マンションの管理業務の一部を管理会社ではなく専門業者に直接発注する際に注意すべきことがある。
この直接発注する際に管理会社がどこまで業務を担うのか、まずそれを知る必要があろう。
国土交通省が指針として作成している「マンション標準管理委託契約書」、この契約書を基にそれぞれのマンションにおける管理委託契約書が作成されているわけだが、このマンション標準管理委託契約書の別表第1「事務管理業務」の末尾にこのような記述がある。
乙(管理会社)は、甲(管理組合)が本マンションの維持または修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等)を外注により乙(管理会社)以外の業者に行わせる場合の見積書の受理、発注補助、実施の確認を行う。
この青字の部分が、管理会社以外の業者に発注する際の管理会社が行うべき業務となる。ただし、このマンション標準管理委託契約書はあくまで指針であって強制力はないから、管理会社によってこの内容が異なったりもするだろう。
だが、国の指針が存在する以上、これを下回る契約条件だとすれば、そこは管理組合として改善すべき点となろう。
管理組合の意向により管理会社を介さず直接発注する場合は、この契約条件があることをまず知っておく必要がある。
専門業者に直接発注する際の注意点
例えば、貯水槽清掃とか給水ポンプの交換などの水廻りの業務を行った後に、水の出が悪くなることがある。
断水後に給水を開始すると、給水管内の錆や汚れなどが蛇口のフィルター(ストレーナー)に溜まって目詰まりを起こすことがある。これが原因で水の出が悪くなる。
水の出が悪くなったら、ストレーナーの清掃を行うことでほとんどが解消される。このことを知らない、ストレーナーの清掃方法を知らない方が多いのが実情であろう。
ストレーナーの清掃方法は水栓が取り付けられた器具の取扱説明書に記載されている。
水の出が悪い、そこで管理会社に連絡される方が多いと思う。そこで問題になるのが専門業者に直接発注しているケースである。
専門業者の中には、「ストレーナーの清掃をご自分で行ってください」とか、「業務仕様外になりますので対応しかねます」といった言葉が返ってきたりもする。
そこで管理会社に連絡すると、「当社で行った業務ではないため、対応しかねます」と、ここでも不愛想な言葉が返ってくる。
確かに管理会社の業務の中に、作業後の対応は含まれていない。例えば、直接現地に出向いてストレーナーの清掃を行うことは原則しないので注意を払いたい。
これが管理会社と契約している場合、作業後の対応も行われているのが一般的である。その場合、管理会社は下請け業者に連絡して、管理会社との付き合いがあるから業務仕様外でもその業者が対応してくれる。
管理組合が専門業者と直接契約を行う上で注意すべきことは、その業者がどこまで対応してもらえるのか、事前に専門業者に確認された方がいい。中にはいい加減な業者もいる。
掲示書面に「本作業に伴うお問い合わせ先」を入れておくと、居住者はそこに連絡を入れるだろう。管理会社を経由するより、そちらの方が早い。
私の住んでいるマンションでは、事務管理業務、管理員業務以外は管理会社を介さずに専門業者と契約を結んでいるから、何かトラブルが生じた際は直接専門業者が対応してくれる。きちんとアフターを行ってもらう条件で契約を結んでいるから、今のところトラブルは生じていないし、親身に対応してくれる。
専門業者に直接連絡した方が早いし、中間マージンが発生しない分費用を低く抑えることができる。
それぞれの業務に関わる業者の連絡先を全戸に配り、1階の掲示板にも貼っているから、居住者の皆さんは何かあったら直接業者に連絡している。鍵のトラブルの連絡先も最寄りの鍵屋さんと条件交渉を行い、料金は安く、24時間365日迅速に対応してもらえる。
専門業者には、管理組合で作成した所定の業務連絡票に記入してもらい、管理員室にある電話機兼用のファックスに都度送信してもらっているので、いつ何が起きたか管理組合側で把握できる。この業務連絡票は管理会社が毎月作成している月次報告書の中に入れてもらい、その報告書をみれば過去の履歴が分かるようにしている。
専門業者との契約書面の中に業務連絡票の提出、これを契約仕様に加えているのだが、ここまで行う管理組合はそうはいないと思う(笑)。この仕組みを作り上げれば後が楽になる。
余談になるが、修繕費とか対応費について、管理組合の費用負担、個別の費用負担を明確に取り決めているから何か起きた際にスムーズに対応できる。これらの発想は、管理会社側から得られたものではなく、管理組合自身で勉強して培ったものである。