分譲マンションに設置されている機械式駐車場の割合は、全国ベースで約32%(国土交通省2018年度マンション総合調査に基づく)。
駐車場不足を解消するために設置されているわけですが、機械式駐車場の運用にあたってはトータルでみると多額の経費が掛かり、そこがネックになります。
最初の数年は点検費用だけで済みますが、5年を過ぎたあたりから部品交換などの軽微な修繕が発生し、10年を過ぎるとチェーンやモーターの交換が必要となるため、そこで多額の費用を要します。
更に25年を過ぎたあたりから、点検業者(管理会社)から入れ替えの提案がなされ、費用を聞いてびっくりします。
都市部や車利用の多い場所では、敷地内の機械式駐車場は希少価値に思えますが、機械式駐車場には車両制限があり、特に高さ制限1,550㎜以下が多いため、ワンボックス、SUV、軽ワゴンが駐車できないといったミスマッチが起きます。
また、マンション居住者の高齢化に伴い車を手放したり、都市部では車を持たないライフスタイルが広がったことから、空き区画に悩む管理組合は少なくないです。
結局のところ、機械式駐車場の運用って「費用対効果」だと思います。費用に対して実入りがなければ無駄と感じる方もいるでしょうし、マンションの売却時に駐車場があった方が高く売れる(売りやすい)といった意見もあります。
長期修繕計画のチェックは重要!
マンションには長期修繕計画というものが作成されていますが、その中に機械式駐車場の修繕費、入替え費用は計上されていますか?
もし無いとすれば、入れ替え時にマンション会計が赤字になることは明白です。早い段階で対応していかないと機械式駐車場の運用ができなくなります。
機械式駐車場のメーカーに依頼すれば、機械式駐車場の修繕費が記載された長期修繕計画書、入れ替え費用の見積りが入手できるので、これに基づいた長期修繕計画の見直しが必要です。
独立系のメンテナンス会社に保守点検を依頼している場合は、直接メーカーから取り寄せるのは難しいので、メンテナンス会社に依頼すれば、これらの資料を作成してもらえます。管理会社が元請(契約当事者)の場合は、管理会社に依頼すれば作成してもらえます。
機械式駐車場は廃止すべき?
機械式駐車場の廃止の話になると利用者から反対の意見が出たり、車を所有していない方からは賛成の声が上がったりと、意見の食い違いがそこにあって中々話が前に進まないというのが実情かと思います。
そこで重要なのが前述の費用対効果です。空き区画が多いマンションの場合、利用していない区画でもメンテナンス費用や修繕費用が掛かる、そこは無駄に思えます。一度無駄な費用を算出してみるとより理解が深まります。
それと空き区画の要因を把握することも重要です。意外と近所の駐車場を借りている方がいたりもします。借りたいけど近隣相場よりも料金が高いとか車のサイズが合わないといった声を聞きます。
なので、駐車場料金の検証については行うべきだと思います。また、車のサイズについては、物理的な対策を講じないと無理だから、機械式駐車場のリニューアル(入れ替え)時に検討すべきです。
リニューアルの前倒し
車のサイズが合えばすぐにでも借りたいといった方が多ければ、リニューアルの前倒しを検討してみるのも一手です。現在、新築マンションの主流はハイルーフ仕様なので時代に合ったものを選ぶ必要があります。
駐車場の料金設定が高いエリアでは借り手がいることが前提になりますが、ハイルーフ仕様に変更しても黒字で運用できたりもします。
機械式駐車場の入れ替え費用については、一括現金で支払うケースが主流ですが、状況によってはリースも組めます。メンテナンスを含めたリース(フルメンテナンスリース)というものもあります。
手持ち資金の無い場合は、リースを検討してみるのも良いかも知れません。(その場合、トータルコストが割高になりますので十分検討する必要があります。また、駐車場の料金設定が低いエリアではリースは不向きです。)
駐車場の平面化
駐車場の借り手がいない場合は、駐車場の平面化といった対策があります。平面化にも色んな種類があります。鋼製平面化(既設の地下ピットはそのままで鉄板を上部に設ける方法)、埋め戻しによる平面化(地下ピットを解体して砕石で埋め戻す、仕上げはコンクリート舗装若しくはアスファルト舗装)の2つが主流です。
後者は立地場所にもよりますが、雨水対策(排水勾配など)の検討が必要になります。また、地下ピットを解体せずに埋め戻す場合は、砕石の重みで不具合が生じないか事前に専門家による検証を要します。
簡単に廃止といっても、やるべきことが多いです。個人的には、駐車場の空き区画がずっとそのままになっているとしたら、できるだけ早めに平面化にすべきだと思います。
ただし、駐車場の附置義務条例などにより区画を減らすことができない場合があるので、事前に行政へご確認ください。
駐車場の外部貸し
空き区画対策として、マンションの居住者以外の第三者に貸すといった手段もありますが、第三者に貸す場合、条件によっては収益事業とみなされ、法人税が課せられます。ここでも費用対効果の検証が必要になります。(下に本件に関わる国税庁の見解のリンク先を貼っておきます。)
https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/hojin/120117/besshi.htm