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マンション管理会社|フロント担当者の離職率が高い理由!

2021年11月3日

 

 

マンションのフロント担当者が頻繁に入れ替わる、これは珍しいことではない。

人事異動ではなくその多くが退職によるものだが、どうしてフロントマンの離職率は高いのだろう。

悪い言い方になってしまうが、腰掛け社員が多いことが挙げられる。

求人広告を覗いてみると、マンション管理のサポート(お手伝いっぽい)、事務職っぽい、未経験者でもしっかりフォローします、そこで自分にも出来そう、そのように感じて入社される方が多いように思える。

理想と現実、そのギャップが大きいから長くは続かない。

マンション管理の仕事は容易ではない。マンションに関わる幅広い知識が求められ、諸所の適応力、忍耐力、将来を見据えた先見性など、様々な要素が求められる。

総会、理事会の際には、議事進行の代役としてパブリックスピーキング能力、コミュニケーション能力、傾聴力、助言・提案力、会場内での細かな配慮、議案書・議事録などの文書作成能力ほか、身に付けないとフロントマンは務まらない。

マンションには色んな価値観を持たれた複数の所有者(オーナー)がいる。その所有者で結成された管理組合が顧客となる。マンション毎に管理に対する価値観は異なるから、前述のコミュニケーション能力と適応力は絶対に欠かせない。

日々尽きることのない緊急対応、居住者からの様々な要望や相談、そこで迅速かつ的確に業務をこなさないと苦情と化す。

昼夜を問わず携帯電話を片時も離せない日々。総会、理事会の準備に追われる日々。緊急対応に追われる日々。時間に追われる日々。ゆっくり休日を過ごすことができないという現実がそこにある。

 

 

大勢の所有者の前で話をする機会が多いため、そこで不手際があれば総スカンを食らい、夫婦間ではないが三行半を下されることもある。

マンション内で誰もやりたがらない嘔吐物の処理、糞尿の処理、ゴミ置き場の分別処理も仕事として対応せねばならない。

ときには住人間の揉めごとの仲裁に入り、聞きたくもない他人の愚痴を双方から聞かされ、肩入れせずに慎重に対応せねばならない。

顧客の中には、理不尽な言い掛かりや文句を付けてくる方がいる。要望とか意見ではなく完全な言い掛かりだとすれば、それはクレーマー以外の何者でもない。このクレーマーの対応には本当に苦慮するし、長期化すれば自律神経がやられうつ病を患う。

何度も言うがクレーマーは本当にしつこい。理不尽なことを言って人を陥れようとするから手に負えない。このクレーマーが要因でフロントマンが会社を去るケースは多い。

こういうクレーマーはすぐに「社長を出せ」とか「上司を出せ」を口にして脅し、自分の都合の良いように仕向ける。本当に質が悪い。こういった理不尽なクレーマーの対応をも求められる。

求められるものが多過ぎて、決して楽な仕事ではないということは大方推測できるだろう。実際にこの仕事をやってみると理解が早い。



前述のクレーマー以外にも、会社が要因となって退職に至るケースが2つある。

要因➀ 任せっぱなし体質

フロントマンはいわゆるフランチャイズのような個人事業のようなもの。フランチャイズと異なるところは、十分な教育・指導がなされないまま担当物件を持たされ、仕事を任せっぱなしにする体質がこの業界には蔓延る。

何のフォローもなく、ひとりで仕事を抱え込み、顧客からの苦情が増え、そして潰れていく。このパターンで辞めていくフロントマンは多い。

この任せっぱなしの体質がなぜ会社で横行しているのか。その要因はいくつか考えられる。

経営陣がマンション管理の業務内容を十分理解していないから教えるという発想を持ち得ない(大切さを理解していない)。

実務を経験したことのある経営陣であっても、昔のやり方・考え方を変えようとしない。仕事は現場で覚えろ的な旧態依然のやり方・考え方。

直属の上司はいるが、職長としての仕事をこなしながら自らも担当物件を抱えているから双方の対応に追われ、面倒をみきれない。

どうせ教えても長くは続かないだろう的な考えが根付き、教えることを時間の無駄と考える社内体質に陥っている。

要因➁ 経営陣との確執

この仕事を経験していくと気付くことがある。それは、企業と顧客である管理組合の価値観に違いがあることだ。

企業の価値観と管理組合の価値観は互いに相反する。この企業と管理組合の間に立って仕事をしているのがフロントマンである。企業は営利主義、一方の管理組合は節約志向である。この価値観の違いに苦悩を抱くのだ。

管理組合に対して企業の利益を求めれば不信感を抱かれる。顧客との関係がこじれ、目的を見失い辞めていくパターンもある。

 

経営陣は我関せず

フロントマンの大変さを理解していない企業ほど当たり前の話だがフロントマンの離職率は高い。辞めてもまた募集すればよい、そんな風潮がこの業界には存在する。

管理組合からしてみれば、フロントマンが頻繁に代わることは決して望ましいことではなく、いつしか不信感に変わるだろう。

この商売は、管理組合と信頼関係があって成り立つものである。そこを理解されていない経営陣が多い。

フロントマンの仕事は決して楽ではない。それ故にフォロー体制は必要になってくる。これを実行している管理会社は離職者は少ない。

フォロー体制のない管理会社は、前述の昔気質の考え方が蔓延している。

課長、部長の考え方として、自分はフォローなしでこの会社で長く働いてきたから貴方もやれるでしょ的な発想。そうした考え方を上長が持たれているとすれば、離職者は増えるだろう。

それまでに何人のフロントマンが会社を去ったのか、そこを履き違えて「俺は勝ち組」なんて考えているとしたら部下は高確率で育たない。

そうした業界体質は昔も今も根っこのところでは変わっていないように思える。

これからマンション管理会社に就職を希望されている方で、特に未経験者の方は、面接時にフォロー体制の本質を見抜く必要がある。

「しっかりフォローしますよ」は常套句、具体的なフォロー体制、研修制度の確認は、後悔しないためにも面接時に行うべきだと思う。

任せっぱなしで潰れていくフロントマンをこれまで多く見てきたから、本当に上役のフォローはすこぶる大切だと思う。

最後に、管理組合の関係者の方がもしこの記事を読んでくれてたら、自分のマンションのフロント担当者が失敗しても責めないでください。責めるべき相手は経営陣です。

 

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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