駐車場

駐車場の区画変更について

2017年8月28日

 

マンションの敷地内に設けられている駐車場の区画というのは、誰がどのようにして決めているのだろう。当初に決められた区画がそのままずっと変わらない、それに不満を抱く方は少なくないだろう。

車両制限のある区画、機械式駐車場の待機時間が長い区画、住まいから距離が遠い区画など、不満の理由は人によって様々である。

逆に条件の良い区画を借りている方にとっては、何ら不満を感じず触れてほしくない話になる。

分譲時に駐車場の区画決定がなされるわけだが、先着もしくは抽選のいずれかの方法でその区画が割り当てられる。どちらを選択するかは、マンションの分譲会社(販売会社)の判断に委ねられる。

公平性の観点からみれば、抽選の方が理想に思えるが、実情として先着方法が用いられることが多い。

理由として、先着順にした方が分譲会社にとって販売促進に繋がるという利点がある。「今ならこの区画とれますよ!」と営業マンに言われたら、多くの方は決断を急ぐだろう。

もうひとつ、抽選自体が難しいことが挙げられる。全戸に駐車場が割当てられないケース、車両制限が混在するケースでは完売後の抽選というのはかなり難しい。

当初の決め方に不満を抱く方もいるのだが、問題はそこではない。その後もずっと同じ区画を借り続けなければならない、そこに不満の真意があるのだ。

他よりも条件の悪い区画を借りている方からしてみれば、不満を持つのは当たり前であろう。

敷地内に設けられたマンションの駐車場は、共用スペースであり、本来なら公平に使用されるべきである。だが実態はそれとは異なる。そこには既得権などの利権が絡んでいる。



総会などの公の場で不満を口にすることはあまりしない。だが、管理会社に対しては不満を口にされる(笑)。そんな不満の声を管理会社時代に多くの方から聞いた。この不満の意見には理がある。だか一方では既得権を主張される方もいる。「この区画だからマンションを買った。」、この主張にも理がある。

公平を実現するために、管理組合の内部を調整するのはとても大変なことである。そこで重要になってくるのが、駐車場の使用に関するルールが記された管理規約だ。

管理規約にどのように規定されているのか、この規定はマンション毎に異なる。細かに規定しているマンションもあれば、大雑把な規定しかないマンションもある。

国土交通省が策定しているマンション標準管理規約(コメント)には、以下の内容が記されている。

マンション標準管理規約/駐車場の使用(第15条)

管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。

2 前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。

3 区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。

コメント/第15条関係

① 本条は、マンションの住戸の数に比べて駐車場の収容台数が不足しており、駐車場の利用希望者(空き待ち)が多い場合という一般的状況を前提としている。

近時、駐車場の需要が減少しており、空き区画が生じているケースもある。駐車場収入は駐車場の管理に要する費用に充てられるほか、修繕積立金として積み立てられるため(第29条)、修繕積立金不足への対策等の観点から組合員以外の者に使用料を徴収して使用させることも考えられる。その場合、税務上、全てが収益事業として課税されるケースもあるが、区分所有者を優先する条件を設定している等のケースでは、外部貸しのみが課税対象となり区分所有者が支払う使用料は共済事業として非課税とする旨の国税庁の見解(「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」(平成24年2月3日国住マ第43号)及びこれに対する回答(平成24年2月13日))が公表されているため、参照されたい。

② ここで駐車場と同様に扱うべきものとしては、倉庫等がある。

③ 本条の規定のほか、使用者の選定方法をはじめとした具体的な手続き、使用者の遵守すべき事項等駐車場の使用に関する事項の詳細については、「駐車場使用細則」を別途定めるものとする。また、駐車場使用契約の内容(契約書の様式)についても駐車場使用細則に位置付けづけ、あらかじめ総会で合意を得ておくことが望ましい。

④ 駐車場使用契約は、次のひな型を参考とする。


 

駐車場使用契約書

○○マンション管理組合(以下「甲」という。)は、○○マンションの区分所有者である○○(以下「乙」という。)と、○○マンションの駐車場のうち別添の図に示す○○の部分につき駐車場使用契約を締結する。当該部分の使用に当たっては、乙は下記の事項を遵守するものとし、これに違反した場合には、甲はこの契約を解除することができる。

1 契約期間は、平成  年  月  日から平成  年  月  日までとする。ただし、乙がその所有する専有部分を他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、本契約は効力を失う。

2 月額○○円の駐車場使用料を前月の○日までに甲に納入しなければならない。

3 別に定める駐車場使用細則を遵守しなければならない。

4 当該駐車場に常時駐車する車両の所有者、車両番号及び車種をあらかじめ甲に届け出るものとする。

以上


 

⑤ 車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約又は駐車場使用細則に規定することが望ましい。

⑥ 駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできる。

⑦ 駐車場使用者の選定は、最初に使用者を選定する場合には抽選、2回目以降の場合には抽選又は申込順にする等、公平な方法により行うものとする。

また、マンションの状況等によっては、契約期間終了時に入れ替えるという方法又は契約の更新を認めるという方法等について定めることも可能である。例えば、駐車場使用契約に使用期間を設け、期間終了時に公平な方法により入替えを行うこと(定期的な入替え制)が考えられる。

なお、駐車場が全戸分ある場合であっても、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等により利便性・機能性に差異があるような場合には、マンションの具体的な事情に鑑みて、上述の方法による入替えを行うことも考えられる。

駐車場の入替えの実施に当たっては、実施の日時に、各区分所有者が都合を合わせることが必要であるが、それが困難なため実施が難しいという場合については、外部の駐車場等に車を移動させておく等の対策が考えられる。

⑧ 駐車場が全戸分ない場合等には、駐車場使用料を近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定すること等により、区分所有者間の公平を確保することが必要である。なお、近傍の同種の駐車場料金との均衡については、利便性の差異も加味して考えることが必要である。

また、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等による利便性・機能性の差異や、使用料が高額になっても特定の位置の駐車場区画を希望する者がいる等の状況に応じて、柔軟な料金設定を行うことも考えられる。

マンション標準管理規約第15条は、ほとんど白紙に近い規定である(笑)。細かな規定は、駐車場使用細則の方で記されるべきだが、この使用細則が設定されていないマンションが実に多い。

駐車場の取り扱いについて、公平性を確保するためには細かな規定が必要になる。定期に一斉に区画変更を実施するのであれば、それに関わる条文を新設する必要がある。また、空き区画の取り扱いについて細かな規定を設ける場合も同じである。

マンションによって考え方は異なるだろうが、定期に区画変更(抽選)ができないマンションであれば、公平性を少しでも確保するための工夫が必要になる。

滞納者が条件の良い区画(例えば屋根付き)を借り続けるのに同情する人はいないだろう。その場合、契約解除の条文を設ければ、空き区画が生まれ、他の方が借りることができる。その方の区画も更に空く、そこに変更することも可能となる。小さな変更にはなるが、変更する機会が増えることに意義がある。

 

第15条3項に記されている「区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。」、この規定があるにも関わらず、貸与する場合にそのまま承継されるケースが見受けられる。

これは規約違反である。貸与されるケースは意外と多いから、これを規約通りに徹底することで空き区画が作れ、変更の機会が作れる。

大きなことは出来なくても、小さなことなら意外と容易にできる。その小さな積み重ねが公平性を確保する役割を担うのだ。

私の管理会社時代に、駐車場の取り扱いについてとても悩まされた。色んな価値観、そして利権が絡むから提案にも配慮が必要になる。まずは小さなことから改善する、この考え方が大切だと思う。

 

 


 

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 プロフィール

くるみ

くるみ

著者:kurumi

マンションデべロッパー、デべ系管理会社、建設会社勤務を経て、2004年に管理会社設立。
2017年に業界を離れ、今はフリーランスとして活動しています。
元業界人がマンション管理についてしがらみ抜きでガチで語っているので、是非読んでみてください。

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