マンション管理会社に欠けているもの、それは管理会社自身がよく分かっていることではないだろうか。この「欠けている」を集約できる言葉、それは「存在意義」である。
私は、管理会社でサラリーマンとして働き、その後、独立した経験を持つ。社員の立場、そして経営者としての立場、両方の経験を持つから色んなことが見えてくる。
管理会社に不信感を抱かれている方が、この「存在意義」という言葉を聞いて、「私も同感」と思われる方がいらっしゃると思う。逆に管理会社に信頼を寄せている方からすれば、「不快な記事」に思えるだろう。
私が管理会社のサラリーマン時代に、この「存在意義」というものに気付かされた。それから「存在意識」について考えるようになったのだが、自分なりの理想を思い描いたところで、それを実現できないという苦悩を常に抱えていた。
マンションに住まれている方は、「マンションを良くしたい」、この気持ちは誰しも持たれていると思う。
それをサポートするのが管理会社の役割でもある。そしてサポートするにあたっては、自らがその気持ちを持たなければならない。
経営陣や社員の中には、それを悟り、一生懸命管理組合のために日々努力されている方もいらっしゃるだろう。だがしかし、全ての関係者がそうではない。仕事に対する価値観が個人によって大きく異なる。
有能なフロントマンは、顧客である管理組合のこと、そこに住まれる居住者のことを真剣に考える。だからトラブルは少ない。それは、顧客と同じ目線で物事を考えることができるから、そのような結果が出せる。
経営陣は、サービスの対価を先に求めず、信頼を築き上げることを最優先とし、それを実行できている企業は、管理委託料の金額や更新時に揉めることはない。
他と比べて、管理委託料が高くてもそれに見合ったサービスが提供できるのなら、それは顧客からしてみれば「高い」のではなく、「付加価値の対価」に思えるだろう。
私は管理会社を立上げたとき、サラリーマン時代の自省の念、それを反面教師と捉え、逆のことを行った。前述の「サービスの対価を先に求めず、信頼を築き上げることを最優先」、これを実行した。
結果として、10年間、解約されたマンションは1件も出なかったし、トラブルなども少なかった。読み手によっては自慢話に思えるかも知れないが、ただ真実としてそれを伝えたかっただけである。
でも現実はどうだろう。
その逆が多いのではないだろうか。顧客よりも企業を優先する考え方である。利益を先に求め、サービは後回しになっている感は否めない。だから、管理組合とのトラブルが絶えない。
「管理会社は信用できない」、これは私の持論でもあるのだが、管理会社は考え方さえ変えれば「信用される」、これを私は実践して経験によって知ることができた。
そこで「存在意義」というものを真剣に考えなければ、その発想は持てない。それを多くの管理会社は思考しないから気付けない。
大手企業は管理物件が多いから、不祥事のひとつやふたつは起こるだろう。その考え方は決して許されない。当事者がいる以上、それを口にするのは不謹慎である。
もしそのような社内風潮があるとしたら再び同じことが繰り返されるだろう。実際に知名度のある管理会社が同じ不祥事を繰り返す、そんなことが現実として起こっている。
これは企業体質に問題がある。経営陣の交代で簡単に変えられるものではない。企業全体の考え方を根底から変える必要がある。
このように書くと批判コメントをいただくのが毎度のオチなのは承知している。出る杭は必ず叩かれる慣習が昔からの社会にはある。
それを社会のせいにしてしまうのも良くはない(反省…)。
管理会社の「存在意義」を更に追求していくとそこに限界があることに気付く。
皆さんに喜んでいただけるサービスを全ての人に対して平等に提供できるのか…
ひとりが喜ぶ、一方では悲しむ人がいる…
コストを下げたいけど、サービスを充実させるために相応にコストは掛かる…
先を見据えた提案はしたいけれど、逆に不安を与えてしまう…
管理会社がそれを口にして良いのだろうか…
これらもまた、管理会社の苦悩でもある…