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エレベーター保守点検費のからくり!

2017年4月20日

 

エレベーターが設置されているマンションでは、その台数に応じてエレベーター保守点検費が毎月発生する。1回当りの点検費は結構掛かるから、管理組合会計の支出項目の中でも大きな経費といえるだろう。

管理組合によっては、決算書の支出項目にエレベーター保守点検費が計上されていないケースが考えられるが、その場合、管理委託業務費の中に含まれている。

エレベーターの保守点検は、エレベーター保守会社(メーカー系または独立系)が実施する。契約上、管理会社が元請になるケースも考えられるが、その多くは前述のエレベーター保守会社に再委託している。

エレベーターの契約方式は、「フルメンテナンス(FM)契約」「POG契約」の2つに分けられ、マンション毎に保守点検費は異なる。☞ 同じサービスでも料金格差があることをまず知っておいてほしい。

 

なぜ保守点検費がマンション毎に異なるのか?

異なる理由その❶

三菱、日立、東芝、日本オーチス、フジテック、この5社がメーカー系の保守会社の代表になるだろう。メーカー系の保守点検費には定価というものが存在し、この定価はメーカー毎に異なる。

マンション毎にエレベーターのメーカーは異なるから、当然に保守点検費は異なるわけだが、腑に落ちないのは、同一のエレベーター(メーカー、設置階数、仕様が同一という意味)において、マンション毎に異なっているという事実。

異なる理由その❷

管理会社が元請となる場合、メーカー系、独立系の保守会社のいずれかがその下請けとなり、保守会社の費用(原価)に管理会社の中間マージンが上乗せされる。管理会社毎に原価および中間マージンは異なるから、たとえ同一エレベーターであっても保守点検費はそれぞれに異なるというからくり。

異なる理由その❸

エレベーター保守会社が管理会社を介さずに直接管理組合と契約する場合、そこにはいろんなしがらみがあって、デべロッパー(分譲会社)、管理会社の意向により保守点検費が決定されることがある。

これまでの話をまとめると、エレベーター保守点検費というのは、きちんとした根拠に基づいて算定されたものではなく、当初の金額設定にあたっては、デべロッパー、管理会社の意向に沿って決められる。



管理会社元請けの保守点検費の交渉は困難?

例えば、エレベーター保守点検契約で管理会社が元請、下請けがメーカー系のエレベーター会社、フルメンテンス契約、1基6万円だったとする。そこで管理会社と値下げ交渉を行っても多くはそれに応じないだろう。

全てに言えることだが、値下げ交渉を行う上で必要になるのが引き合いになる。引き合いとは比較できるものを用意するという意味だ。

そこで管理会社を介さずにそのメーカー系のエレベーター会社から直接見積りを取り寄せることも可能だが、ここで大きな壁が待ち受けている。

メーカー系のエレベーター会社にとって管理会社はお得意様になる。管理組合から見積り依頼があっても、同額の6万円、もしくはそれを超える見積りしか出さない。管理会社より安くは出せないのだ。管理会社との付き合いがある、ただそれだけの理由だ。

そこで別の管理会社から見積もりを取り寄せても同様のことが起こり得る。メーカー系のエレベーター会社にとってお得意様は裏切れない。

メーカー系のエレベーター会社と管理会社の間で交わしている契約料金は当然この6万円より低い金額になる。仕入れは力関係で決まるわけだが、顧客からすれば公平でないビジネスがそこに存在する。

 

保守点検費を下げる最後の切り札?

今の管理会社に対してエレベーター保守点検費の値下げ交渉を行っても、言い訳ばかりで管理組合の方が疲れてしまう。この費用以外の値下げ交渉も同じだ。引き合いという手段も業者間の癒着が障壁となって上手く機能しない。

そこでメーカー系から独立系に変更する管理組合が多い。エレベーター保守点検費の値下げではこの方法が慣習化されている。

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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