分譲マンションを購入したときに、既に管理会社は決まっている。マンションによっては自主管理というケースもあるだろう。
同じ不動産でも商業ビルや1棟の賃貸マンションを購入したときはどうだろう。仮に管理会社がそこに存在しても、自分の意思で自由に管理会社を変更することができる。もちろん自分で管理することもできる。
それが分譲マンションになると、複数の所有者がいらっしゃるから、自分だけの意思で「管理の在り方」を変えることはできない。それ故にそこに存在する管理会社との付き合いが必要になるし、避けることはできない。これが実情だと思う。
管理会社との管理委託契約に際して、行き違いやトラブルを防ぐために管理委託契約書というものが存在する。マンション管理適正化法が創設される前は、この管理委託契約をめぐるトラブルが多かった。だからこの法律が施行された。
管理会社との付き合い方は、この管理委託契約書に記された契約内容が深く関わってくるのだが、マンション管理に関わる全ての業務がこれには刻まれていない。この書面に記されていない事案において、両者間のトラブルは起きている。
例えば、修繕工事の案件が上がった場合、管理会社にそれを発注する必要はない。緊急対応を除き、それはどこにも記されてはいない。だが、管理会社は自ら修繕工事を受注するために、あの手この手を使って受注に漕ぎつけようとする。
このブログで何度も語っていることだが、管理会社は営利事業者であって、売上や利益を上げることが事業の目的にある。これは当然に民間のどの企業にも言えることだ。
管理会社の中には、修繕工事、保守点検などは一切請け負わない、そんな企業も存在する。だが、多くの管理会社は、マンション管理を通じて仕事に結びつくものは自社の管理仕様の中に取り入れている。契約書には記されていないが修繕工事も同じである。
管理会社との日頃の付き合いがあるからそこに依頼する。人間だから互いに情はあるし、付き合いを大切するというのは、日本独自の文化なのかも知れない。その一方では、情に流されず損得の価値観を持たれている方もいらっしゃるだろう。
人それぞれに価値観は異なるし、そのときの立場によって考え方が変わることもある。
▶ 理事としての立場
▶ 監事としての立場
▶ 組合員としての立場
▶ 居住者としての立場
それぞれの立場で管理会社との付き合い方は変わってくるだろう。
特に理事長に初めて就任される方は、管理会社との付き合いは必須となろう。何をして良いのか分からない、管理会社にお任せ的なことが起こり得る。これは自然なことのように思える。
理事長は、日々マンション管理を行う中で、一番管理会社と接するわけだから、人によっては管理会社に情を抱くこともあるだろうし、頼りにすれば自分の思いとは裏腹に感化されやすくなったりもする。これは他の役員にも言えることだと思う。
そのマンションを担当するフロントマンもまた同じことが言える。管理会社という組織の一員なのだが、長く担当すれば情が生まれてくるだろうし、頼りにされればその期待を裏切れない、そんなフロントマンも中にはいるだろう。
管理組合と管理会社という組織の付き合い、個人とフロントマンとの付き合い、これが入り混じっているのが実情ではないだろうか。
ここではっきり言えるのが、理事長、そして他の役員は個人ではない。組合員を代表する立場にある。公私混同という言葉があるが、これをマンション管理に用いるとどうなるか、結果は自分たちで考えれば分かることだと思う。
私の管理会社時代に、理事長や理事の皆さんがよく口にされた言葉がある。
「個人的にはこう思う、だが管理組合的にはどうだろう」
この言葉を聞くと安心する。なぜなら、それぞれの立場を弁えているからだ。
管理会社との付き合い方というのは、人ぞれぞれに異なるだろう。そこに大きな違いが生じれば、それが原因でトラブルになったりもする。
管理会社との正しい付き合い方って、皆さんの共通認識から生まれるものだと思う。だが、そこにはそれぞれの立場があるから、共通認識を見つけ出すのは決して容易ではない。
それぞれの立場を弁える、これがその見つけ出すヒントになりそうだが…