現代社会において、電子メール、インターネットというのは無くてはならない存在である。もし仮に、今それがなくなるとしたら、きっと多くの方が困るだろう。
それだけ人々に普及しているということだ。このブログもネット環境があるから読み書きができる。
管理組合の総会の議決権行使においても、ずいぶん前から電磁的方法が利用できるように関連法規が改正され、現在に至っているわけだが、実際にこの電磁的方法を利用している管理組合は寡少である。
電磁的方法とは、パソコンやスマートフォン(携帯)を使用し、インターネットを介して電子メールの送信やホームページなどに掲載する方法を指す。
私なりに解釈した書き方だが、国土交通省が示されたマンション標準管理規約に記載されている電磁的方法の定義は以下のとおりだ。
二 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したもの(以下「電磁的記録」という。)を交付する方法
なんだかややこしい、まるで私の文章と同じだ(笑)。
利便性の高い電磁的方法がなぜ普及しないのか、今回それについて語る。
管理規約の整備がなされていない
これだけインターネットが普及しているにも関わらず、電磁的方法が利用されない理由、それは管理規約の整備がなされていない。これに尽きる。
マンション標準管理規約では、電磁的方法を利用可能な場合、利用可能でない場合、それぞれの規定(雛型)が用意されている。
管理会社がこの電磁的方法を積極的に提案していない、これも普及しない理由のひとつに挙げられるが、新築マンションの管理規約(原始規約)においても、多くが電磁的方法を用いない規定になっている。
管理規約を整備するにしても、電磁的方法の採用をめぐり、管理組合内で意見が分かれるだろう。その採用にあたり費用が発生するのなら合意形成はもっと難しくなる。
真正性への懸念
インターネットはとても便利であるが、一方で情報管理の在り方が問われる。国の情報管理ですら機密情報(個人情報)が漏洩する始末だ。
情報管理には真正性(しんせいせい)が求められる。
真正性とは、利用者、プロセス、システム、情報などが本物であることを確実にすることを意味する。虚偽入力、書き換え、消去などの不正行為を防止する、そんな意味で用いられる言葉でもある。
電磁的方法を用いたマンション管理サービスを提供する企業も存在するが、この真正性というのがその提供会社に求められる。
本来であれば管理会社が行うべきサービスである。なぜ積極的に行わないのか、まさにこの真正性があるからに他ならない。
情報漏洩が起きれば本業に影響が出る。だから余計なことはしない、これが管理会社の本音であろう。
利便性が十分に活かされない
臨時総会である議題のみを審議する場合、総会を開かずに電磁的方法によって決議することができる(区分所有法第45条)。これは利便性が高いといえる良い方の事例だ。但し、この場合、管理規約にその旨が規定されていることが前提である。
年1回開催される通常総会(定例総会)においては、総会招集(区分所有法第34条2項)、管理者の事務報告(区分所有法第43条)により、実際に総会を開催しなければならない。
各議題の賛否に関しては、電磁的方法よる議決権行使は管理規約にその旨が規定されていれば可能である。
マンション管理適正化推進法第72条では、マンション管理業者の重要事項の説明は「書面」により行うことになっている。故に電磁的方法は認められていない。説明会に関わる資料は全て書面で配布することになる。
総会、理事会手続きの全てにおいて電磁的方法が利用されない限り、利用価値(利便性)が低いものと言える。
この手続きは電磁的方法で行い、この手続きはペーパー(書面)で行う。その識別もそうだが、情報保管を行うのも正直面倒になる。
私はインターネット愛好家だが、管理組合の電磁的方法の利用については賛成しない。なぜなら、相手の顔を見て話す、そこに重点を置いているからである。
電磁的方法は利便性が高く利用価値はあると思う。だが、数で物事がすんなり決まる、それで本当にマンションが良くなっていくのか疑問に思える。