新築物件が2008年のリーマンショック後、急激に減っている。建設費の高騰、先行き不透明な状況下で新築物件を手掛けるマンションなどの分譲会社(デべロッパー)は作っても売れる確証がないから慎重にならざるを得ない。これが新築物件が減少している理由のひとつとして挙げられる。
分譲会社もそうだが、中古物件の仲介や販売を行っている不動産会社は売却物件が無くなると経営に行き詰る。そこで既存の中古物件の流通事業の競争が激化し、売り物件の獲得合戦が繰り広げられる。近年の動向はまさしくこれである。
自宅の郵便受けに投函されるチラシ、「マンションを売却しませんか」「こちらのマンションを買いたいお客様がいます」、そんな広告を最近よく見かける。
「買いたいお客様がいます」、ここでいうお客様の大半は不動産会社(当人)である。
不動産会社は売り物件(仕入れ)が無いと商売にならないから、あの手この手を使って中古物件の仕入れに必死になる。
特に最近多いのが、転売目的でマンションなどの不動産を一時的に購入するといった不動産の買い付けである。
中には室内の大幅なリフォームを施し、資産価値を上げて高値で販売されるケースが多々見受けられる。これは今始まったことではないが…
1990年代初頭に起こったバブル崩壊を経験したにも関わらず、転売ビジネスが再び繰り広げられている。売り物件が無い、そこで過剰な買付けを行っている不動産会社はこれからどんどん潰れていく。
不良債権を自ら生んでいることに気付かない。
バブル崩壊がなぜ起きたのか。不動産の価格が高騰している時期に多額の借り入れを行い、転売目的で物件の転売を繰り返したことで破綻を招き、これがバブル崩壊へと繋がった。
想定していた価格で不動産が売却できなくなり、借入金の返済が滞った結果、多くの不動産業者が倒産し、不動産投資をしていた個人投資家まで巻き込んで連鎖的に破綻が相次いで発生した。これが不動産バブル崩壊である。
バブル崩壊までに不動産を転売しきれなかった者が結局は多額の負債を抱え、破綻に追い込まれた。これはトランプのババ抜きゲームと同じである。転売によって最後に高値で不動産を買った者が大損をする。
2020年に開催される東京オリンピック後の大不況説はニュースなどで見聞きするが、今生じている不動産バブルはそう遠くない日に崩壊する。
金融機関が貸し渋れば、不動産会社は次々に破綻に追い込まれるだろう。
若い経営者たちはバブル崩壊の痛みを経験していない。リーマンショックで破綻に追い込まれた企業の多くはバブル崩壊を経験していない経営者たちだと聞く。
転売合戦の先にあるもの、それは経験してきた者なら理解できよう。
過去に起ったバブル崩壊を正しく反省できた企業だけが生き残る。転売合戦のその先にあるもの、それは多くの犠牲を生む破綻である。