管理組合が作成・保管すべき書類には、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿がある。これ以外にも総会・理事会の議事録などの資料があるのだが、誰が作成し、どこに保管されているのか知っているだろうか。
「管理会社が作成し、管理会社の事務所に保管しているのでは?」、多くの方がそのように理解されていると思う。だがそれは、間違った管理方法であることを知っておくべきだ。
もし、管理会社が倒産した場合、預けた書類はいったいどうなるのだろう。そんなことを考える人は少ないと思うが、その場合、預けた書類が返ってくる保証などない。仮に継承する管理会社が存在したとしても、十分な引継ぎがなされないと、大切な書類が紛失することだって大いに考えられるのだ。
これまで、デべロッパー系管理会社の連鎖倒産を中心に管理会社の倒産は実に多い。それにM&Aも盛んに行われている。
管理会社が帳票類を作成しているのは、管理委託契約によって業務代行しているに過ぎない。本来なら管理組合がこれらの帳票類を作成しなければならない。この原則をまず知るべきであろう。
これは、国土交通省のマンション標準管理規約第64条にも記されている。
マンション標準管理規約第64条(帳票類等の作成、保管)
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を、書面または電磁的記録により作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
他にも、長期修繕計画、設計図書、修繕等の履歴情報なども同様に保管することが規定されている。
管理会社も民間企業だから完全とはいえない。国の社会保険庁ですら年金納付記録を紛失する始末だ。
マンション管理というのは、常に自主管理の観点で物事を考えることが重要である。
管理会社が書類を預かっているのは、管理会社が業務を円滑に行うのが目的であって、大切な書類を保管しているという意識が低いのが実情である。
その意識の低さの証拠となるのが、管理会社変更時に発覚する書類の紛失である。議事録がない、竣工図書がない、共用部の鍵がない、〇〇がない、このようなことが実際に起きている。
管理会社に管理を委託している場合は、管理会社が持つべき書類、管理組合が保管すべき書類、これらを明確に定めることが重要となる。
管理会社に管理組合資料を持たせる場合は、原本ではなく写しでいい。業務に支障がでることはまずない。
多くのマンションには管理員室がある。通常管理員室は鍵が掛かっている。帳票類の保管庫として有効利用できる場所ともいえる。
だが、マンションによっては、火災時に管理員室の扉が強制解除する仕様になっているケースもある。また、関係業者も出入りすることがある。管理員室内に保管するのであれば、鍵付きの書類棚がおすすめだ。これにより盗難被害に遭わなくてすむし、人を疑わなくてすむ。
管理員室には、人の出入りを感知するセキュリティー(機械警備)を設置することができる。オフィスの事務所セキュリティー、ホームセキュリティーと同じである。
このセキュリティーは、警備会社の多くはオプションで設置できる。新築時に既に導入しているマンションもあるのだが、費用はそんなには掛からない。
警備会社と5年以上契約しているのなら、当初の設備機器が既に償却されているので、本来なら5年以降分の機械警備の料金は下がる。なぜなら、当初5年間の料金の中に機器の償却分が含まれているからだ。
ガス会社もそうだが「〇年間は解約できない」、このような契約内容に敢えてしているのは、途中で解約されると投資した設備機器代が回収できなくなる。そんな理由で解約条項というのが設けられている。
なので、それを理由に無償で設置させることも可能である。もし導入したいのなら、警備会社と費用について交渉すべきだ。ただし、管理会社が元請けの場合は、拒否されることも考えられる。その場合は、直接業者と契約する方法だってある。
話しが少し長くなってしまったが、管理組合の帳票類の保管先について、今の現状を把握することが重要だと思う。共用部の鍵も同じである。
ペーパー方式と電磁的記録方式(フロッピーディスク・USBなど)の両方を保管するのがベストといえる。両方共に管理会社に言えばもらえるはずだ。ただし相当の時間は掛るだろう。