外と多く存在します。そんな会議では簡単に物事が決まり、その後に愚痴や不満が出たりします。これはマンションの総会に限ったことではありません。職場の会議にも言えることです。
皆さん、サイレントマジョリティという言葉を知っていますか?
サイレントマジョリティとは、物言わぬ多数派、静かな多数派、無関心層などの意味で使われる言葉です。
会議の中でよく見受けられるサイレントマジョリティ、そんな会議に果たして、時間を費やし人を集める意義はあるのでしょうか?
このように書くと、「私は報告を聞くために出席している」、「組合員の義務として出席している」と主張される方が中にはいらっしゃるかも知れませんが、いずれも正当な主張です。ですが、話し合うための会議であることを忘れないでほしい。
意見を言うと会議が長くなったり話がまとまらない、そんな意見が聞こえてきそうですが、私の管理会社時代に総会を通じてひとりの組合員さんから学んだことがあります。今回その話について語らせていただきます。
そのマンションには小さな公園が新築時に設けられていましたが、犬、猫の糞で砂場が汚れ、衛生上良くないという理由でブルーシートがその砂場にずっと掛けられたままでした。
その公園を駐車場に変更する案が理事会で可決され、総会に諮る運びとなりました。この総会に出席された人数は、特別決議の議題ということもあって8割程度はいたと思います。
本議題の説明後に「皆さん、何か質問や意見はないですか?」、議長が出席者に問いかけましたが、誰からも意見が出ません。このまま採決に移るのかと思ったとき、これまでの総会で一言も口にしなかった組合員(Aさん)が挙手して意見を述べました。
今から10年以上前の話になりますが、その時のシーン、そしてAさんの語られた言葉が今でも鮮明に記憶に残っています。
街中にあるマンションだったので、子供の遊び場が周りにはなく、マンションの子供たちはその公園でよく遊んでいたそうです。そのことを知らないのは多くの大人たちでした。そして当時管理会社の人間だった私も同じです。
Aさんは、夜間勤務の仕事をされているので毎日夕方近くのマンションの光景を入居した時から見てきたそうです。
その公園で楽しく遊ぶ子供たちのことを知っていました。
マンションの住人は大人たちだけではなく子供もいる。子供の唯一の遊び場を駐車場に変更するのは、実情を知らない大人の身勝手な考え方である。その偏見に疑問を呈したAさんの質疑は、とても中立的で理路整然とした説得力のある内容でした。
このAさんの発言を機に、それに同調する意見が数名から出ました。時間を掛けて理事会で協議した駐車場変更案でしたが、そのとき理事長は意見に翻弄され、最後に出た言葉が「こりゃ参った」だったと記憶しています。
総会で否決となり、その後、砂場は撤去され平地へと変わり、子供たちの遊ぶスペースが増えました。
あれからこのマンションを通る度に公園のことを思い出します。「公園はまだある、よしよし」って、なぜか意味不明に納得している自分がそこにいます(笑)。
サイレントマジョリティでは何も変わらない、ちょっとした勇気が人の心を動かし、大きく変えることもできます。それを是非皆さんに知ってもらいたい。