管理組合

マンション管理組合|外部の専門家の活用について

2018年2月13日

 

2016年3月14日、国土交通省より「マンションの管理の適正化に関する指針(マンション管理適正化指針)」、そして「マンション標準管理規約」の改定が公表された。

この改正においては、「外部の専門家の活用」に関するものが含まれており、分譲マンションの問題のひとつである「区分所有者の高齢化などによる管理組合役員のなり手不足」、その他に「マンションの高層化・大規模化などによる管理の高度化・複雑化」、これらの課題に対して解決策を見出そうとする内容になっている。

この2つの改定のポイントについて見てみよう。

マンション管理適正化指針の主な改正点

マンション管理適正化指針には、管理組合によるマンションの管理の適正化を推進するため、必要な事項が定められている。項目は6つある。

①マンションの管理の適正化の基本的方向
②マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
③マンションの管理の適正化の推進のためにマンションの区分所有者等が留意すべき基本的事項等
④マンションの管理の適正化の推進のための管理委託に関する基本的事項
⑤マンション管理士制度の普及と活用について
⑥国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターの支援

<参考資料>

▶ マンション管理適正化指針(改正)新旧対象表

 

この改定に関わるのは、①と②が該当する。

 

外部の専門家を活用する場合の留意事項を明記

外部の専門家の活用、そして活用する際に管理組合が留意すべき事項が明記された。

一 マンションの管理の適正化の基本的方向

(該当部分のみ抜粋)
4 さらに、マンションの状況によっては、外部の専門家が、管理組合の管理者等又は役員に就任することも考えられるが、その場合には、マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要である。

二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項

(該当部分のみ抜粋)
6 発注等の適正化管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。

これらは、留意事項となるため、実際に外部の専門家を活用する場合は、明確な取り決めが必要になるし、その場合、管理規約または使用細則でその内容を明文化する必要がある。

外部の専門家の活用にあたっては、当然費用も発生するだろうし、委託する業務範囲や義務関係、そして契約期間などの取り決めが必要になってくる。その場合、委託契約を取り交わす必要がある。

これらについては、参考手引きとして国土交通省が作成している「外部専門家の活用ガイドライン」を読まれるといい。

外部専門家の活用ガイドライン/国土交通省



マンション標準管理規約の主な改定点

管理規約を作成される際の参考手引きとなるのが、国土交通省が作成している「マンション標準管理規約」になる。

2016年3月の改正では、「外部の専門家の活用」が新たに盛り込まれた。マンション管理適正化指針とあわせた改定になるのだが、主な改定点は以下のとおりである。

マンション標準管理規約第35条/役員

(外部の専門家を役員として選任できることとする場合 ☞ 選択方式として新設)
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

マンション標準管理規約第36条/役員の任期

(外部の専門家を役員として選任できることとする場合 ☞ 選択方式として新設)
4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

これは、外部の専門家が理事や監事に就任して直接管理組合の運営に携わることを前提とした規定の雛型である。改定前の規定と異なる部分は青字で記している。☞ 第35条では第2項の「組合員のうちから」この条件が無くなり、そして第4項が新たに新設されている。第36条第4項は、矛盾を解消するために「選任(再任を除く。)の時に組合員であった」、この文言が追加されている。

外部の専門家を活用しない場合は、改定する必要はないのだが、活用したい、または将来的に活用する考えがある場合は、先の話であっても早めに改定された方がいい。

何か問題が発生したときに改定するのは難しくなる。そこには利害(反対者)が存在したりもするから、事が起きる前に見直すことが重要だと個人的にそのように感じる。

マンション標準管理規約第36条の2/役員の欠格条項

(規定を新設)
次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
一  成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二  禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)

マンション標準管理規約第37条の2/利益相反取引の防止

(規定を新設)
役員は、次に掲げる場合には、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一  役員が自己又は第三者のために管理組合と取引をしようとするとき。
二  管理組合が役員以外の者との間において管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするとき。

マンション標準管理規約第38条/理事長

(規定を追加)
6 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。

マンション標準管理規約第53条/理事会の会議及び議事

(規定を追加)
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

外部の専門家を役員に選任することを想定し、役員としての不適格者の排除や業務運営の適正化を図るため、「第36条の2/役員の欠格条項」「第37条の2/利益相反取引の防止」がそれぞれ条文として新設され、「第38条/理事長」「第53条/理事会の会議及び議事」に規定が追加されている。「第53条/理事会の会議及び議事」に規定されている青字「前2項の決議」とは、理事会の議事のことである。

これ以外に外部の専門家の活用にあたり、業務執行のチェック機能を設けるための規定内容が盛り込まれている。

第38条第4項/理事長の職務執行の状況の理事会への定期報告義務
第40条第2項/組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実の理事から監事への報告義務
第41条第4項/監事の理事会への出席・意見陳述義務
第41条第5項/監事による理事会への理事の不正行為等の報告義務
第41条第6項/監事による理事会の招集請求・招集
第41条第7項/監事による理事会の招集請求・招集
第51条第2項/理事会の権限として理事の職務執行の監督等の位置付け
第52条第3項/理事による理事会の招集請求・招集

※詳細 ☞ 下記「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメントの改定点」参照
 

<参考資料>

マンション標準管理規約の改正の背景・ポイントについて/国土交通省

マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメントの改定点/国土交通省



外部の専門家の活用について

外部の専門家の活用にあたっては、全てを任せるというわけにはいかない。「自分たちではできない部分をお願いする」という考え方が必要になると思う。

また、外部の専門家の活用に際して、マンションの所有者の皆さんは、その意義(目的)を明確に持つべきだと思う。ただ漠然と期待するだけでは意味を持たない。それでは専門家たちも困るだろうし、実際の業務に対して不満を招きかねない。

管理会社と管理委託契約を結ぶ一方で、外部の専門家を活用される場合においては、管理組合の支援という部分で重なるところが出てくる。

個人的には、双方からの支援は無駄だと感じる。この無駄は費用の過剰負担であったり、双方の意見に食い違いがあれば、所有者である自分たちが困惑してしまう。

外部の専門家は、セカンドオピニオンという考え方も出来るのだが、そのために費用が掛かることに対して、躊躇される管理組合は少なくないと思う。

もし仮に、外部の専門家が理事長(管理者)という位置づけなら、管理会社が行っている管理組合・理事会支援業務に必要性が果たしてあるのだろうか。

そこで必要性を感じなければ、管理会社に委託する業務は、会計業務、建物・設備に関係する業務のみになる。これにより、コストの合理化が図れるかも知れない。

役員の成り手不足、経験・知識が必要とされるマンション管理、そこで期待されるのが外部の専門家たちとなろう。

外部の専門家たちも得手不得手がある。全てを完璧にこなせる人はそうはいない。管理組合が求めているものと専門家の技量が異なれば、目的が達成できないこともあるだろうし、それに不満を抱く方も出てくると思う。

外部の専門家を活用する場合は、管理組合内で十分議論する必要があるだろうし、管理規約の整備も必要になってくる。

マンション管理士制度が2002年に開始されてから、長い年月が経過しているのだが、この制度を活用されている管理組合は少ない。個人的にはもっと活用すべきだと思っている。

外部の専門家には、マンション管理士以外にも弁護士、建築士の先生方がいらっしゃる。とても心強い存在ではあるが、マンション管理士制度と同じように、その必要性とか認知度が低ければ、前述の改正という土台がせっかく構築されても、机上の空論で終わる感は否めない。

マンション管理は難しいゆえに自分たちで行うには限界がある。これまで管理会社という身近なパートナーがいたわけだが、今後は外部の専門家をパートナーとすることが可能となる。

選択肢が広がることは管理組合にとって良い事だと思う。

外部の専門家の活用は不要、そのように考える方が所有者の中にはいらっしゃるだろうし、逆に管理会社が不要って考えている方もいらっしゃると思う。そこには色んな価値観がある。

その論争ができるってことは、ある意味幸せなことなのかも知れない。以前は、自主管理をするか管理会社に委託する、いずれかの選択しか無かったわけだから、今後は外部の専門家を交えた議論ができる。

一度、外部の専門家について話し合ってみるのも、管理組合にとって決して損はないと思う。

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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