50名以上が居住するマンションでは、防火管理者を選任しなければなりません。しかしながら、防火管理者を募集しても中々なり手がいない、これはマンション管理組合が抱える問題のひとつと言えます。
防火管理者は責任が重そう、2日間の講習に行くのが面倒、仕事内容がわからない、誰かがなってくれるだろう、尻込みする色んな理由がそこにあります。
私の管理会社時代に理事会や総会などでこの話をすると、誰かが名乗り出るのを待っている、そんな空気が漂います。
期待したところで誰もが同じことを考えていれば、結局のところなり手なんか現れません。ただ時間ばかりが経ち、物事は前には進みません。
マンションによっては、防火管理者が未選任状態のままになっていたり、なり手不足を解消するため、便宜上委託先の管理会社にお願いし、フロント担当者とか現地の管理員が就任するケースが見受けられます。
他人に依存したり、防災について無関心、この姿勢に問題があるように思えます。
防火管理者を選任する前に考えるべきこと
防火管理者のなり手がいない、そこで候補者が現れるように選出方法とか待遇面について話し合いがもたれます。
理事会や総会などで委託先の管理会社から告げられるのは、「どなたかなってください」的な選任することだけに重きを置いた説明です。
無条件だとなり手がいない、だから待遇をよくすることで候補者を募る、そんなやり方が一般化されています。
防火管理者の資格を取得するための受講費用、2日間の受講に伴う日当、更に役員報酬と同様に防火管理者手当を支給する、これらが一般的に用いられる待遇条件かと思います。
マンションのために選任するわけですから、ある程度の配慮は欠かせませんが、防火管理者を選任することだけに意識が向けられ、そこで大事なことが忘れ去られています。
防火管理者の具体的な仕事内容とか責任的な話をしないのは、防火管理者のなり手がいなくなるという、ネガティブな固定観念がそこにあるからだと思います。
実際に防火管理者の資格取得に関わる講習を受講され、その重大さを知った方は多くいらっしゃると思います。最初からそれを知っていれば立候補しなかった、そんな声を私の管理会社時代によく見聞きしました。
これは管理組合の役員にも言えることです。実際の職務(役割)を正しく理解していない、そこに誤解とか問題があるように思えます。
管理組合の皆さんにできること、それは防火管理者を互いに押し付け合うのではなく、正しい防災知識を身に着けることです。皆さんが共同してマンションの防災に努める、そこに本来の意義が隠されているように思えます。
皆さんで互いに協力し合い助け合う、この考え方が防火管理者について議論する前提として大切な部分だと個人的にそう思います。
私の管理会社時代に、この話を理事会や総会のときに説明させていただきました。皆さんで協力し合う、助け合う、そして管理会社もその輪に入って防災に協力しますよ…
協力し合う、助け合うを前提とした話し合いの中では、「私でよければ防火管理者になりますよ」「私にも出来るかしら」、そんな建設的な会話が出てきます。そんな前向きな声が上がったときって、本当にうれしく感じます。人は互いに支え合って生きている、それを改めて実感させられます。
日常の防火管理の在り方、防災訓練の重要性は、過去に起きた火災事故が私たちに色んなことを教えてくれます。またそこから学ぶことができます。
2001年9月に起きた新宿・歌舞伎町の雑居ビルの火災事故(44名死亡)、日頃の防災意識の重要性を窺い知ることができます。
防火管理者を選任する前に、マンションの防災について皆さんで考えてみる、必要なことだと思います。